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レジェンド  作者: 神無月 紅
再びガンダルシアへ。

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4036/4123

4036話

 ナルシーナ達との協力関係を築いたレイは、早速その恩恵を受けることになった。


「はい、これ。ちょっと汚いけど、十八階で現在分かっているところの地図よ」


 汚いのは、これが正式な地図ではなく、書くのに少し失敗したとか、予想……もしくは憶測や、気が付いたことをメモ代わりに書いていた為だろう。

 とはいえ、レイとしてはそのようなものであっても地図は地図だ。

 感謝こそすれ、不満を抱くことはない。


「いいのか?」

「いいのよ。レイに恩を売れる機会なんてまずないんだから、それを有効に使わないとね」


 そう言い、魅力的な笑みを浮かべる。

 恩を売るレイを前に、堂々とそのことを言うのはどうかと思わないでもなかったが、ナルシーナにはそう言いながらもそれをレイに気にさせないような、不思議な雰囲気があった。


「そうか。なら、これは貰っておくよ。……この地図を見た限り、ナルシーナが言うようにまだ多くの部分が明らかにされていないような感じだな」

「そうなのよね。だから、レイもその辺を気にしてみてちょうだい」


 ナルシーナに促され、レイは分かったと頷く。


「そうだな。上手く描けるかどうかは分からないが、やれるだけやってみる」

「お願いね。じゃあ、私達は地上に戻るから」


 そう言い、その場を去ろうとするナルシーナ達。

 レイはふと気になって、そんなナルシーナの背に声を掛ける。


「ナルシーナ、ちょっといいか?」

「まだ何か用事があった?」


 足を止めて聞いてくるナルシーナに、レイは少し迷うも、やがて口を開く。


「ナルシーナ達は十七階はどうしてる?」

「どうしてるって……どういう意味?」

「いや、普通に海の中を歩いて移動してるのかと思ってな」

「それ以外に何かあるの?」

「小さい船とか」

「……無茶を言わないでよ。アイテムボックスは持ってるけど、レイが持ってる本物と違って入れられる量が決まってるのよ。だから船を、それもこの人数が乗れるような船は、とてもではないけど持ち運びは出来ないのよ」


 ナルシーナの言葉に、レイはそうかと納得する。

 納得すると同時に、腑に落ちる。

 ナルシーナのパーティには、ポーターがいない。

 これが上の階層であるのなら、ポーターがいなくても問題はないだろう。

 だが、この階層でとなると、話が違ってくる。

 十八階という深い階層だけに、そこで倒したモンスターの素材は可能な限り持ち帰りたいと思うのは、おかしな話ではない。

 なのにナルシーナの仲間にポーターがいないのはレイにとっても疑問だったのだが、アイテムボックス……それもレイが持っているような本物のアイテムボックスではなく、簡易型であっても、それを持っているとなると、話は違ってくる。

 ポーターの役目は、基本的に荷物を持つ事だ。

 実際にはそれだけではなく、罠の発見や解除が出来たり、弓を使って援護攻撃を行ったりといった具合に、色々な事も出来るのだが。

 とはいえ、それでもやはりポーターにとって一番重要なのは、可能な限り荷物を持ち運び、しかもその荷物を傷つけないようにして運ぶことなのだ。

 だが、当然ながらポーターは荷物を持って動きが鈍い分、敵に狙われやすい。

 そんなポーターがいないのは、戦力的には楽だったが、素材の持ち帰りで不利になる。

 それを解決したのが、ナルシーナが口にしたアイテムボックスだった。


「アイテムボックスか。……ちなみにだが、宝箱か?」

「いえ、違うわ、何年か前に貴族からちょっと難しい依頼を受けたんだけど、その時の報酬だったのよ」

「ちょっと? あれをちょっととか……ナルシーナは相変わらずだな」


 ナルシーナの言葉にそう返したのは、レイ……ではなく、仲間の一人。

 その表情には心の底から嫌そうな表情が浮かんでおり、他のパーティメンバーも同様だった。

 それを見れば、ナルシーナ達の受けた依頼がかなり大変だったのは間違いない。

 本人がそれを認めるかどうかは、また別として。


「こほん。とにかく、貴族からの報酬で貰ったのよ。……アイテムボックスよ、アイテムボックス。簡易型だけど、これがあるお陰でダンジョンの攻略が随分と楽になったのは間違いないでしょ?」

