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第24話「旅立ち――第一章完」

旅立ちの日。イツキ、リョカ、オルグ、カイの四人は馬に跨り、村を後にする。

悲しみを湛えるリョカだが、仲間がいる。

第一章、完。


旅立ちの日が来た。


朝霧が村を包み、冷たい空気が頬を撫でる。


村の入り口には、タルエンと数人の村人が見送りに来ていた。

誰もが複雑な表情を浮かべている。


慕っていた子供たちが、リョカの近くで、悲しみの表情を湛えていた。

リョカが、その子供たち一人一人を順番に胸に抱きしめた。


「リョカおねぇちゃん、本当に行っちゃうの?もう遊んでくれないの?」

7歳くらいの男の子が寂しげに聞いた。


リョカは膝を落とし、顔を近づける。

そして両手で男の子の顔を包み込んだ。


「そうね。私は旅立たないといけないの。でも、二度と会えないわけじゃないわ。そのときはまた遊びましょう」



「うん」


男の子は大きくうなずいた。



タルエンが一歩前に出た。


「リョカ‥‥‥」


その声は震えていた。


「おじさん」


リョカが振り返る。


「達者でな。そして‥‥‥すまなかった」


タルエンは深く頭を下げた。


「おじさん、顔を上げて」


リョカは駆け寄り、タルエンの手を取った。


「おじさんは何も悪くないわ。村のみんなも、誰も悪くない。

これは私が全て受け持つべきものなの。そうね、宿命と言えるのかもしれない」



「リョカ‥‥‥」


「私ね、ずっと思ってたの。この村で生まれて、この村で育って――本当に幸せだったって。おじさんが父親で、本当によかったって」


タルエンの目から涙が溢れた。


「お前は‥‥‥ワシの誇りだ」


二人は抱き合い、しばらくそのまま動かなかった。


やがてリョカが離れ、村人たちを見渡した。


「みんな、ありがとう。この村で過ごした日々――私は、絶対に一生忘れない」



村人たちの中から、一人、また一人と頭を下げ始める。


一人の女性――昨日ドアを蹴って入ってきた女性だ――が前に出た。


「リョカさん‥‥‥本当に、ごめんなさい。

私たちは、あなたにすべてを押し付けしまったのね」


「私のことは気にしないで。マリアさん、息子さんのこと――本当に、残念でした」


リョカは寂しく微笑んだ。


「私も、祈ります。ずっと、ずっと――」


マリアは泣き崩れ、他の村人たちも涙を流していた。


オレは、その光景を静かに見つめていた。


――これが、別れというものなのか。


痛みと、温もりが――同時に存在する瞬間。


「さあ、行きましょう」


リョカが振り返り、四人に向かって言った。


その顔には、もう迷いはなかった。


四人は馬に跨った。


リョカは最後にもう一度だけ、村を振り返る。


「さよなら、私の故郷」


小さく呟いて、前を向いた。


馬が歩き出す。


タルエンが、ゆっくりと手を振った。

村人たちも、みな手を振っている。


霧の中、その姿が少しずつ小さくなっていく。


やがて――完全に見えなくなった。


リョカが、馬をオレの隣につける。

「イツキも来てよかったの?」

「あぁ、元々大きな街に出るつもりだった。

リョカが行くなら、丁度いい」

オレは短く答えた。


リョカは小さく笑ったが、その笑顔はすぐに消えた。

「なんだか、世界に裏切られた気分だわ」

リリの瞳が涙で濡れていた。

その言葉を聞いた瞬間、オレの胸に鋭い痛みが走る。


――世界に裏切られる、これじゃあリリと同じじゃないか。



「リョカには、付いてきてくれる仲間がいる」

オレはオルグとカイを見ながら言った。


その言葉を聞いたリョカが、オレをじっと見る。

「あれ?その中にイツキは入ってないの?」


オレもリョカの目を見る。

瞳の奥で、悲しみの影が薄らみ始めていた。


「オレは、すでに入っている前提だ」

オレは表情を和らげ言った。


オレとリョカの視線が静かに交差する。


それはぽっかり空いた胸の痛みが、一瞬遠のいた。


「おいおい、何二人で話してんだよ!

俺も入れろよ!」

オルグは焦ったそうに割り込む。


「もちろんオルグとカイも私の仲間だよね?」


「なに今更言ってんだよ。

子供の時から一緒の仲じゃねぇか。

なあ、カイ?」



「そうだ」

カイは前を見たまま答える。


「なんだよ、虫の暴言はなくなったけど、

なんで単語でしか話さないんだよ」

オルグが顔をしかめる。


「言葉は伝達手段。伝わればいい」


「それじゃ、気持ちが伝わらないんだよ!」


「感情は不要」


「人間様は、感情の生き物なんだよ!」


「俺にはいらん」


「ぬおー!」

オルグが最後に拳を突き上げ、吠えた。


四人は馬に跨り、進み始める。


オレは、慣れない馬に揺られながら、この“世界“というものについて考える。


どんな世界であれ、全ては”揺らぎ”によって構成されている。

その揺らぎ幅が世界に変化をつけているのだ。

つまりは、その揺らぎ幅をどう設定するか、それだけなのである。


大きくすれば変化に富み多様になるが、リスクも大きくなり簡単に崩壊してしまう。

小さくすれば安定するが多様性が失われ、面白味に欠ける。


そして、どうバランスを取るかということになると、結局のところ、かつての偉人達の言葉を借りるのであれば中庸ということになるのだろう。


そう、この世界は――オレの瞳に”とてつもなく”揺らいで映った。


――第一章完

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