第9話
空也の下で修行を始めてから最初の日曜日。
恒一は普段よりも遅く起きる。
式のおかげで疲労はすぐに回復するようになった。
だが、完全に回復しきっているとはいいがたい。一日をこなせる程度には回復しているという状況である。
そのため、恒一は修行に行く日よりも多く眠ってしまったのだ。
布団から起きた恒一は身支度をして四国支部内にある食堂で朝食を済ませる。
ここの食堂は土日祝いつも開いている。疲れていて自炊がままならない恒一にはうってつけだ。
その後、部屋に戻った恒一は毎日持って行っているノートを手に取る。
一応寝る前に復習はしているが、疲労が溜まっていて頭に入らない。
だから今のうちに復習しておかねば。
恒一は空也の下で学んだことを見返す
◇◇◇
自分たちは『式』というものを操ることができる。
式を操るのもには2種類いる。『式神使い』と『式能使い』だ。
簡単にいうと「式神使いは契約している『式神』と共に戦うもの」、「式神使いは固有の異能を用いて戦うもの」。
自分は式能使い、もっというと『戦闘で主な攻撃手段とならない式能を持った者』補助能使いである。
(この辺は6話で説明しているので詳しく知りたい方は6話を読み返してください by狐のこ)
自分たちが討伐せねばならない存在『妖』。
一般人に認知されていないのは生息地が人があまり住んでいない場所なのと、人里に来る前に妖防衛課の者が食い止めているから。
妖の姿はさまざまであり、人のようなものから異形のもの、実在する生物のようなものと多岐にわたる。
彼らに共通する性質は大きく3つある。「式を生命源とし、式を生み出す『魂』があること」と「生物の魂を食らうことで強くなること」、「生物を超越した寿命をもつこと」だ。
妖は何も食わず飲まずでも生き続けることができる。
それなのに生物の魂を食らうのは『生物の魂を取り込めば強くなる』という説が有力らしい。
ゆえに大半の妖は様々な生物の魂を食らう。
もちろん、人間もその対象だ。
そのため妖の中には人里を襲い魂を乱獲しようとするやつがいる。
自分たちはそれを退治することが役目だ。
妖を退治するには生命源である魂を破壊する必要がある。
基本的に魂を破壊することを意識して戦うが、妖の中には魂を何重の式で覆い守っているものもいる。このようなものに魂を集中的に攻撃することは、魂を囮に攻撃される危険性が伴ってくる。
そのため、そのようなものと戦うときは『四肢や頭を欠損させて魂を自壊させる。』という戦術が有効である。
ほとんどの妖は生物同様四肢を欠損されても再生することができない。
そのため、欠損したところから式があふれてしまう。
そうなれば生命源である式がうまく全身に行き届かず、魂が自壊するということだ。
妖は式能使い同様、固有の異能を持っている。
ゆえに、戦闘時は異能を分析したり、警戒する必要がある。
また、妖の中には異能とは異なり『体の構造的に使える力』があるものが存在する。
毒蛇を例にすると、毒蛇は獲物を嚙んだ時に毒を流し込むことができる。ここで毒蛇のような妖がいたとすると、『体の構造的に使える力』である『獲物を嚙んだ時に毒を流し込む』と、『異能』の両方を警戒しなければならない。
◇◇◇
ノートを見返した恒一は部屋を掃除する。
普段は忙しくて掃除ができないため、休日である日曜にしておかなければならない。
部屋を大方掃除し終えると、いつの間にか正午をすぎていた。
恒一はまた四国支部内の食堂に向かう。
今は平日空也の家で食べているため利用することはないが、空也の元を去ったら毎日のように利用するのだろう。そんなことを考えながら恒一は昼食を食べる。
昼食を終えた恒一はまた部屋に戻った。
そして、部屋の真ん中に立ち、目を閉じる。
深く深呼吸をし、集中。
全身の式を感じ取り、その後右腕に意識を傾ける。
初めて式の移動を成功させて以降、様々な部位での式の一点集中と時短を目指す特訓をしている。
はじめて1週間も経っていないので、まだまだ時間がかかってしまう。
一番精度がいい左腕でも1時間はかかってしまう。
空也曰く、目標は1秒以内でできるようになること。
恒一は心の中で「これを1秒でできるかよ。」と思いながらも練習する。
少しでも加減を間違えれば一点に集めた箇所の骨にひびが入る危険性がある。
そのため空也からは
「家で練習する際は速さではなく正確性を意識しろ。」
といわれている。
そのため恒一は式が集まり始める瞬間を探すことを意識している。
焦りは危険性を伴う。失敗したときそう実感した。
だから…ゆっくりでも正確に。
恒一はそう考えながら左腕に力を籠める。
この日、恒一は6時間で右手2回、左手3回の計5回を成功させた。
両手の骨を傷つけることなく。




