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忘却メズマリズム~清楚なお嬢様に催眠をかけたのに、ヤンキー人格が出てきて尻に敷かれたんだが~  作者: 春代 羽羽


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おわらない

 ――――――――

「どうして私に話しかけてくるのですか。私とあなたは面識がなかったはずです。なのに、どうしてそんなに馴れ馴れしくするんですか」


 その問いに、俺は躊躇った。

 ――真実を話すことを。それを言われた側の気持ちを考えれば当然だ。よく分からないやつから、「君は昔、俺に告白したんだ」と言われたならどうだろう。

 ただ混乱するだけじゃないか?

 知らない相手に親しげな目線を向けられるというのは、とても気味の悪いことではないか?

 そんなものを、彼女に背負わせるというのだろうか。

 もう時間の問題で、泳げるようになるだろう。

 二重人格者である自分へのレッテルもなければ、俺のようなやつと居る意味もない。


 そんな奴に、無くなった過去を押し付けるのは、果たして良いことだろうか。

 押し付けることは、俺のエゴではないだろうか。

 俺は、クソダサいヒーローのようになりたかったかもしれない。でも、ヒーローはエゴを押し付けるようではいけない。


 ――――


「俺、は——」


 好きだから。


 そう言おうとした。今の彼女に告白をしたところで彼女に押し付けるだけに過ぎない。それでも、これだけは言っておこう。


 そう思った。


 ――そう、決意した。はずなのに。


 これでいいと思ったはずなのに。



 刹那、顔を叩かれた。



 誰もいないのに。

 氷織は手が届かない距離なのに。

 それでもはっきりと、怒りを持った手が、俺をぶったように思った。


「ええと……生天目、さん?」


 あの衝撃が、一気に俺に頭をクリアにした。


 ――エゴ。それは俺が勝手に伝えることが押し付けになると思ったから。

 でも、それこそ俺のエゴではなかろうか?


 伝えないことで、俺は許されようとしているのではないか?

 目の前にいる、彼女ではない彼女に、怒られるように感じる。


「――好き、だ(・)っ(・)た(・)からだ」


「だった?」


 彼女は訝しげに眉をひそめている。ああ、いつまでも俺の勝手だ。

 でも、そうだよな。


 その場の彼女を優先して、話さないなんて選択肢でその場しのぎのカッコつけをするなんて。


 言わないといけない。

 言ったところで、軽蔑をされるだろう。


 話そう。

 彼女に受け入れられないとしても。


 俺は少しづつ話し始めた。


「……俺は、少し前、ひお……八咫野さんのことを深く傷つけたんだよ。八咫野さんの決意を否定して、挙句の果てに、八咫野さんの大事な人のことさえ全否定して。自分の身の可愛さに嘘をついたせいで失ったことを、やり直したいんだ」

「……」


 言ってから、猛烈な痛みと恥ずかしさ。でも、償いのために、必要なことだ。

 これを言わないときっと、彼女にその記憶がないことをいいことにまたエゴに付き合わせることになる。

 だから、言わないといけない。

 これが贖罪の、始まりなのだから。


「……それを言って、どうするつもりなんですか」

「え」

「あなたが我が身可愛さで犯した過去があるのなら、今あなたが話しているのだって、我が身可愛さからの自己満で、許しを乞うているだけではありませんか。……ダサいですよ、それ」


 キッと睨まれ、今度は嫌悪感を露骨に示される。

 ……軽蔑は予想していたのに、ダメージは甚大だ。


 ダサい……か。


「そうかもしれないな」

「どういうことですか。告白紛いのことをしておいて、矛盾しています。こんなこと、逆効果でしょう。つくのなら、もっとマシな嘘にしてください」

 

