ロックとナナで『67』(2)
一斉討伐の集合場所は、デュシス森林の湿地だった。
今日は、ジメジメしているけれど涼しい。
キングクロコダイルはジメジメして暑めの気候が得意なので、キングクロコダイル討伐日和だ。
湿地の入口に、ギルドの受付がある。
各パーティのリーダーが、受付で依頼を受ける。
「よう、ロック、今日はよろしくな。固定を組んだって本当か?」
「ああ、よろしく。パーティメンバーのナナだ」
「魔法使いのナナです。よろしくお願いします」
「久しぶりだな、ロック。固定パーティって事は、いよいよ他所へ行くのか?」
「いや、行かないよ。ここで活動する」
「この子は、それ、了承してんのか?」
「してますよ。私もここでの活動希望です」
他のパーティが、次々とロックに話しかけてくる。
「ロック、顔広いね」
ナナが、コソッと呟く。
「ずっとここで活動してるからな」
ロックもコソッと返す。
討伐が始まった。
掛け声をかけて一斉に始まるわけではなく、準備が整った順にキングクロコダイルを倒し始める。
『67』も戦闘をはじめる。
今日、モモはコウとお留守番だ。しゃべる猫はさすがに連れて来れなかった。
ナナは、ロックの剣先に炎を付与して、氷魔法で、キングクロコダイルの大きな口を包んで開かないようにする。
ロックが切りかかり首に傷をつける。ナナは、水魔法を細く強くして目を貫く。その瞬間、ロックがキングクロコダイルの頭を落とした。
1匹だいたい2分くらい。確かに討伐難易度は低いかも。
2人は、付与の効いているうちに2匹目に取りかかる。
黙々と討伐する2人。完全に作業だった。
きっちり20分で10匹倒して、10匹分の証拠の尻尾の先を切り取って、『67』は早々に一斉討伐から離脱した。
話しかけられないように、足早に受付へと急ぐ。
「はい、確かに10個受け取りました。お肉はいりますか?ご希望の場合は明日報酬を受け取る時に、一緒に受け取ってください」
「わかった。肉も欲しいから引換券を」
ロックは、受付から討伐完了の札とお肉の引換券をもらう。
「かなり時間が余ってますが、もう1回受けますか?」
「いや、もう終えようと思ってる」
「苦戦しているパーティもいるので、もう少し参加して頂けると助かるのですが」
くいさがるギルドの受付さん。ロックは、少し困った顔をする。
「ロック、もう1回だけ受けようよ」
「わかった。もう1回登録を」
ロックとナナは、もう一度湿地に戻って、黙々とキングクロコダイルを10匹討伐する。
10匹分の証拠の尻尾の先を切り取って、また足早に受付に戻る。
受付には、数組のパーティが戻ってきていた。
「はい、確かに。こちら討伐完了札とお肉の引換券です」
「いや、肉はもういい」
「ロック、孤児院に持って行こうよ。鶏肉みたいなんでしょ?」
「ああ、じゃあ、肉の引換券も」
ロックは、受付から討伐完了の札とお肉の引換券をもらう。
『67』2人が受付を去ろうと歩き出したところで、ロックは呼び止められた。
「ロック、待ってくれ。その子、付与できんの?」
ロックとナナは顔を見合わせる。
「できますよ」ナナが答える。
「攻撃もしてたよな?」
ナナが答えているのに、ロックに話しかける。感じ悪い。
「ジョン、他所のパーティの事を、あれこれ詮索するなよ」
「ロック、今うちのパーティ、付与できる魔法使いがいないんだよ。わかるだろ」
「付与のできる魔法使いなんて、ほとんどのパーティにいないだろ」
ジョンが、ロックからナナに視線を移す。
「君、ロックとパーティ組んでても、どこへも行けないぜ。俺たちは王都に行こうと思ってるんだ」
「私、知らない場所嫌いなんです。それに、ロックだからパーティ組んでるので」
「君、ここの町出身じゃないだろ?だったら」
「ナナは断ってる」ロックがジョンの言葉を切る。
「ジョン、もうやめろ」ジョンのパーティメンバーが割って入った。
受付は、しんと静まって、みんな聞き耳を立てていた。
ロックとナナは、家路を急ぐ。モモとコウに早く会いたい。
今日は、サンザシも採らない。
「ナナ、他のパーティの戦闘を見て気が付いたと思うが、付与があるのと無いのとじゃ、討伐スピードが全然違う」
「うん」
「ああいう奴が、多分また来る」
ロックは心配そうだ。
「断るだけだよ」
「そうだな」
「何度だって断るよ」
「俺も一緒に断る」
「ロック、ここでずっと一緒にがんばろう」
「ああ、がんばろう」
もうすぐ、家に着く。
「モモ、コウ、ただいま」
「ただいま、モモ、コウ!変わったことはなかった?」
「おかえり。お昼寝したよ。ごはんもおやつも食べたよ」
「おかえり、おやつおいしかった、ジャムはさんだパンもおいしかった。せんぶたべた!」
「モモもコウも、お留守番偉かったね。ご飯もおやつも全部食べれて偉かったね」
コウの頬が赤くなる。モモもうれしそう。ああ、かわいい。この子たちかわいい。心が洗われる。癒される。
ロックとナナは、モモとコウをギュウと抱きしめた。




