表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/229

年またぎの事(2)

木剣のカンカンという音と掛け声が響く庭を横目に、ナナはパンケーキを焼く。

重曹を使わずに卵白を泡立てて作るパンケーキは、軽くて食べやすい。ロックは4枚、コウとジルは3枚、ナナは2枚、モモは1枚。計13枚!食べ盛り男子3人がいるので大量だ。


蜂蜜とジャムとバターは、テーブルにドンと置いて、ホットミルクを人数分入れたら「ご飯できたよー」と窓から声をかける。


パンケーキを頬張ってもぐもぐと口を動かしごっくんと飲み込んだ後、ジルが真剣な顔でナナに言った。

「ナナちゃん、魔法教えてくれ」


「ジルは、魔法使った事あるの?」


「ない。でも、使えるかどうか試したい」


「コウも、ためしたい」


「いいよ、後で試してみよう。身体強化は試した?」


「「試してない」」


「それは、俺が教えてやる」


「「ありがとう!」」


攻撃魔法は、コウが土魔法を少しだけ使えた。サイコロくらいの大きさの土の塊を作って、ゆるーく飛ばす事ができた。

ロックに教わって、ジルが少しだけ魔法で身体強化できるようになった。ジャンプがいつもより10cmくらい高く飛べたらしい。


どちらもナナは使えない魔法だったので凄いと思ったけれど、彼らにとってはあまり芳しくない結果だったらしく、がっかりして少しシュンとしていた。


「魔法の訓練は、12才になってステータスを確認してからでも遅くない。まだ弟子見習なんだから、剣の稽古をまず頑張れ」


ロックの言葉に気を取り直して、ちびっこ2人はまた庭に飛び出した。夕飯まで、また剣の稽古だ。



▽△▽△▽△▽△▽△



稽古三昧の5日間が終わり、年またぎ最終日。明日から1月だ。夕方の稽古を終えたらジルは孤児院に戻る。


剣帯と木剣は、コウに預けて帰るそうだ。

孤児院では10才までは稼げないから、みんなで色々な物を共有する。だから良い物は貸してと言われれば貸さないといけない。

コウと揃いの剣帯と木剣だけは、どうしても他の子に使われたくないんだって。


「すっげー楽しかった。帰りたくない」


「コウも、すっげー、たのしかった。かえらないで、ジル」


ジルは鼻が赤い。コウは涙をポロポロ流してる。明日また孤児院で会うのに、手を握りあって別れを惜しむ。


「明日、また会えるから、俺帰るよ」やっぱりジルはお兄ちゃんだな。


「うん・・」コウ、下唇が出てる。


「剣の稽古にも来るしな」


「うん・・」


「一緒に冒険者やるんだろ。ずっと一緒に頑張るんだろ?」


「うん・・」


「コウ、また明日な!」


「うん、ジル、またあした」


ジルは、ナナが作ったジャムと、ジャイアントキラービーの蜂蜜を持って帰って行った。



▽△▽△▽△▽△▽△



ナナがお風呂から出てくると、コウが神妙な顔で待っていた。


「ロック、ナナちゃん、おねがいが、あります」


「コウのお願い、珍しいね!いいよ、なあに?」


「ナナ、話しを聞いてからだ。聞く前にいいって言うな。コウ、言ってみろ」ごもっともです。ナナはちょっと反省。


「ジルも、いっしょにくらしたい」


「コウ、ジルがここで暮らすって事は、孤児院から引き取るって事だ。今は条件が揃わないから引き取れない。俺たちが拾って預かってるコウのようにはいかない。それに、孤児院にいればジルにも別の育て親ができるかもしれない」


「ジル、コウといっしょに、ぼうけんしゃになるって言った」


「少なくとも、ジルが10才になったら住む所を選べる。ジルが望むならここに住んだらいい」


「孤児院って、外泊そんなに難しいの?」ナナは、行先が分かってても外泊がダメな理由にピンとこない。


「他の子の手前もあるから、難しいだろうな。寂しいのはみんな一緒だ」


「剣の弟子見習だから、ロックの仕事が終わりに孤児院からコウとジルを連れて帰って稽古をつけるでしょ?その流れで、時々住み込み稽古って名目で泊りに来たらダメかな」


「ノットさんに相談してみるが、多分ダメだろうな。おそらく、孤児を自由に外泊させないのは守るためだ。悪い奴に目を付けられたら、最悪外国に売られる場合だってある」


「そうか、それなら徹底して、前例を作らないほうがいいもんね」


「ナナ、来年結婚したら、コウとジルの育て親になったらいい。それなら来年の秋までには引き取れる」


ナナはほっぺたを手で押さえて「けっこんして、そだておやに」などとポワポワと呟く。モモが「ナナちゃん、ほっぺが赤くてかわいい」と肉球でつつく。


「らいねん、ロックとナナちゃん、けっこんするの?」


「ああ、結婚するぞ。それで、コウの育て親になる。ジルも望めば引き取る」


「ほんとう?ジルに、はなしてもいい?」


「本当だ、話してもいい」ロックは冷静に答えているけど、顔は耳まで真っ赤だ。


「あした、ジルにはなす!」



ナナは気づいていないけど、ロックは着々と外堀を埋めている。事ある毎にいろんな所で「来年ナナと結婚する」と宣言して、おかしな輩からナナをがっちりガードしている。


地球では20年ほとんど変化が無かったのに、へーリオスに来てからというもの、ナナの生活はめまぐるしく変わっていく。

ナナは、来年16になった夏に結婚して、秋には2人の子持ちになる予定だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