 ああなるほど。……驚く程に正論だ。……正論だろうとも。それが普通にかっこいいやつならなー。


「知らないままでもいいよ。でも、俺は本気だから」


 まるでキザったい言い草になってしまっている。言われた側もいい気はしないだろう。

 でも、これが俺だ。


「という訳で、待ってるぜ。じゃ」

「じゃ、って、あなたは……」


 彼女の返答を待たずに教室を後にする。そして。


「……こ、これからどーしよーなー」


 勢いで言ったものの。ビンタに従ったものの。状況は全く芳しくない。普通に打ち明けず、彼女とまた一からやり直した方が良かったのではないだろうか。


 でも、あの日々が無いともう一度俺を選ぶ未来なんてあるのだろうか。答えは否。

 ラブコメで言うなら、ヒロインは俺に対する嫉妬を一度もしないまま話が進む、そんな無味無臭な主人公になるのだろう。

 誰がそんな主人公を見たがるだろうか。

 でもそれでいい。

 それが俺だ。そうやってやってきたのだから。


 とりあえずは。


「嫌われた分だけでも取り返さないと……」


 **


 そして翌日。


「あ、おはよう、八咫野さ……」

「……」


 無視された。


 ……これは?

 終わりかな?


 ――――

 目の端に、眉間を抑えて悩む生天目さんの姿を捉えつつも、知らないフリをしました。


 いままで嫌いな人を作らずに生きてきました。人間関係を上手くやって、部活も、泳ぐことは苦手だけど努力の量でそれなりに成果をあげて、それで人生を上手くやってきたはずです。


 誰かを嫌いになる前に距離を置いて、無害に。


 なのに目の前の彼には一瞬で嫌悪感が溢れました。

 ……嫌悪感、なのでしょうか。

 少なくとも、みぞおちに熱が溜まる感情の感じが嫌でした。


 と、言うふうに自分に言い聞かせないといけない気がしました。

 もしかしたら、嫌でもなかったのかもしれません。

 彼に抱いた感情は不の感情であるはず。怒りか、嫌悪感か。

 なのに……どうしてもそう意識を保たないと、彼を許してしまいそうになってしまう。


 彼の言葉はいつもおかしい。どうして彼はあそこで、自分の非を打ち明けたのだろう。あんなにも無責任に。

 彼が寄ってくることに、最初は戸惑いこそすれ、なぜか不快感を覚えなかった。

 そのまま行けば、もしかしたらよい関係のまま過ごしていたのでは?

 彼のいうことが本当ならば。過去のことを覚えておらず、それを私も知らないままで支障のない日々を送り続けることだってできたのに。


 彼は……。


 と、気づいたら思考に彼が過剰量含まれていると気づいて、一度息を吐く。

 

「あんな自分勝手な人間、知るものですか」


 私はそう念じるようにつぶやきました。


 **


 その翌日。教室へ駆けてくる音がありました。


「氷織せ~~んぱい! お昼食べましょう!」

「ああ、榎本さん。いいですよ」


 すると、私が答えると、後方にいた二人が声を上げました。


「あ、乙音ちゃんじゃーん。ご飯いっしょたべよー」


 と机を寄せてきて。榎本さんは「み、緑川先輩……」と、タジタジになっています。かなり押してくる人かと思えば、意外にこういう押しに弱いのが彼女らしいですね。……単に晴美(はるみ)の圧が強いだけでしょうか。私も同じような経緯で今に至るまで一緒にいるので、榎本さんには諦めてもらいましょう。


 そんな風に、昼食の時間はいつも通り過ぎていきます。

 しかし、ふと頭に疑問が浮かびました。


 どうして、私たちは榎本さんと接しているのでしょう。きっかけは何だったのでしょうか。

 ……いえ、友人関係というのはそういうものかもしれませんね。始まりのことなど覚えていないほどに日々を共にすることこそ、友人という関係をまっとうしたことになるのかもしれませんし。


「そういえば乙音ちゃんは文理選択はどうするか決めたの~?」

「あ、自分は理系行こうかなって。というか、情報系とかありかもって最近思い始めてきて」

「へー! 情報系かー。ちなみに私は何の学科を志望してそうだとおもう?」

「え、えーと……看護系、とか?」

「あ、惜しい! 健康医療系でーす。まあ今のところD判しかとってないんだけどね……」


 晴美はそう言いながらも弁当を食べ進める手は止まらず、早くも半分以上は食べていました。

 ふと、晴美がつぶやきました。

「そういえば氷織は将来の夢とか決めたの? 別に無理にとは言わないけど」

「私は、——……ええと……」


 ずっと昔から決めていたことだったのに。今の自分が本当にそれでいいのかと、問いかけてきます。

 それに関しては夏に誓いを立てたはずなのに。そのために絶えず努力……。

 

