3.西の邦の王―3
「……は、今なんと」ワンテンポ遅れて宮司は呆けた声を出した。
「なりませんっ!」
急に、今まで隣で黙っていたネネが口を開いた。見ると怒ったように口を真一文字に結んでいる。
「え、なんで?」天子が率直な疑問を口にすると、ネネが堰を切ったかのように意見しだした。
「何でではありませんっ!御身はこのニシノクニを統治するもの。滅びた他国へ物見遊山など、言語道断ですっ!そのようなことは其処な宮司にでもやらせればよいのです」
「え、何故に」飛び火した宮司が変な声を出す。天子は溜め息を吐いた。
「あのね、山根くんには政を手伝ってもらうって仕事があるんだよ。それにほら、こんなひょろひょろなのに妖怪退治とか絶対無理じゃん。西の国には軍隊置いてないんだし、僕が適任だと思うけど?」
理屈を並べてみるものの、ネネは頑として譲らない。天子は面倒だなぁ、と姿勢を崩した。後ろ手を突いて寄り掛かるようにする。「僕が怪我するとでも思ってるの?」
すると見かねたのか宮司が、畏れながらと口を開いた。「天子様の仰られる通り、御身は天から御出に為られた御方、奇蹟の御業を自在に操られ、その力はその身のみでこの世を平らげられるものであると存じております」
「それほどでもないよ」天子は謙遜ではなく、事実として指摘する。その隣でネネが宮司を睨み付けている。
「しかしながら、ネネ様の仰られるように、御身はこの国に欠かせぬもの。危険な処へ御出に為るのはお止めいただきたい、という話も分かります」
宮司は板挟みは御免らしい。両方の意見を持ち上げてそそくさと引き下がってしまった。
全く面倒くさい。天子は溜め息を吐いて妥協案を挙げた。
「じゃあネネも一緒においで。それでいいでしょ?」
「いや、それでは何の解決にも」宮司は直ぐ様指摘したが、ネネの膨れっ面は引っ込んだ。
「ええ。それなら構いません」
「え、何故に?」
「じゃあ、そういうことで」
「え、どういうことで?」
天子とネネの顔を見比べながら首を右往左往させている宮司に、天子は声を掛けて立ち上がる。
「じゃあ御輿出しといて。すぐ行くから」




