4.城下町の祭り―15
橙色の太陽光に目を焼かれ、瞼を瞬かせながらドーロに降り立つ。
視界が暗くなったまま、ドーロの先を見やると、黒い人混みのような塊が見えた。
バランスを崩し、無意識に出した手に触れたのは艶やかな鱗で、思わずぞっとした。
「おい、責任者は誰かっ!不用意に動くなよ!動けば敵意があると見なす!」前方から怒号に似た声がする。
言っていることが無茶苦茶な気がする。リュウは溜め息を吐いた。けれど先程のノジマの言葉を思い出す。“─急に突っ込んできたんだ。そら怖いだろ─”
夕闇に目が慣れてきて、兵達の様子が把握できるようになってきた。どの刀も震えていた。
そりゃ怖いわな。リュウは少し同情した。
「あー…責任者は一応、私です」リュウの斜め前に立っていたノジマが穏やかに言った。見ると両手を上げている。敵意はないと言いたいのだろうか。
「…よし、ではお前っ!十…いや十五歩こちらへ歩いて跪け!」
その言いようにリュウは反発を覚えたが、ノジマは何でもないことのように足を動かした。そしてきっちり十五歩進むと手を上げたまま膝をついた。
すると前方の黒い塊から三人がノジマに近付いていった。そして真ん中の、さっきから大声でうるさい男が言った。「通行証は」
「ああ、はいここに」そう言ってノジマがもぞもぞと動いた。リュウの位置からは分からないが、恐らく懐に手を入れたのだ。途端に三人の兵に緊張が走る。
ノジマは何やら取り出し地面に置くと、そのままにじり下がった。
真ん中の男はノジマを睨み付けながらそれを拾う。そして見る。が、よく見えなかったのか角度を色々と変えた。夕日に照らされる角度を探しているらしかった。
やがて良い位置を見つけたらしい男は、しばらくして万屋、と呟いた。
「はい。それが生業でして」ノジマは頭を下げて答えた。
「そうか。子どもが二人、それに老人か。…それで、あれはなんだ。何故万屋の荷車をオオトカゲが牽いている」
「ああ、それは─」ノジマは言いながらリュウ達の方を振り返った。「どうにも懐いちまったらしく」
「懐いた?オオトカゲがか?」男が疑問の目をこちらに向けてくる。
オオトカゲが懐くって、どうするつもりなんだよ。ノジマの感じだとエミの力だとは言いたくないんじゃないだろうか。リュウはそう推測した。だけどそれが事実だし、他に何て言うんだよ。
そう考えてふとノジマを見ると、彼はリュウに目で何かを訴えていた。




