3.西の邦の王―7
その短剣は華美な装飾もなく、シンプルな紡錘形で、反射光に鈍い鉛色を放っていた。
「てて天子様、何を為さるおつもりで…?」
おっかなびっくりといった様子で宮司が訊ねた。
「何って…実験?」
答えながらも、天子はネフィルから目を離さない。
「実検……首を検める、あれですか?」極度の緊張のためか、宮司は戯言のように言う。
「違うよ。何その物騒な─」
巨体の光が急に大きくなったように見えた。その口らしい部分がガバッと開かれる。
近付いてきたのか。天子は一瞬遅れてそう気づく。本当に音もしない。
身体を仰け反らせ、ステップを踏むように下がる。そしてそのまま右手を振り上げた。
その手に握られた切っ先が伸びるように斬り上がる。それがネフィルの顎に激突する。
バチンッと何かが弾けるような音がした。同時に天子の右手が叩かれたように痺れる。
衝撃で、天子は数歩後退る。その尻が後ろの宮司の頭に当たった。
突然のことに、天子は瞬きを繰り返した。ネフィルの方を見ると、あちら側も引き下がったのか、幾分距離が出来ていた。
右手を見る。じんじんと響くその手には短剣はなかった。行方を探すと少し先、ネフィルと天子との間くらいの地面に落ちていた。
「ふむ」天子は首を傾げつつ右手を開いた。その中の空間が歪む。同時に地面の上の短剣も歪んだ。そしていつの間にか短剣が天子の手の中に戻っていた。
天子は舐め回すように短剣を観察する。そして左手で刀身に触れてみる。
「うお、あっつっ!!」
突然、天子が大声を上げた。
「どうなされましたかっ」ネネが心配そうに声を掛けた。
天子はその左手をぶんぶんと振りながら振り返った。その目には涙が浮かんでいた。「あれの正体、分かったかも」




