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【9月30日非公開予定】復讐の始まり

復讐を題材にした物語なので、ぶっちゃけここからが本編みたいなものです!

長々と申し訳ない!



 ここは、異世界パルコガラス。私の元いた世界とは別のもので、さらに私がつい先日まで、一年間もいた世界だ。


 私はこの世界に、『勇者』として呼ばれ……魔王を倒したことにより、この世界を救った『英雄』になった。


 それは、正直悪い気はしない。私の力で、この世界の人達を救ったのだという事実は、普通に生きていたら絶対に味わえないものだ。


 ……けれど、今はただ、この世界に憎悪しか感じていない。



「ここは……確か、魔王討伐のために立ち寄った村だっけ」



 事前に準備していた、顔を隠せるフードを被った私は村へと降り立つ。別に顔がバレても問題ないが……魔王を討伐したはずの英雄がいると、変に噂になっても困る。


 ……今から私は、この世界に、復讐するのだから。



「おや、旅人さんかい?」



 なるべく気配は消していたが、それは一般人には関係がない。私に話しかけてくるのは、この村の女性だ。


 さすが異世界、というべきか。シルエットは人間なのに、その顔は完全に別の生き物だ。人間の体に猫の顔を持つ、いわゆる獣人。


 彼女は、私に気さくに話しかけてくれる。この村の人は、そうなのだ……勇者パーティーとかそんなの関係なく、誰に対しても優しい、そんな人達。


 ……すべてを奪われた私とは対称的に、救われたことで笑っている人達。



「あの、なにか困り事でも……ぉ……!」



 うつむき、なにも話さない私を不思議に思ったのか、女性が顔を近づけてくる。私はその隙を逃さず、素人には目に見えないほどの手刀で、彼女の喉をかっ切る。


 それにより女性は、声をあげる暇もなくその命を落とす。本来ならば喉から血が吹き出すところを、私は回復魔法により『傷だけ』を回復させる。そう、傷だけだ。痛みそのものは残ったまま。


 私には魔法の適正もあったが、あまり実用的なものはなかった。この回復魔法だって、勇者パーティーの魔術師を真似て覚えたもので、彼女に比べれば出来損ないもいいところだ。


 本来の回復魔法ならば傷やダメージ、それらを治すことができる。だけど、私が使えるのは傷だけを治すこと。それは、実戦においてなんの意味も持たない。せいぜい、見映えがよくなるだけだ。


 それが、こんなところで役に立つなんて思わなかった。



「やっぱりこの世界なら、魔法は使えるのか……」



 同時に私は、魔法を使うことができたという実感に軽く感激していた。元いた世界では、召喚魔法を除いて、あらゆる魔法を使うことができなかったからだ。体力や身体能力は、そのままだったけど。


 それに、一度元の世界に戻ったからといって、魔法が使えなくなる、ということでもないらしい。これで、復讐のためにできる幅が広がった。



「っと」



 声もなく倒れる女性を、抱き抱える。彼女自身に恨みはないが、仕方ない。私の復讐対象は、この世界すべて……この世界に住まう人間すべてということでもあるのだから。


 八つ当たりだと言われても、構わない。ただ私は、私が救った人間が、のんきに笑って過ごしているのが許せない。ひがみだと、言うなら言えばいい。


 復讐なんて、独りよがりのものだとわかっている。それでも、止められない気持ちというのはあるのだ。



「さて……始めよ」



 そして……不思議なことに、女性の命を奪った私は、なにも感じなかった。申し訳なさも、悲しみも、同情すらも。


 きっとそれは、もう私が、この世界のことをなんとも思ってないからだろう。


 動かない肉の塊となったそれを投げ捨て、私は行動を決意する。まずはこの村を手始めに、復讐を開始してやる……!

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