第16章 天国の様な地獄
「おや? なぜか目が開いたぞ。なぜ? ここは天国か? 生きているのか? 今いる場所はこれまでと同じ自宅の景色。壊れていない。夢見てるのか? 空気もうまい。窓から入る太陽の光も眩しい。私にはこれまでと同じ肉体があり、歩ける。これまで通りだ。天国とは違う。だけども確かにミサイルが撃ち込まれて高熱で焼かれて確かに全てが滅びた筈だった。痛すぎて覚えているぞ。スキームでも私は勝てず、確かに丸焼けになった筈だが。」
「これはまだ夢なのか? つねったけど痛い。夢じゃないし。それに確かに今起きているし。でも確かに俺は死んだから。」
「私は最後のカレックのオナラで恨みを残して死んだから実は死ねていなくて、お化けなのかも知れない。私がお化けかどうか、彰子に聞いてみよっと。」
自分の会社まで行ってみた。お化けだけど足があった。でも私がお化けなら皆気づかない筈だからね。会社は朝8時からで、既に9時近かった。昨日の夜10時10分過ぎに世界は終わったから、既に半日近く時は流れた事になる。会社に着くとそしたら皆んなが私に気付いた。
「おおーっ、やっと来た。ケン、おはよう。」
麻未、彰子、志保が挨拶して来た。ケンが声をかけた。
「うらめしやー。あれ? ひょっとしてみんな俺が見えてるの? お前達は無事だったのか? いや、あれだけの被害だ。お前達も俺と同じお化けか?」
すると志保が答えた。
「あのね、確かにあんたのツラはお化けだけど、私は美女よ。私以外はみんなでお化け屋敷かも。あははは。」
とりあえず無視。
彰子が心配して聞いてきた。
「どうしたのケン、頭でも打った?」
更にタケ、翔、リュウ、が出て来た。翔が答えた。
「ケン。遅かったね、寝坊した? お化けの夢でも見たの?」
元々皆とは友達みたいな関係なので、堅苦しい事はここでは無かった。 続いてリュウ、タケが挨拶に来た。
「おはよう、ケン。昨日は遅くまで頑張ってたんですか? お疲れ様です。」
「今コーヒー入れますね、閉め切り真近。今日も頑張ろう!」
ケンの理解が追い付かずに聞いた。どうやら、地球消滅した事実事態が無くなっていた。
「ねえ、タケ、麻未、翔、今日学校でしょ? 大丈夫なの? たしかシフトは学校だった筈だけど。」
そしたら志保が答えた。
「はいいっ? いやだ、ケンの頭がとうとうイカレたわ。パーよ。冗談はそのツラだけにしてほしいのに。とうとうツラもアタマも、私は可愛いいのに可愛そうだわ。8重苦よ。他にもね、目が近いし、耳が遠いし、寝言は言うし、よだれは垂らすし、早いし直ぐ疲れるし。アレも、これも…。」
何やら1人でブツブツ唱えていた。ケンは目を閉じて深く考え込んでしまい、すると志保が聞いた。
「ケン、まだ目が覚めていないの? まだ夢の中か? 分かったわ、起こしてあげる。」
耳元にノートを丸めて、どでかい声で叫んでからぶっ叩いた。
「おい、ボケッ、起きろこらーっ。アホーッ! ポンコツ。 バシッバシッ。ベロ出せ、ベロキスするぞー。」
そしたら麻未が心配した。
「ケン大丈夫なの? 私達学生だった時なんてないじゃん。」
「まさか、本当にボケちゃったかしらっ? まだ夢の中だわ、 志保、ほっぺをつねって。おじいちゃん、締め切り真近よっ! 皆忙しいんだから、お願いよ。」
「麻未、ほっぺはね、優しくキスする場所よ、あなたも生娘じゃないのよ、いい加減早く覚えなさい。おらっ、さあケン、カモーン。」
志保は口を尖がらがして、人差し指で来る様に促した。ケンはそんな志保がチンパンジーの様でかわいかったが、やばい、本当に自分がどうなっているのかわからず、カレックにテレパシーで聞いた。
しかし、カレックに聞いても応答がない。しかも何だ、(株)シリウスは会員制の病気怪我治療、相談専門だったのに、なぜか、アニメーション制作会社に変わっていた。
私はこの世界では全くスキームは使えなくなっていた。ここでの私は作家で、この夏にアニメーション「偉大なカレック様」を上映公開するらしい。そこには、カレックが登場する。
私は思った。
カレックはそういえば、きちんと聞いてはいなかったが、前に話した事がある。
「もし、地球が緊急事態の強制終了時はあなたを次元移動させて、今ある現実とは異なる世界に送るから。そうなったら、あなたとの交信は無くなる。」