 別に頭痛とかはありません。でも、ソレを指先で掻いているはずなのに手ごたえがないような、そんなもやもやが頭を支配しています。


「……具体的なところまでは決めあぐねていて」


 そう繕って、その場をしのぎます。

 すると晴美が突然、ガタリと席を立ち、私ににじりよってきます。

「氷織! 大好きだよぉおお!!」

「ちょ、晴美!?」

「じゃあ私も」

「ボクもするっす〜!」

「え、ええ!? 3人ともどうしたんですか!?」


 突然の展開に、困惑するしか乗る方法がなくて。

 ……晴美も花菜(かな)も、こんなに距離が近かったでしょうか……?


 またひとつ、分からないことが増えてしまいました。


 **


 それからも、日々に少しずつブラックボックスが侵入してくる気持ち悪さと過ごしていきました。

 家庭科の授業が始まりました。


「……どうしてあなたがペアなんですか、生天目さん」

「それは教師に言ってくれ。アイツが席をランダムにしたのが悪い」


 彼はやる気のなさそうな顔で私に応えました。


 今日の調理実習は、ペアになって朝食を協力して作るというもののようです。

 ……相手が相手なだけに、楽だと思っていた作業が途轍もなくストレスのかかりそうなものに思えました。

 彼は料理ができないのですから、ここに突っ立たれるだけ無駄……。

 またです。なんで私は料理ができないと知っているのでしょう。


「おーい八咫野さーん? どしたー」


 気づけば目の前で彼が手を上下していました。目障りです。


「いえ、何でもありません。それよりあなたは料理、できるんですか?」

「ふふふ。この前、自力で晩飯を作った。冷蔵庫の余りモノでなァ!」

「……意外にできるんですね」

「結果、しょっぱい野菜炒めと風味の死んだみそ汁ができたぞ」

「ダメじゃないですか」

「唯一成功したのはパックご飯だ」

「もしかして、カップラーメンを料理と思ってるタイプの人ですか」


 と、すらすら出てくる悪態。

 それを聞いた途端、彼の様子がすこし変りました。


「……」

「どうされました?」

「いや、なんか久しぶりだなーって」

「……」


 今度は私が黙ってしまいます。気持ち悪いったらありません。


「とりあえず。朝食のメニューはこちらで決められるようなので、オーソドックスなみそ汁、ご飯、焼き鮭というふうにしようかと」

「ってことはご飯の方を弱火にしてから調理する感じか」

「ええ。とりあえずご飯の方を済ませましょう。吸水はもう済んでいますし」


 学校あるあるなのでしょうか、ご飯を炊くのにいまどき見ない、鍋での調理です。しかも事前に炊くとかができないので、調理実習の開始と同時に火にかけないと授業の終了に間に合わなかったり。しかも火加減を間違えると焦げたり。面倒くさい料理の一つかもしれません。


 しばらくご飯を強火にかけてから弱火にします。タイマーをもう一度起動し、その数字がある程度減るまで待ってから、調理を始めます。


「ではあなたは鮭を。ちょっと拭いてちょっと切れ込みを入れて酒を振って焼くだけですので。できますよね?」

「あ、あたりまえよ。……教科書見れば」


 若干不安になりながらも意外に何事もなく進んでいきました。気づけばどのペアよりも早く調理が終わり、実食の段階へと進んでしまうのを、微妙な気持ちで居たのは言うまでもありません。


