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コウの最大の武器

ダナさんがコウの先生になってから1か月。コウはすっかりダナ先生に夢中だ。

ダナ先生が回復魔法を教えに来てくれる日は、朝からソワソワして楽しそうに待っている。


「こんにちは!ダナ先生、今日もよろしくお願いしますっ」


「こんにちは、コウ君!」


「先生!光の玉できるようになりましたっ」


「あらあら、すごい!もう出来るようになったの?コウ君は優秀ね」


コウは手の中に3cmくらいの光の玉が出現する。


「うんうん、良い感じね。もう1セメル(cm)くらい大きくなるかしら」


「はいっ」


コウの手のひらの光の玉がふわっと少しだけ大きくなる。


「はい、コントロールも出来てますね。すごいわコウ君」


コウは、ほっぺを赤くして得意顔だ。


「今日は、この光の玉をこのお花に入れてみましょう」


ダナさんは茎が折れて萎れた花が咲いている植木鉢をテーブルに乗せる。


「魔力をどこから入れればいいか、分かるかしら?」


「えっと、この茎が少し折れてるところ」


「そうね、今はそこからでもいいわ。やってみて」


コウの手のひらの光の玉が折れた茎にスゥッと吸い込まれていく。


「折れた茎が治りましたっ!」


「素晴らしいわ!コウ君。今度は私がお手本を見せるわね。しっかり見ていてね」


ポキッと萎れた花の茎を折ると、ダナさんは花に手をかざした。

ダナさんの手がふわっと光り、下から上までスゥッと光が通ると、茎がピンと立ち花が蘇った。


「ダナ先生すごい!お花が綺麗になった!」


「回復魔法はね、その生き物がどうやって生命活動をしてるかを知ることが大切なの」


「生命活動?」


「そうよ。例えばね、このお花は、水を吸って生命を維持しているでしょう?だからね、その道を使って回復魔法を通すのよ」


「そうか、だから下から光ったんだ!」


「そうよ!コウ君は聡明ね。素晴らしいわ。これが人なら、血管を通して回復魔法を浸透させるの」


「血管、知ってる!このうっすら見えてるやつですよね!」


「ええそうよ。怪我をすると血が出るでしょう?それは、この血管が破れているという事よ。だから回復魔法を使う時は、まず太い血管を治すの」


「たくさん血を出さないためですか?」


「そうよ、それもあるわ。後は、回復魔法を流す道を作るためよ。太い血管を治しながら末端へ血と一緒に回復魔法を流して怪我した所を修復していくの」


「それは、動物でも一緒ですか?」


「もちろんよ。血が通っている生き物は、同じやり方で大丈夫。でも、まだコウ君は1人でやってはダメよ」


「魔力が少ないからですか?」


「そうよ、すごいわね、コウ君。回復魔法は、相手の怪我の度合いによって使う魔力量が違うでしょう?だから、気にせず使ってしまうとすぐに魔力疲れが出てしまうの」


「魔力疲れになると眠くなります」


「ふふふ、そうね。眠くなるだけならいいけれど、子供が自分よりずっと体が大きな大人を治療するのはとても危険よ。誰かに頼まれても、絶対にやってはダメよ」


「はい!わかりました!」


「では、もう一度、折れて萎れたお花を治してみましょう」


「はい!」



▽△▽△▽△▽△▽△



ダナ先生の講義が終わって、コウがナナの所に駆けてくる。

コウもうれしそうだけど、ダナさんもすごくうれしそう。ナナは、2人のニコニコ顔に、ほっこりする。


「ナナちゃん!僕、子供の擦り傷なら治してもいいって!」


「コウ!すごいね!」


「コウ君、擦り傷までよ。骨折や大きな怪我は途中で魔力切れになったら、その子もコウ君も危ないから、絶対にやってはダメよ。まだ擦り傷しか治せないと断るのよ」


「はいっ!」


「例えばね、骨折を中途半端に治して魔力切れになったら、まともにくっ付かず、もう一度骨を折って治療しなければならない場合もあるの」


「もう一度折って・・・痛そう・・・」


「そうよ、すごく痛いのよ。だから治療する時は、自分がどこまでの治療ができるか、相手にきちんと伝えてね」


「はいっ!」


「ダナさん、今日もありがとうございました」

「ダナ先生、ありがとうございましたっ」


「いいえ、すごく楽しかったわ。そうそう、次回は2週先になってしまうの。『竜山の頂』のメンバーとケントロンに行くのよ」


「わかりました、気を付けて行って来てください!」


「ダナ先生!宿題がんばります!」


「ふふふ、がんばってね」

ダナさんは、コウの頭をやさしく撫でる。


「あ、ダナさん、これ持って帰って!みんなで食べてね」

ナナは、手作りのサンザシジャムを渡す。


「ありがとう!みんなで頂くわ。ああ、楽しみ!パンを買って帰らなくては!」



ダナさんは、大きく手を振りながら、楽しそうに帰って行った。

ナナとコウも、ダナさんが角を曲がって見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。



▽△▽△▽△▽△▽△



夕飯が終わってお風呂も入って、みんなでラグでゴロゴロしながらおしゃべりする。


「ダナ先生、コウ君は聡明ね。素晴らしいわ!って褒めてくれてねっ、すごいわねって言ってくれてね」


「すごいな、コウ!」


「スッゲー!コウ、俺の擦り傷治してみて!」


「いいよ!」


ジルの肘にある傷に、コウの手から、ふんわりと光が移っていく。


「おおお!治った!コウ、スゲーな!」


「ふふっ、子供の擦り傷なら任せて!」


「コウ、モモのは?治せる?」


「トラのけが、なおせる?」


「モモ、トラ、ダナ先生に、聞いてみるね。今は植木鉢のお花と人間の子供の擦り傷しか治したらダメなんだ」


「うん、聞いてみて」「きいてみて」


「わかった。聞いてみるよ」


「俺は子供なのかな、大人なのかな」


「ユーリは、ギリギリ子供?」


「いや、ユーリは体がデカイから大人だな。コウ、無理はダメだぞ。ギリギリはアウトだ。ダメだと判断しろ」


「ロック、無理しないよ。ユーリ、ごめんねダメみたい」


「ハハハ、残念だけどいいよ」


「コウは、私と魔法制御の訓練をしてるから、回復魔法の上達もかなり早いって、ダナさんが言ってたよ」


「ほんと?!やったー!」


「本当だよ。適量を一定の強さで流すのが上手いって言ってた」


「ほそーいお花の茎とか血管に魔力を流すからね。負担がかからないようにしないと」


「そういうイメージって大切だよ!すごいね、コウ」


「えへへ」



コウは、魔法の適性がかなり高い。そして、特技に『剣技』がない。適正だけで職業を決めるのなら、問答無用で魔法使いだ。

それでも剣士を目指すコウは、魔法を剣士の武器にするべく奮闘している。

そんなコウの武器に、回復魔法が加わった。


コウが目指すのは、魔法が使えて回復までできる剣士だ。


特技に『剣技』が出なくても、腐らず他の方法を考えるコウは強い。この頭の柔らかさは、きっとコウの最大の武器だ。


コウの目指す剣士は、ナナが日本で読んだ本や遊んだゲームで活躍していた魔法剣士そのものだ。

魔法を放ち剣を振るうその姿は、剣を諦めた少年たちの希望になるだろう。


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