「人間本来の性格の質が大事で、これまでの行いや、その人の持つ性格の良し悪し、攻撃性がどれ位かの審査がある。」
「例えば、醜い殺戮を繰り返す人はそいつに向いた殺戮メインの地球に行くし、逆に性格良く、謙虚で欲の無い人はのどかな天国の様な地球に行ける。前暮らしていた地球と大して変わらない地球もあるよ。それぞれ違う次元に追いやられる。その人次第で行く地球の乱れ方が変わる。」
私は爆発の時次元移動して、前に暮らしていた地球より、少し違う地球にいるんだと思った。ここで1つ疑問が残った。
「あの爆発の時、私やカレックでも止められない程の宇宙でも最強のスキーム術を凌ぐあのミサイルは宇宙の一体どこから撃たれたんだ? 地球レベルじゃとても作れないとんでもない破壊力だった。プルナ星以上の星から地球は狙われたのだろうか?」
因みにここの世界は昨日までと何ら変わらない、住まいも同じだし、仲間も同じだが、少しずつ何かが違う。
後で気づいたが、ここの地球には太陽系という惑星が存在しなかった。太陽も黄色と赤色の大小2つ存在し、夜の様に真っ暗になる様な事は無く、気温もちょうど良かった。
お隣の月には空気、重力があり、サイズは知っている通りの月で小さかったが、生物が住んでいるらしい。そこに大熊、恐竜、吸血鬼、鬼、妖怪等の怪物の住む殺人星になっているそうで、怖くて誰も近づかなかった。
原爆投下の歴史も無く、人間の前歴史が恐竜だった事も無い。この地球は弱肉強食が無い。社員食堂に私の大好きな焼肉定食も無くなっっていた。なぜか越前蕎麦の小盛り、大盛り、特盛、メガ、キングまであった。
人を騙し私腹を肥やす悪い人間もいなかった。「正義は勝つ」の世の中だった。一般会社の仕事も、社長以外は全て同じ階級。専務も部長、課長とも全てに上下無し。ヒラは無く、全ての人が職人だった。
争って地位を奪い取る様な事が無いし、忖度、賄賂も無く、締め切りが間に合わないと、先送りが可能だった。なんか緩い世界だった。
人間の前に住んでいた歴史上の動物は、犬、猫とまるでプルナ星の様に同じだった。しかも当時犬、猫を世話していたのは、プルナ人そのものだ。つまりここは昔ながら超高度な文明があり、猛獣、害虫、ウイルス、凶悪犯がいない、更に安全な星に来られた訳だ。
グレードは天国並みだ。刀で切りあう歴史も無かった。ここは皆が助け合う、正に私がこれまで望んでた世界そのものだった。
志保も借金等は消えて、結婚詐欺の被害も無かった。 彰子も未婚で子供はいないし、これから結婚するんだって。ケンは思った。
「私は昨日まで彰子とお付き合いしていた筈だが、ここにその歴史が無い。なぜだ?」
私は彰子が大好きだったが、なぜかこの世界では私は志保と来週結婚するみたいだ。何でも、志保は昔からずっとケンを好きで好きでたまらなかったそうでケンが根負けしたみたい。
外では正義の味方の政治家達が演説していた。国民の暮らしを真っ先に考える素敵な方々だった。正に正義が勝つ社会がここにある。野党が増税なんか言い出したら、身を切って国民の為に戦ってくれた。
どんなに困った状況だったとしても、スキームなんか無くても要は人間の気持ち次第。
人間が人や動物を助ける力があれば、いくらでも良い世界が作れる。人間の愚かさや醜さがあれば、いくらでも悪い世界が作れる。要は人間次第なのだと。「宇宙の生きる芸術」と称されていた人間の体内の美しさに反して、その性格が私欲の塊、争いばかりで醜かったので、「前の世界に罰を当たえたのでは?」と思えた。
続いて国王からのメッセージがみんなに届いた。
「心が綺麗で人への愛情が深い人は、綺麗で素敵な人生を送りましょう。劣化した人間にはなってはいけません。失敗は仕方ないです。成功する為に次頑張って乗り越えましょう。落ち込んじゃダメだよ。」
するとこの会社にこの国の王がなぜか労いにやって来た。何と、国王の名前はルイ24世。 ここはフランス? ここの国王が彰子の結婚相手なんだと。マジか? 何でそんな偉大な方と? 泣いてしまいそうだ。俺なんかじゃ勝てるわけがない。どこで知り合ったんだ? ここは変えないでくれよ。一番キツイ。天国の様な地獄だ。その時ドアの向こうからノック音が聞こえた。王がやって来た。
「コンコン。」
ドアを開けて入って来た。
「おう、コラ、ボケ。」
そして朝9時になった。いきなりお経? いや国歌斉唱。
「うーカレー食ったら~あ~」