「では、」

「「いただきます」」


 二人で向かいあうのは癪なので、私は椅子を少しずらして食事にしました。みそ汁をすすり、自分の使っている出汁との違いを感じます。

 次に鮭をほぐし口に運びます。彼の自信とは裏腹にちょうどいい味です。

 彼も鮭を食べ、ぽつりと言いました。


「……少ししょっぱかったかな」


 首を傾げながら彼を見ます。

 そして、その頬に水があるのが目に入って、思わず私は口を開きます。


「どうしたのですか」


 彼は代わりに目元を拭って、


「八咫野さんのみそ汁は美味いな」


 と言いながら、みそ汁をすすりました。


 ……彼はあの時以来、過去をにじませる言葉をしていません。彼なりの配慮なのでしょうか。

 確かに記憶のない人物に「あの時の」だとか、「やっぱり」などと言われると困惑、今の彼なら嫌悪感が走るのは間違いありません。……行動にありありと出過ぎていますが。

 つまりは、彼の気配りの力はもともと身に付いていた物ではないのでしょう。きっと後から得たモノなのではないでしょうか。

 そんな考えが、すんなり受け入れられました。

 ……それが誰なのか、というのは私が自問するというのは可笑しな図なのでしょう。


 彼は言いました。私を傷つけ、否定したと。その言葉が一体何を指すのか、私は知りません。

 それを知ってしまえば、彼の思うツボでしょう。

 彼はバカっぽい顔と言動と行動のわりに、頭がキレるのかもしれません。

 だから、意地でも彼のいうことは訊いてやりませんとも。


 だからひとまず、目のまえに並んだ、若干心もとない昼食を進めました。

 何事もなく、いつまでも乾くことない彼の頬を無視して。


 そして授業を終えた足でそのまま下級生の教室へ向かいました。

 家庭科の授業が昼食の時間を含んでいるため、ちょうどお昼休みの中間といった具合です。

 教室を見渡せば、何もせず机に伸びている榎本さんが居たので、すぐそばまで入っていく。


「お昼寝ですか」

「んぁ……っデぇぇ!? ひおりさ、氷織先輩!?」

「そんなにびっくりされてしまうと困ります」

「あ、ご、ごめんなさいっす」

「……少し、お話良いですか。ここではない場所で」


 と言えば、彼女は顔をしかめ、あたりを見渡し、うなずきました。


 階段を下りてすぐ、2年生の教室の近くの空き教室へ。

「それで、榎本さん、話なんですが」

「あ、その……」

「えっと、なにかありましたか?」

「ボク、その、ど、同性も行けるように頑張るっすね……?」

「ええっと、何を言っているのですか……?」

「あ、あれ?告白じゃないんすか?」

「そんなに脈絡なくは言いませんよ?」

「あ、ソスカ……」

 俯く彼女を不思議に思いながら。

「それで、あなたは知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)んでしたよね」

「……あー。まあ、そうっすね」

「彼は、なんなのですか」


 榎本さんは腕を組んで言葉を選んでいます。


「生天目先輩のためにそこまで言うのは癪なんすけどねー」

 両こめかみに指を当てる榎本さんは唸るように言葉を絞り出します。


「えーと、どこまで先輩から聞いてます?」

「ただ私を傷つけた、と。」

「あーんの口下手がァ……」


 すぅと息を整え、

「言うの嫌っす〜……」


 ……そこまで渋ることなのでしょうか。


「ボクが言うべきじゃないと言いますか……でも、ひとつ言うことがあるとすれば、ボクと氷織先輩は、生天目先輩が居て、こんなふうに接してるっす」

「……」

「あと、石井があんなに無害になったのも、緑川先輩と三上先輩も。氷織先輩は、生天目先輩と一緒にいた人っす。……なので。思い出してあげて欲しいっすよ」


 榎本さんはなにかむしゃくしゃするように言いました。

「榎本さんは、彼のことが好きなのですか」

「ないっす。絶対ないっす。波長が合うって事実だけでお腹いっぱいっす」

「そ、そんなに言いますか」

 ため息が大きな榎本さん。

「でも、接するうちに嫌じゃなくなってくるんすよねー。あの人だってあの人なりに色々あって、こびりついた考えがあったから、生天目先輩って人間がいるんすよ。その色々には、ボクらが分からないところも、そして氷織先輩もいる。だから、まあ一緒にいてあげなくもない、って感じっすね」

