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19話「学園都市ジーニアス」





「いいぞコゥ、素晴らしい速度だ」

「はっ、有り難きお言葉。『土工(アースワーク)』」


 コゥの走行技術が神の域に達しようとしている。

 まぁ、神獣なのだが。


 ほとんど揺れを感じさせずにスポーツカー並みの速度で馬車を引くことができ、道に避けられない凸凹を発見すると『土工(アースワーク)』という魔術で舗装してくれるのだ。

 あまりにも速すぎて、追い抜いた通行人達もキョトンとしている。


「さすがはユージの眷属ね。コゥ殿もやっぱり規格外だったんだ」

「ほんとに凄すぎるよ。まだ午前中なのに、もう着きそうだもん」


 ミーナとサチが何やら話し合っている。

 ちなみに、ミーナは俺の呼び方を呼び捨てに変えた。

 スゥとコゥは今まで通りだ。神獣だとは教えていないが、敬意を払うべき相手だと本能で感じるのだろう。


 名前が呼び捨てに変わった際、「長い付き合いになりますもんね」と破壊力抜群のプリティーさで言ってきたのは記憶に新しい。思い出すたび、顔が赤くなる。


「ユージさん、何を考えているんですか?」

「い、いや。なんでもないぞ」


 サチが可愛いジト目を向けてきた。

 右を見れば金髪ロングの美少女お姫様。左を見れば、黒髪ショートのスタイル抜群美女。

 冷静に自分の状況を振り返ってみると。

 不死身で最強で、美女2人に囲まれながら旅をしている。

 なんて幸せな環境なんだ、異世界最高!



 そんな風に幸せを噛み締めていると、無事に到着したらしい。

 学園都市『ジーニアス』だ。


「リザリアほどじゃないが、結構でかいな」

「王都の近くですからね」

「学園都市と同じ名前の『ジーニアス』という学園が有名で、学生がたくさん住んでるわ。それに伴って、冒険者も多い地域なの」

「ん?なんで冒険者が多いんだ?」

「ジーニアス学園は魔術師や剣術士の育成も行なっていて、そう言った戦闘系の学部の生徒はバイトとして冒険者になる人が多いらしいわ」


 さすがはお姫様、都市の事情には詳しいな。


「そういえば俺たちって、10級のままだよな」


 リアビ村で助けたアクト達は、確か7級だったはずだ。

 アクトと語り合った時、恥ずかしくて10級だと言えなかった記憶がある。


「それについてなんだけど、しばらくジーニアスに滞在するのはどう?その間に冒険者としてクラス上げをするのもいいと思うし」


 ミーナが提案してきた。

 確かに、冒険者のクエストにも興味がある。だがーーーー


「王都に早く戻らなくていいのか?」


 早く戻って継承争いに復帰しなくて大丈夫なのだろうか?


「もちろん早く戻りたいけど、今は早すぎるのよ」


 ん?どういう事だ?


「私達がロード大森林まで行くのには半月掛かりました。それも、馬を何頭も変えて魔術で強化して全力で飛ばして、です。なので、ユージさんが送ってくれると言ってくれた時、ひと月はかかると私達は思っていたんです」

「それが蓋を開けて見れば僅か数日なんて、思いもよらなかったもの」


 なるほど、今帰ったら明らかに不審だ。

 暗殺どころか、そもそもロード大森林まで行ったのか疑われてしまう。


「それなら、どれくらい滞在すればいいんだ?2週間とか?」

「そうね、それくらいならそこまで疑われないと思うわ」


 そしたら2週間は自由時間だな。


 それにしても、ミーナの口調が普通に戻ったのはまだ慣れないが、自然が一番いい。

 今までの口調も中々良かったが、このほうがやはり可愛いな。


「ユージさん、何を考えているんですか?」


 サチのジト目も相変わらず可愛い。

 異世界最高!

 













「国王陛下。残念ながら、ミーナ姫の安否は絶望的です」

「…そうか」


 フレイア王国の現国王である『ゴルド・フィーレ・フレイア』は、彼に仕える勇者、『伊月重(いづき・しげる)』からの報告を聞き、落胆していた。


 娘であるミーナは、半月ほど前にアーミットへと出発した。

 出発の前から要らぬ横槍が入り、ロード大森林を通る危険なルートでの進行となった事は知っていた。だからこそ不安はあったのだが、まさか現実になるとは思わなかったのだ。

 

 ミーナは国民から熱い支持を受けていた。

 そして、このタイミングでの悲報。


 子供達の誰かによる仕業だろう。


 国王引退の時期を察した子供達が、継承権争いを激化させていた事をゴルドは知っていた。

 継承権争いは自らも通ってきた道だからこそ、どういった事態になるのかも予想はしていた。


「それでも、子供達が殺し合うのは、辛いな」

「陛下…」


 ゴルドの哀しげな横顔に、シゲルは返す言葉が見つからなかった。


「ミーナよ、どうか、無事でいてくれ…」


 その呟きは、誰にも届く事はなかった。


 










「『雷弾(サンダーショット)』!」

「ナイスですミーナ。たぁ!」


 ミーナが『雷弾(サンダーショット)』で麻痺させたところに、サチが斬りかかり止めを刺した。


「お疲れさん。下級魔獣『怒豪猿(アングリーゴリラ)』3匹以上の討伐、完了だな!」

「あ、うん」

「そう、ですね」


 2人を労うと、歯切れの悪い返事か返ってきた。

 俺の後ろに転がっている『怒豪猿(アングリーゴリラ)』の死体を見ながら。

 

「ユージさん、何匹仕留めたんですか?」

「20以上かな。最後は数えてない」


 ミーナとサチが2匹仕留める間に、俺は群の残りを全滅させていたのだ。


「これはまた、ギルドが大騒ぎになるわね…」


 ミーナがギルドの心配をしている。


 ここ数日、冒険者として色々なクエストをこなしていた。

 特に力を入れていたのが討伐系のクエストだ。

 強くなりたいと願うサチとミーナの訓練にもなるし、ランクも上がる。

 さらに、余分に狩ると素材を買い取ってもらえる上に追加報酬までもらえるのだ。


 そのお陰で高難易度の討伐クエストを受注しまくり、余分に狩りまくっていた。そのため、ジーニアスのギルド会館が魔獣の死体だらけになっている。

 解体速度よりも俺達の討伐速度のほうが速いので、死体が溜まっていくのだそうだ。


「そろそろ、クエストは休んでいいんじゃないですか?もう3級になりましたし、冒険者ギルドは他のギルドにお金を借りて報酬を支払ってくれてるみたいですし」


 なっ、そんな事になっていたのか。

 確かにお金が尽きそうとか受付嬢が嘆いていた気がするが、すでに尽きていたとは思わなかった。

 

「それは、流石にやりすぎたな。残りの滞在時間は大人しくしてるか」

「はい」

「そうね」


 結局、『怒豪猿(アングリーゴリラ)』の討伐数は43匹だった。

 この日、冒険者ギルドに続いて商業ギルドの金庫が空になったらしい。

 


 ミーナの口調が今回から変わります。

 

 少し違和感があるかもですが、これからは普通の女の子口調でいく予定ですので、よろしくお願いします。

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