《世界介入》の訓練をしましょう。
さて訓練だ、と言っても大したことはない。基本はマニュアルの図解解説ページに載っている。
が、折角なので自動精霊に説明を貰うことにする。
決して分からなかったのではない。本当。嘘じゃないよ。
【マニュアルにある基本の《創造》《付与》《変更》《削除》《解除》をマスターすれば大体の事は可能ですが…まあ、今後の教育マニュアル作成の参考にします】
それはどうも。
【まずは《創造》。これは《物質創造》《法則創造》《概念創造》《生命創造》の4つです。新たな概念を理解できればもっと進んだことができるかもしれませんが】
《物質創造》は文字通り物質を作る。液体・固体・気体・エネルギーとまあ、なんでも大丈夫らしい。
《法則創造》は『落下』や『燃焼』といった『現象』を起こせる。特定状況下で水が燃えるような法則を作ったりすることも可能らしい。
《概念創造》は理解できなかった。『そういう物だ』という認識を作るとか、認識を変えるとか、概念その物がどうとか。
自動精霊が言うには【概念としての《死》は触れた物全てが死に至ります】、とか。
最後の《生命創造》は単純だ。生命体を作る。それだけ。
とはいえ動物、植物、精霊のようなエネルギー生命体まで創造可能だというのだから、その便利さは凄まじいものがある。
問題はそれを使いこなせないということくらいか。
【次に《付与》。これは物質や空間に対して法則や概念を足す事が出来ます。龍王の時の《概念付与》がそうですね】
変な話ではあるが、剣にツルハシの概念を足すと剣で岩を掘ることも可能とか。
何処かで聞いたような話だ。
【《変更》は対象の物質、法則、概念を変えるものです。生物の能力や外見、色々なものを変えることもできます】
人間を犬に変えたり、ナマケモノの素早さを最大にしたりとやりたい放題できるそうな。
狭い範囲の改変では使い勝手が良いものの、先の龍王のようにあまりに巨大だと範囲制限のせいで変更ができない欠点がある。
というのも動物の場合、生物の中心である心臓部分が1立方メートル以内でないと駄目なのだそうだ。
不便だなぁとは思うもののそういう仕様なので仕方がない。
【《削除》と《解除》については…まあ、そんなに説明しなくても大丈夫ですね】
これは介入範囲の物を世界から削除したり、介入内容の取り消しに使う。
《削除》は指定したものが世界から消えて無かったことになるが、《解除》はもっと融通が効き、《解除》の《解除》も可能だ。
身近なモノで例えるなら、スイッチのオフが《解除》、スイッチの破壊が《削除》にあたる。
自動精霊が言うには、管理者の制限増加で上位に入るのが《削除》の乱用だという。
それだけ取り返しのつかない行為というわけだ。
ちなみに一番多いのは世界の私物化だそうな。ほら、俺つえーとかハーレムとかそういう。
【では訓練を始めます。…と言っても介入に慣れてみるのと、口に出さずに行えるようにする練習くらいですが】
口に出さずにやるのは意外に難しい。自分自身に介入すればいいじゃないか、というのはご尤もなのだが、自分の思考能力を引き上げるのは禁止なのだそうだ。
神様が求めているのはまだ見ぬ管理者の在り方であって作られたありきたりの管理者ではない、とか。
初めて聞いたが分からなくはない理由だ。
神様が作った管理者ではない、新しい管理者を探すのがこの研修の目的なのだろう。
新たな可能性を見出だせるような管理者を。