「一緒にいてあげなくも、ない……」


 ストンと腑に落ちるような感覚がしました。

 私は、本当に記憶をなくしているのでしょう。であれば、私は以前こういう気持ちだったのでしょうか。

 彼の言葉、私を深く気づつけたということもおそらく本当、そこに他意がなかったというのも、本当なのかもしれません。

 ……となると。私も少し、行動を変えなければ行けないのかもしれません。


 しかし……うーん。なんと言いますか、こう……。

「……こういうことですか、癪に障るというのは」


 彼のために頑張ると思うと、どうも体が拒否反応を起こします。


 そんな私を見て、榎本さんは「ファイトっすー」と緩く言うのでした。


 ――――


 俺は机に突っ伏していた。本当に、打開策が見当たらないのである。氷織には思い出して欲しい。けれど、今までとは違い、別の働きでなってしまったこと。催眠アプリなど持っていても意味が無いことなのだ。

 ああ、つらい。


 そんな事を思っていると、机に近づく影。

 

「な、生天目さん。す、少し時間よろしいでしょうか」


 なに!? 噂をすれば何とやらだ。彼女の方から来てくれるなん……て……。


「……すっげー眉がヒクヒクしてる」

「な、生天目さん、で、デートシマセンカ」

「お前そんなこと言うキャラだっけ!?」


 すごい。俺が演劇をやると決まったばかりの時の俺のようだ。

「そ、その。あなたの事をよく知らないままだったので。記憶がないということが、現実を帯びてきたため、少しくらいならば、と」

「よっしゃぁ!」


 俺は飛び上がる。


「……こんなに嫌々言ってるのに喜ぶのですか」

「だって。ついに好感度がゼロに戻ったと思って……正直もうダメだと……」

「少し、いえ、結構ウザイです」

「辛辣ゥ!」


 でもそれでこそ氷織ィ!


「それで、場所はどうしましょうか」

「もちろん、デートといえば……」


 **

「それで来たのがテーマパーク……」

「当然だ」

「漫画に毒されすぎです。というかこの関係性の相手に言うことですか」

「まあまあ、クラスメイトと行くものだろ陽キャは。知らないけど」

 それに、俺に取ってデートと言えば、あの日からテーマパークなんだよな。

「そいじゃ、まずは何からやるか」

「おや、男性側のエスコートもなしですか?」

「こんなもん、手あたり次第楽しんだもの勝ちだろ」

 俺は入り口で買った、耳を動かせる帽子をぴょこぴょこさせる。

「……テンション高いですね」

「最初はジェットコースター行こうぜ!」

「なぜ最初から!?」


 **


「……ぅぇっぷ……」

「最初からジェットコースターなんて……しかもなんで言い出しっぺが一番ダメージを食らっているのですか」

「め、目の前にあったんだもん……」


 **


 そしてモンスターがはびこるシューティングへ。


「おめでとうございます。そこのお嬢さんは100000点超えましたね。このカードをどうぞ」

「ありがとうございます」


 前回に引き続き俺は数体を倒しただけである。無念。


 **


『それではみなさんご一緒に~?』

「フリーフォー……ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛」

「キャー!」


 **


「お、氷織! あっちに自転車レンタルあるぞ」

「……なんだかあなた、すごくテンション高くないですか? あと呼び捨てやめてください」


 などなど、あの時のデートとは別のルートで楽しんでいく。

 そして自転車で川の上に立った橋を渡り、しばらくしたころ、赤い小山が見えてきた。

 いや、赤いのは小山そのものではない。そこに植わっている小さな赤い木のせいだ。


「……すごいですね」

「そういえば今が見ごろなのか。前回来たときはまだ緑だったのに」


 コキア、だっただろうか。そういう季節ごとの花をこの小山に植えているそうだ。それを客寄せにつかっているんだとか。

 そのせいか小山に整備された道には所狭しと人がいる。正直先にコキアに驚愕できてよかった。少し視線を外せば「人多ッ」以外の感想を飲み込むところだった。


「さすがにここを登ろうとは、言えませんね」

「……そうだな」

「一応自転車なら、専用の道から別エリアへ移動できるそうです。そちらは遊園地というよりも景色という感じらしいですが。一日中遊ぶだけというのも疲れますし」

「そうするかぁ」


 俺は間の抜けた返事をしてヘルメットをかぶった。彼女もかぶり、ともにスタートする。


 十月も更けてきたというのに辺りはムワッとするような空気が流れている。時折垣間見える土に水が見えることから、昨日はまあまあな雨だったのかもしれない。俺は蒸発しない汗が肌を撫でるのを感じて、制汗シートを持っていることに安堵した。