「そうだな。キオスが抜けて、新しいポーターをどうしようかと話していた時だったし」


 どうやら、そのキオスというのが本来ならナルシーナ達のパーティのポーターだったものの、何らかの理由で抜けたらしい。

 少し……少しだけパーティを抜けた理由が気になったレイだったが、それについては聞かないことにする。

 パーティを抜けた理由が、何らかの幸せな理由……例えば結婚したとか、そういう理由でパーティを抜けたのなら、レイも特に気にしなくてもいい。

 だが、その理由が好ましいものではない場合……それこそどこか他のパーティに引き抜かれたり、パーティ内部の人間関係のドロドロであったりといったものが理由でいなくなったのなら、とてもではないがレイもそれを詳しく聞きたいとは思わなかった。

 であれば、その件についてはスルーしておくのがいいのだろう。


「貴族からの報酬でアイテムボックスが貰えたのは幸運だったな」


 そう言うレイの言葉には、強い実感がある。

 実際、レイは同じように貴族のダスカーから報酬としてマジックテントであったり、ドワイトナイフであったりを貰っている。

 他にもベスティア帝国で皇族から報酬としてマジックアイテムを貰ったこともあった。

 だからこそ、レイもナルシーナの言葉にそのように返事が出来たのだろう。


「で、アイテムボックスの件はいいとして……それで、十七階は結局どうしてるんだ? 船とかそういうのもないんだろう?」

「普通に海の中を歩いてるわよ。レイは……まぁ、セトがいるからそういう必要もないんでしょうけど。羨ましいわね」


 レイとセトを見て、しみじみと言うナルシーナ。

 女として、そして冒険者として、遠浅の海の中を歩いて移動するというのは思うところがあるのだろう。

 実際、もしレイもナルシーナと同じ立場であれば、それは同様だ。

 だからこそ、レイはセトの背に乗って空を飛び、移動して十八階に続く階段を見つけたのだから。


「危なくないのか? 俺がセトに乗って空を飛んでる時は空を飛ぶモンスターとかはいなかったけど……そうなると、当然ながら十七階のモンスターというのは海中にいるんだろう?」

「そうね。でも、ここはダンジョンなんだから、モンスターと遭遇するのはそうおかしなことじゃないわ。まぁ、戦いにくいというのがあるのは間違いないけど」


 海中を歩きながらモンスターに襲撃されるというのは、対処するのがかなり難しい。

 まず海中を移動している敵の姿をしっかりと確認出来るかどうかという問題がある。

 海の中にいるだけに、外からしっかりと海中にいるモンスターの姿を確認するのはそう簡単なことではない。

 それこそ海の底にある砂に紛れているような相手であれば、その姿を見つけるのは余計に困難だろう。

 また、もし敵の姿を見つけたとしても、その敵を相手にすぐに対処出来る訳でもない。

 敵は海中にいる以上、地上での戦闘と同じようには出来ない。

 海中であれば、海中なりの戦闘をする必要がある。


(アニタに提案した、十七階の海水を全て蒸発させるというのをやれば、海水がなくなるから海中での戦闘とか、そういうのを考えなくてもいいけど……まぁ、それは今更の話か。というか、海水を蒸発させたらその熱で海中にいるモンスターも纏めて死ぬか)


