4.城下町の祭り―16
マジかよ。リュウは、ノジマがどうしたいのか察してしまった。懐いていると言った以上、そうするしかないのだろうが、リュウはノジマに軽く怒りを覚えた。
「おいエミ」リュウは声を殺して尻尾の向こうを呼んだ。けれどすぐさまリュウは下手を打ったと思った。ここで大きな声で返答があれば台無しだ。あのエミならやりかねない。
肝を冷やしたリュウだったが、それは杞憂に終わった。「なに?」と返ってきたエミの声も押し殺されていた。
「コイツに触りたいんだけど、いいか?」噛んでこないだろうな、という確認だった。
「こいつ?」
「えっと…ガブだよガブ」
「あ、うんいいよ」
「そこ、何を喋っている!」
鋭い声が飛んできて、リュウは息を飲んだ。「いや、あのー…」と目を泳がせながら言葉を探す。
「えっとー…あ、なんか、コイツが落ち着かなくてな」適当な言葉が口を突いて出る。
「こいつ?」隊長らしい真ん中の男は、奇しくもエミと同じ台詞を発した。
「オオトカゲだよオオトカゲ」
リュウは踏み出して言った。「急に囲まれてびっくりしてんじゃないかな」
そして手を伸ばす。こうなりゃ自棄だ。自分の手の先が震えている気がする。それがあいつらに悟られていないか気にかかる。
指先が、前屈みのような姿勢のオオトカゲの首元に触れた。次の瞬間には噛み付かれていることを想像するが、そうはならない。
「よ、よぉしよし、怖くないぞー」声が震えないように気を付けながら鱗を擦る。すると、斜め上に見えるオオトカゲの目がうっとりしたように閉じた。
マジか、コイツかわいいじゃん。
「いい子だねー、ガブ」エミの声が聞こえた。少し屈んでオオトカゲの首の向こうを見ると、そこに彼女の足があった。
あ、俺じゃないのね。
リュウは少しがっかりした。
「子ども達が…信じられない」隊長の男の、驚嘆が聞こえた。




