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【9月30日非公開予定】召喚獣



「くっ、そ!」



 扉が、破壊される……止めることが一歩間に合わなかったことにグレゴは舌打ち。その場から飛び退き、私を振り払ってから後退する。


 いい判断だ……もしあのまま、真剣白羽取りで受け止めた状態が数秒でも続いていれば、私は剣をへし折っていた。いくら『剣星』が使う剣でも、折るくらいなら私には造作もない。



「アンズ、いくらキミでも、今のキミを城の中に入れるわけにはいかない!」



 グレゴと私との距離は、再び広がった。この距離なら、今から私が城内への侵入を試みても、グレゴには追い付けやしない。


 なのに、この距離感で私を足止めできる手段があるっていうのか……?



「……ハッ!」



 グレゴはその場で構え、剣を振るう。すると、一閃された剣の風圧……いや剣圧が、殺傷能力のある実体となって私に襲いかかる。


 なるほど、これなら離れた位置からでも攻撃できるってわけか。でも……



「そんな単調な攻撃、当たらないよ!」



 いかに遠距離からの攻撃が可能になっても、所詮は一直線方向にしか進まないのだ。距離と位置さえ見ておけば、どうとでも避けられる。


 ただ、それはグレゴも承知のはずだ。それを承知でなにを……



「ハッ、ハッ、ハッ!」


「って連続で撃つだけかよ!」



 なにか策でもあるのかと思えば、ただ連続に剣を振り回すのみ。数打てば当たるとでも思ってるのかこの男は。


 私がそんな甘い相手じゃないこと、知ってるはずなのに……



「遊びなら付き合う気はないよ! このまま城の中に……」


「いや、ただの時間稼ぎさ。本当は、城の門が破られる前にケリをつけたかったんだがな」



 ……時間稼ぎ、だって?


 時間稼ぎとはつまり、仕掛けた罠が起動するまで……もしくは増援が来るまでなど、主にそういった理由で使われるはずだろう。つまり、ただの一般兵士が時間を稼ぐなら、まだわかる。自分たちよりも強い『剣星』や『魔女』が来るまでの時間稼ぎ。


 今この国……いやこの世界に、『剣星』と『魔女』を上回るほどの実力者はいないはずだ。だからいくら増援を連れてきても、所詮は烏合の衆。


 となると、残る理由は……『魔女』による特大な魔法を撃つための時間稼ぎ? ……いや、今エリシアはユーデリアに手一杯だ、よそに気を使う余裕なんてない。


 じゃあ、いったい……



「!」



 瞬間、異変を感じる。地面が、揺れている……?


 しかもその地響きは、だんだん大きくなっている。なんだ、地震か? いや、この世界に地震はない。


 つまり……



「地面の中に、なにかいる!?」



 その場から飛び退いた直後……周囲の地面が割れ、地響きの正体が姿を現す。


 それは、山……いや、山のような物体だ。言い過ぎた、そこまで大きくはない。そういう表現を使いたかっただけだ。


 地面の下から現れたそれは、ズシン……と地響きを轟かせ、地面の割れ目から足を覗かせ……地面に、のしあげる。そして、残る三本の足も同じように、地面の下から現れる。


 四本足の生き物……巨体を現したそれは、一言で表すならトカゲ。そう、羽の生えたトカゲだ。つまりこいつは……



「ドラゴン……!?」



 今まで見てきたものは、短い手足に巨体は羽で空を飛ぶ……そんな生物だ。だけどこいつは、まんまトカゲに羽が生えた、いわゆるドラゴンの出来損ないみたいな姿をしていた。


 朱色の鱗を輝かせ、鋭い牙を覗かせる。山くらいないとはいっても、それでもでかい……トラックくらいなら一口で飲み込めるだろう。


 なんでこんなのが地面の下から現れたのかはわからない。元々地面の下に住んでいた? 現実的ではない。それに、グレゴの『時間稼ぎ』発言の直後に現れたのだ。偶然とは思えない。


 つまりこれは、王国側の生き物……いや、召喚獣か。どういう原理かは知らないが、召喚した獣が地面の下から出てきたと。普通、魔方陣とかに現れるんじゃないの?


 それはそれとして……こんな強大な魔力を持つ召喚獣を召喚するなんて、召喚主は相当の術師ってことだ。まだそんな人物が、この国にいたなんて……



「ぁ……」



 いや、いる。一人。私の知る、この国一番の召喚術師が。


 そいつの顔を、名前を思い浮かべた瞬間、抑えていた怒りの感情が沸き上がってくる。どす黒い、いろんな感情に呑み込まれてしまいそうだ。


 これほどの召喚獣を召喚できる人物……加えてグレゴの『城の門を破られる前に……』発言。その人物は、おそらく城の中にいるということ。城の外で見ているのなら、わざわざ城の敷地内の地面に穴を開けて召喚する必要はない。別の場所でやればいい。


 この騒ぎの中にあっても、城の中であぐらをかいている人物……そんな奴は、私の知る中で一人しかいない。



「ウィルドレッド・サラ・マルゴニア……!」



 あいつが……マルゴニア王国王子であるウィルドレッド・サラ・マルゴニアが、この召喚獣の召喚主だ! あいつは、今城の中から私のことを見ている!


 異世界から人一人を召喚する……それほどの魔力があれば、こんなデカブツを召喚するのも訳はない。そうか、自分は安全地帯から、召喚獣を使役し敵を倒す……そういうことか。


 なら私が、嫌でもお前を私の前に引きずり出して……この想いを、ぶつけてやる! 『剣星』グレゴ・アルバミアをして時間稼ぎと言われるほどの召喚獣だろうが……関係ない! 壊す、殺す!


 死ぬまでせいぜい、高みの見物でもしているがいいさ!

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