9話「ステータスを知りたい!」
『カンナビ』は街にしては栄えている。魔獣の出やすい辺境にあるため、冒険者が腕試しに訪れるからだ。
冒険者は魔獣の素材を仕入れ、冒険に必要なアイテムを買ってくれる。そのため、行商人も商売に訪れる。物が増えれば人も増える。
結果、危険な辺境にありながら『カンナビ』は都市に匹敵する繁栄をぶりを見せているわけだ。
「あの、ギルドへ行く前にアイテムショップで買いたいものがあるのですが…」
カンナビの話をミーナから聞いていると、サチがアイテムショップへ行きたいと言い出した。
「何か必要な物があるのか?」
「えっと、ステータスシートが欲しいんです。ギルドカードを作成する際にステータスを見られるので、その前に確認しておこうと思いまして」
詳しく聞くと、ステータスシートとはレベルの数値や所有スキルを映し出してくれる使い捨ての紙らしい。
話の節々にレベルやスキルといった用語が出てきてはいたが、本当にRPGゲームのような意味で使っていたとは、さすがファンタジー世界だ。
是非とも自分のステータスを知りたい!
「行こう、すぐ行こう!」
まずはアイテムショップへと向かった。
「おお、すげぇ」
様々な色の薬が入った瓶、魔獣避けのデザイン最悪なアイテム、野営用グッズ。あらゆる道具が揃っている。
「ユージ殿は別の街のアイテムショップに行ったことはないのか?」
「ああ、そもそも街に来たのも初めてだしな」
「ユージさんは、私と同じでどこかの国に召喚された勇者なんですよね?」
「ん?違うぞ?別に勇者じゃ無いと思う」
「「え?」」
何か、齟齬があるようだ。
「ユージ殿は異世界から来たのじゃろ?」
「ああ、日本人だ」
「国を挙げての大魔術で召喚されたんですよね?」
「ちがうぞ、気づいたら一人で森にいた」
「「え?」」
二人とも何か考え込んでいる。だが、俺自身もどうしてこの世界に来たのか、誰が呼んだのかも分からない。なので説明しようがない。
それよりも今はステータスだ。
「おっちゃん、ステータスシートくれ」
「おうっ、人数分でいいかい?」
「あー、あともう一枚。いや、もう二枚頼むわ」
スゥの分と予備にもう一枚だ。
「おお、そしたらおまけしとくぜ」
ミーナが払うと言ってきたが、少女に支払いを任せるのはプライドが許さない。事前にスゥからもらっていたお金を支払う。
眷属の物は…俺の物だ。
「合計で2万ピンズだな」
結局ステータスシートを5枚購入した。1枚おまけしてくれたが、本来なら1枚5000ピンズらしい。
この世界の通貨は『ピンズ』という棒状の貨幣が流通している。
石貨が1、銅貨が100、銀貨が1万、金貨が100万ピンズであり、白金貨は一本で1億ピンズらしい。
物価は日本と同じくらいで1ピンズが1円くらいの価値だ。
つまり、ステータスシートはそこそこ高い。
来る時はだいぶ無視したが、次からはもう少し魔獣を狩るとするか。
「どう使うんだ?」
「紙に魔力を流せばステータスが浮き出ますよ。それでは、私たちはあっちのほうでやりますので」
ん?俺たちに見えないようにステータスシートを使うらしい。
個人情報だから、覗かれるのは嫌なのだろう。この世界のマナーというやつか。
「俺たちはこっちで見てみるか」
「はい」
スゥと俺はミーナ達とは違う場所で見ることにした。
「魔力を流せばいいんだよな。っていうか、スゥのステータスも写せるのか?」
「可能ですよ、昔使ったことがあります」
そう言ってスゥが魔力を流すと、真っ白な紙に文字が浮かび上がってきた。
レベル:56
名 前:『スゥ』
種 族:『神獣』
スキル
『不老不死』『天佑神助』『気炎万丈』
『料理人』『魔術師』
『無詠』『探索』『解読』
「レベルの数値が強さの指標になります。前は200以上あったのですが、復活でだいぶ弱体化しました」
なるほど。今のスゥも結構強い気がするので、レベル50代は強いほうなのだろう。
スキルも沢山ある。『天佑神助』って、なんかかっこいい。
「スキルは文字数が多いものほど強力ですね。『不老不死』は文字通りの意味を得られるスキルです。『天佑神助』は運が良くなるようなスキルで、確率に左右される状況下で自分に良い方へ傾くと言った効果があります」
凄い、そんな事までできるのか。
四文字でそれほど強力なのだから、三文字の『料理人』や『魔術師』も相当強力なスキルなのだろう。
確かにスゥは色々な魔術が使える上に料理も上手い、納得だ。
「俺もやってみるわ」
紙に魔力を流していく。するとステータスが浮かび上がってきた。
レベル:863
名 前:『神谷優二』
種 族:『人間』
スキル
『不滅ノ王』
『天佑神助』『悪鬼羅刹』『気炎万丈』
『熊虎之士』『英雄豪傑』『百鬼夜行』
『解読者』『契約者』『魔術師』
『無詠唱』『模倣者』『暗殺者』
『探索者』『詐欺師』『演算師』
「…あ、『天佑神助』持ってるわ」
「……」
スゥは絶句していた。