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第10話:祭りの予感

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数日後。村は「豊作祈願祭」の準備で沸き立ち、教室の空気もどこか浮ついていた。



「祭りの夜はさ、学校の裏とかにみんな集まるんだぜ。誰と何してもいい、特別な夜なんだ」



田中が誇らしげに語る。男子たちは、どの子に「お礼」をしてもらうかの作戦会議に余念がない。ワカハは巫女舞の練習で忙しく、佐藤とじっくり話す時間は減っていたが、クラスの男子たちは相変わらず彼女に群がり、彼女もまたそれを拒まずにいた。



(結局、僕はあの日から一歩も進めてない。ワカハさんにとって、僕は数多くいるクラスメイトの一人でしかないのか? 祭りの夜、彼女はまた、誰かへの『お礼』として消えてしまうのか?)



焦燥感と嫉妬に狂いそうになる佐藤に、練習帰りのワカハがふらりと近づいてきた。彼女の首筋には汗が光り、上気した肌が月明かりに照らされている。



「……佐藤くん。祭りの夜、人混み、嫌い?」



「……え? ああ、あんまり得意じゃないかもな」



「……そっか。……じゃあ、飽きたら、出ちゃおっか。……二人で。……私、君のあの、必死な顔をもっと近くで見たいから」



ワカハは悪戯っぽく微笑み、佐藤の耳たぶを軽く噛んだ。



祭笛まつりぶえ 賑わう里を 背に受けて 二人を隠す 夜のジンガよ」



その軽やかで、どこか自分を「選んでくれた」かのような誘いに、佐藤の胸は、昨日までの嫉妬とは違う、狂おしいほどの期待で満たされるのだった。


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