いいに決まってる
討伐依頼をこなした帰り道、ブルーベリーを採りながらナナが言った。
「ねえ、ロック、結婚っていくつからできるの?」
普段冷静なロックが、驚きのあまり麻袋を落とした。モモがしゃべるのを初めて見た時みたいな顔だ。
「けっ・・・結婚は、16才からできる。でも、普通は若くても18才くらいだ」ロックの声が裏返る。
「ロックが結婚すれば、コウを引き取れるかなと思って」
ナナの返事に、ロックが冷静さを取り戻す。
「わからないが、可能性は上がる。ただ、ナナはそれでいいのか?」
「私は、ずっと一緒にいると決めてるから。ロックこそいいの?」
「いいに決まってる」
「決まってるの?」
「ああ、決まってる」
ブルーベリーを採りながら赤くなる2人。
「ねえ、ナナとロックは、番になるの?」
モモが無邪気にたずねる。
「な、る。と思う・・・」
今度は、ナナが真っ赤になって麻袋を落とした。
ナナの誕生日の、1か月前の出来事だった。
翌日、町役場のノットさんに、1年と1か月後にロックとナナが結婚するとしたら、コウを引き取れるのか確認に行く。
「お二人が、コウ君を引き取るために結婚するのなら、それはお勧めできません」
「ノットさん、俺が結婚すれば引き取れるかどうか、まず教えてほしい」
「引き取ることは、可能だと思います。ただし、結婚した後です」
「コウの両親を探しても見つからなかった場合、一時預かりの期間はどうなりますか?」
「育親が見つかるまでになります」
「ノットさん、私達が結婚してコウを引き取るまでに、他の人が育親になりたいと言ったら、どうなるんですか?」
「コウ君に確認して、コウ君が行きたいと言えば、手続きして育親に委ねます」
「コウの意向に沿うという事ですか?」
「概ね、そうです。役所で保護できる10歳までに育親のなり手が出てこなければ、孤児院預かりとなります」
「概ねとは?」
「イレギュラーは、どんな事にでもありますから」
「なるほど。コウが育親の元に行かない場合、このままウチで一時預かりする事は可能ですか?」
「それは、こちらとしても助かりますので、許可は下りると思います」
「今までのお話の内容からすると、コウが10才になれば育親の斡旋はなくなって、コウが住むところを選べるという事でいいですか?」
ナナが、ノットさんを見つめながらゆっくりとした口調で問う。
「そういう事です」
ノットさんが、ナナとロックの顔を交互に見て、ゆっくりと頷く。
ノットさん、わかりました。そういう事ですか。
コウが他の育親のところに行くと言わなければ、コウが望む限りこのままロックの家で暮らしていける。
1年1か月後に、急いで結婚する必要はなさそうだ。
嬉しいけれど、ちょっとだけ残念な気持ちになった、ロックとナナだった。




