第39話
「どうだった?あき姐さんとの稽古?」
「基礎的な部分の底上げにつながるものでした。」
「なるほどねー。辛かったでしょ。」
「まぁ、毎日めった打ちにあってましたね。」
「あき姐さんらしい。」
龍明さんは軽く笑った。
支部長から言い渡された「結界張替え」。今回の目的地は徳島県木屋平村。前回の宿毛と比べると距離は短い。とはいえ、また山道を進んでいくことに変わりはない。
「恒一君って馬に乗ったことある?」
「え?いや…ないですけど。」
「そっか。じゃあいい機会だな。」
そう言うと龍明さんは右手を前に出し、指を全開にした。そのままゆっくり中指以外の指の一番手の甲に近い関節を曲げた。
「式神召喚。」
龍明さんの隣に黒い靄が現れた。靄は横長く形を成していき、地に4本の足をつけた。胴と思われる部分の先端から首のようなものが生え、馬を思わせる形状になっていく。靄が晴れると、そこには白骨と化した馬がいた。
「紹介するよ。僕の式神、『馬䮩』だ。」
カァーーー!!!
馬䮩が龍明さんに応えるように叫んだ。
首あたりから黒い髪のようなものを生やし、胴辺りに古びた布をかぶっている。一目見ただけで「妖だ。」と感じさせる風貌だ。
「じゃあ恒一君、乗って。」
「え、乗るんですか?」
「だって走りたくないもん。それに馬䮩の方が速いし。」
カァーーー!!!
「馬䮩も乗ってくれって言ってるぞ。」
「はぁ。」
「はいはい。乗った乗った。」
そう言うと僕は龍明さんに半ば無理矢理馬䮩の背中に乗せられた。
背骨と背骨の間に座ったが、しっかりはまってくれなかったためとても痛い。長時間ここに乗りたくはないとひしひしと思う。
「よっこらせっと。」
龍明さんは僕の後ろに跨った。僕より少し小さいためか、背骨同士の間にしっかりはまっており辛くなさそうだ。
「しっかり捕まっときなよ!」
「はい!」
龍明さんはそう言うとサーベルを抜き、刃先を前に突き出した。
それを横目にとらえた馬䮩は雄たけびを上げ、前足で地を払った。虚だった眼窩に蒼き炎が灯り、足元に霜が表れる。
「初夏なのに霜が…!」
「馬䮩の能力は『冷気を形成する』力。眼窩に蒼炎が灯っている間はずっと冷気を放っているんだ。にしても、戦闘中じゃないのにこの状態ってことは、こいつ相当張り切ってるな。」
そう言うと龍明さんは軽く笑った。
僕もそれに合わせて笑った瞬間だ。
馬䮩がいきなり走り出した。僕は予想外の速さによって首を痛めてしまった。
◇◇◇
僕は馬䮩の胴体にしがみついていた。理由はもちろん、振り落とされないようにするためである。
馬䮩の速度は凄まじい。視界内のすべての建物が歪んで見えてしまうほどだ。
身をかがめて風への抵抗を少しでも抑えなければ、簡単に吹き飛ばされる。
僕は恐る恐る後方を振り返る。
「いいぞ!飛ばせ馬䮩!」
カァーーー!!!
後ろで龍明さんは僕にしがみつきながらサーベルを振り回していた。
よく見ると龍明さんのサーベルの表面に氷が付着している。馬䮩の能力の影響だろうか。それにしても龍明さん、この風圧に平然としているのは流石だ。
「もう少しで着くぞ!」
「はい!」
少しずつ馬䮩の速度が落ちていく。僕はゆっくり体を起こしながら周囲に目を向ける。
斜面にいくつもの家が並ぶ不思議な村だ。斜面を壇上に切り分け田圃を形成している。
後方では細長い霜の道が形成されている。しがみつくのに必死であまりよく見ていなかったが、こうしてみるとどこかきれいだと感じる。
「着いたぞ。」
馬䮩の足が止まったので、僕はゆっくりと背中から降りた。
あまり長い時間乗っていなかったため、尻への負担は想定よりもなかった。
何だろう…文章力が下手になってる気がする…。
あっ、21日なのですがリアルの予定が立て込んでいるので休ませていただきます。