 既に却下されてしまったことだったが、微妙に未練がましく考えるレイ。

 もっとも、レイはすぐにその件については気にせず、ナルシーナとの話を続ける。


「海中にいるモンスターは興味あるけど、海に入ってまで戦いたいとは思わないな」

「……これから、その海の中に入る私達に向かってそういうのを言うのはどうなのかしら?」

「あー……うん、悪い。ちょっと言いすぎた。けど、実際十七階は空を飛んで移動したから、殆ど詳しくないのも事実なんだよな」

「気になるなら、一緒に来る?」


 そう聞かれる。

 ナルシーナにしてみれば、断られて元々、レイが誘いに乗ったらラッキーといった認識でしかない。

 レイがいれば、十七階を通るのがかなり楽になるのは間違いないのだから。

 ただし、レイは当然といった様子でその誘いを断る。


「まだ十八階に来たばかりだしな。この階層の探索をしたい」

「そう。レイならそう言うわよね」


 レイが断っても、ナルシーナは特に不満そうな様子を見せない。

 ナルシーナにしてみれば、レイが自分の誘いを受けるとは思っていなかったのだ。

 実際、レイは十八階に来たばかりで、まだこの階層の探索をしていない。

 この階層まで来ることが出来る冒険者として考えれば、ここまで来て全く探索をせずに帰るというのは、まずないだろうと思えた。


「悪いな」

「いいわよ。私がレイの立場でも恐らくそう言っていたもの。……ここに到着するまでの間に怪我をしたりしていれば分からなかったけど。見た感じ、レイは無傷でしょう?」

「そうだな、繰り返すようだけど、十七階はセトに乗って空を移動したから、モンスターと遭遇するようなことはなかったし」

「……それでも、十五階の転移水晶を使ったのなら、十五階と十六階では普通にモンスターと遭遇するんじゃない?」

「俺とセトだからとしか言いようがないな」


 実際、今日もレイとセトは移動中に十六階で巨大キノコと牙猿と遭遇したが、どちらも一度は遭遇した相手だ。

 これで、セトとデスサイズのどちらかだけしか魔石を使っていないのなら、まだレイにとっても利益はあったのだが。


「羨ましいわね。……さて、じゃあいつまでもこうして話していても仕方がないし、私達はもう行くわ。次に会った時、情報交換を頼むわね」

「ああ。地図も分かる限りは描いておくよ。……あまり自信はないけど」


 レイは地図を見る機会はそれなりにあるが、地図を描く機会となると殆ど機会はない。

 一応冒険者としてある程度の地図は描けるだろうと思ってはいるが、実際に試してみなければ、その辺は何とも言えなかった。


「期待してるわね」


 そう言い、ナルシーナは仲間達と共に階段を上がっていく。

 そんなナルシーナ達を見送ると、レイはセトに視線を向ける。


「さて、それで……ナルシーナ達と別れたばかりでこう言うのもなんだけど、これからどうする?」


 そうレイが聞いたのは、先程セトが十七階で海の階層を探索し、レイは十八階を探索してはどうかと、そう話したのを思い出した為だ。


「グルゥ……」


 レイの言葉にセトは迷う。

 先程までは十七階の海の階層に興味津々だったのだが、今は違う。

 こうして十八階に来てみれば、かなり広い神殿となっており、セトの好奇心を刺激する。

 だからこそセトは迷い……


「グルゥ!」


 たっぷりと一分程迷った後で、レイと一緒にこの階層を探索すると喉を鳴らす。

 十八階に強い興味を抱いたというのもあるが、セトにしてみればレイと一緒に行動出来るというのが、この場合は一番大きな理由だったのだろう。


「そうか。じゃあ、一緒に行こう」


 セトの態度に笑みを浮かべ、レイはセトと共に神殿の中を歩き出す。


「まずはこの神殿の様子をある程度確認したいから、地図に載ってる場所を移動するか。それでこの階層の大体の感じを理解出来たら、地図にまだ描かれていない場所に行くってことでいいか?」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは分かったと嬉しそうに喉を鳴らす。

 こうしてレイとセトは神殿の中を歩き出そうとし……


「……あ、その前にこの階層には罠があるって話だったよな。なら、罠を解除……あー…難しいか?」


 レイはミスティリングからデスサイズを取り出し、罠を破壊する魔法を使おうかと思ったものの、その動きを止める。

 十八階以下の階層を探索している冒険者パーティは五つ。

 そのうちの一つであるナルシーナ率いるオルカイの翼は十七階に行ったが、残り四つがある。

 ただし、二十階を探索してる久遠の牙は二十階にある転移水晶を使えばいいので、わざわざ十八階にやって来る可能性は高くない。

 そうなると残り三つのパーティなのだが、そのパーティが現在どこにいるのか、生憎とレイには分からなかった。

 そうなると、もしかしたら……本当にもしかしたらこの十八階にいるかもしれず、そうなるとレイが罠を破壊する魔法を使った場合、そのパーティに対する攻撃と見なされる危険もあった。


(うん、やっぱり魔法は止めて……今日地上に戻ったら、アニタに使ってもいいかどうか、聞いてからにしよう)


 そう考え、取りあえず今は魔法を使うのを諦めるのだった。

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