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5.強襲―18

 「しかし困りましたね」エミの様子を見ていた女性が顔を上げて口を開いた。

 長方形の、木製の貨車。そこにリュウ達を含め、幾人かの人達が寝かされているらしかった。そしてそれを見る人がそれぞれ傍ら座っていて、それだけでもう貨車は一杯になっている。

 薄ぼんやりとした灯りに照らされて、灰色の壁が後方へと流れていく。リュウはそれをぼんやりとした頭で眺めていた。


 「そうだな。もうあそこへは戻れまい」髭もじゃの応答が聞こえる。

 「将軍様は何をお考えになられているのか」そう女性は口にし、はっとしたのか直ぐ様頭を下げた。「申し訳ございません!何卒ご容赦を」


 髭もじゃは軽く笑い声を立てた。「確かに今のは御法度であろう。が、緊急時だ。前後不覚となっても致し方あるまい。それに儂含め、あの辺りに住む者にしてみればまさに他人事ではないしな」

 「…ありがとうございます」女性はまた頭を下げる。


 「しかしお主の言うことも分かる。他に手立てがないとはいえ、まさか焼き払うのだからな。殿下も思い切ったことを為さる」

 「焼き払う…」リュウは髭もじゃの言葉を拾って反芻した。そして疑問に思った。「焼き払うって……何を?」

 すると髭もじゃがこちらを見下ろしてきた。「何を?決まっておろう、街をだ」


 街を、焼く…?


 髭もじゃは続ける。「ネフィル対策として随分前に策定されたであろう。ネフィルに対して有効な手段は他にない。あれは触れることすらできぬ上に、そもそも見える者も少ない。非常に厄介な奴らよ。だが昔、奴らによって町が一つ滅ぼされた折、奴ら炎に弱いということが分かったであろう?故に、焼くのだ」

 滅ぼされた町。その響きが弱ったリュウの小さな胸をきつく締め上げた。


 「ヒガシノクニにはもう何処も彼処も導火線が張り巡らされている。これもひとえにネフィルの為なのだ。故にネフィルの侵入があれば何処であれ焼き払えるわけだ。それは城下町とて例外ではない」

 リュウは衝撃を受けていた。自分の生まれ育った故郷が、いつの間にか自滅的な政策を取っている。けれど確かに有効打はない。現に昨日の昼間に相対した時もリュウの刀は通らなかった。さっきの少年の前では兵団でさえ手も足も出なかった。

 あのバケモノと戦うには、もうそれしかないのかもしれない。そう納得しかけた時、呟くような声がした。


 「…ダメ、そんなの……あんなに、キラキラしてたのに」

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