6.覚醒ー6
「今…何て」少女の上げた小さい顔に驚愕が広がっていく。
「あ?だから─」予想通りだ。少年の心の底から笑みが湧き上がってくる。こいつは人間になりたい、ただの馬鹿なんだ。「─ここにいる奴全員、怪物にしてやるんだよ。お前に名前を付けたとかいうあのガキもな」
少女の顔から血の気が引く。それが少年に満足感を与えた。
「どうした、薄鈍。…ああお前確か、ネフィル嫌いだったな。ネフィルの卵埋め込まれてバケモノになったってのに、人間に憧れてる馬鹿。よかったじゃねぇか、名前貰えたんだろ?エ…マ…?ぬけだったか?だからもうあの人間もいらねぇだろ。俺が有効利用してやるよ。下僕にして、怪物に変えて、馬鹿みたいに爆散させるんだ。ははっ!こいつぁいいな!この街の頭上に上がってた火の玉みてぇに、きっと綺麗に散るぜ。お前も見るか」
少女が雄叫びを上げた。両手で拳を作り地面を叩く。その衝撃で周囲の瓦礫が飛散する。両脚を空回りさせて地面を掴むと、馬鹿みたいにがむしゃらに少年へ向かって突進してきた。
少女の動きが可笑しくて笑いが込み上げてくる。傑作だ。ラミエルに命令を出すでもなく、無防備にも突っ込んでくる。何をそんなに必死になってんだか。
少女は飛ぶように駆け寄ってくると、直前でステップを踏み体を回転させて、右脚を鞭のように放ってきた。
いつも同じ手だ。少年はそれを左手の甲で受ける。衝撃が来る。肉同士が打ち合う音が激しく鳴った。
踏ん張ってその衝撃を受け切ると、少年は少女の脛を右手で掴んだ。そのまま力任せに地面へ叩き付ける。
少女の頭が地面に酷く打ち付けられる所を想像する。しかし、その感触は右手からは伝わってこなかった。見下ろすと、両手で地面を支えているのか、少女の体が少し沈んで戻ってきていた。
少女の体が回転する。それに合わせて脚も乱暴に回った。少年は流れに逆らわず、右手を素直に離してやる。すると少年の顔めがけて踵が飛んできた。
少年はすぐさま体を低く沈めると、足払いした。少女が無様に引っくり返る。もたつく少女より先に体を起こし、その顔を狙って蹴りを放つ。すると足の甲がぶつかる瞬間に、ラミエルが間に入り込むのが見えた。
少女が元の場所に戻るように転がっている。少年は舌打ちをした。やっぱダメか。どうすっかな。
「うあ……あ…っ」デジャヴのように少女の体が止まった。さっきと同じような呻き声を上げている。
「お前、馬鹿だろ。お前が俺に体術で勝てたことあったかよ」少年は冷笑を浮かべた。