 十分も走れば別の景色が広がった。

 ガラスや砂の広がる人工物、そして景色に差す真っ青な海。薄い潮風の匂いがこの場所を定義づけていた。


「……すごいですね」

「氷織さんや、さっきのコキアにも同じリアクションしてたけどな」

「そんなことは知りません。さて、行きましょうか」

「……ええっと、その手は?」


 流れるような動作で、氷織は手を差し出していたのだ。


「……なんでもありません。あそこのガラスのコテージに行ってみませんか」

「」

「黙っていてもやかましいですね。あそこで藻屑にしましょうか」

「ヤメテクダサイ」


 と、ガラス張りの建物に入ってみれば、カフェで。

 そこを出て小道に入れば。


「すごくいい匂いがしますね」

「これはあれだ。カモミールってやつだ」

「ラベンダーです」


 だんだんと歩みが合っていく。


 ふと転びそうになった氷織の手を、タイミングよくとることができたり。トイレから出て、ハンカチを貸してくれたり。

 少しずつ、デートということばに現実味がまざって来る。


 そのまま、俺達はテーマパークを遊ぶ。と言っても、どこも小山ほどではないものの人が多い。雰囲気の保持にはもっと穴場を見つけるべきなのかもしれない。

「なあ、次は北西の方行ってみようぜ。川をさかのぼっていくと、最初のアトラクションの裏側のエリアにいけるっぽい」

「いいですねそれ。さすがにテーマパークですし、アトラクションに乗ってから帰りましょうか。えーと自転車は……」


 海のエリアの入り口に止めてあった自転車を目指して歩いていく。

 が、俺のなかには大きく焦りがあった。もうすぐ空がオレンジになる時間。なのに、氷織の真意が見えない。

 俺めっちゃ嫌われてたのに、いきなり「デート」と言われて誘われたのだから。男の性として深く考えずに乗ってみたが、いまだによくわからない。


「……えーと。そういえば氷織」

「なんですか」

 いつの間にか、氷織呼びが許されていた。

 海にそそがれる小さな川に沿う通路。意外に流れは速い。雨のせいかな。


「なんで誘ってくれたんだ。めっちゃ嫌ってたじゃん」

「それは、誘ったときにも言いましたよ。いろいろ事実を組み合わせたら、忘れているというのが本当かもしれないと、自力で思っただけです。現にあなたのことはまだ嫌いですし、許そうと思ってません。ですが、せめて理解だけはしておこうかと」


 つまりこれが、今の氷織の最大限の恩情ということだろう。

 つまり。

「コレがデレ?」

「沈めますよ?」


 満面の笑みでキツイ毒が吐かれるのは変わらないのか。


「それとあなたには聞きたいこともたくさんあります。まだ私にしたことの詳細も訊けてませんし」

「……あー。うん。言わないとだよな」

「何があったのですか。ちなみに、私があなたに告白したなど嘘を吐いた場合はあなたをこちらの泥にします」

「……あれ、詰んだ? 事実言っても死ぬの俺」

「正直に言ってください」

「氷織が告ったから、拒否った」

「殺します」

「待って待って待って待って!!!」


 ——少しして。


「コレ、催眠アプリ」

「ええ、死んでください」

「ある日氷織だけの更衣室に迷い込んで」

「100回死んでください?」

「これで記憶を消して、やり過ごそうとした」

「10000回死んでください……」

「そしたら、その、お前の内側にあった二重人格、正確には自己催眠のようなもので、そのスイッチが壊れて、以降このアプリの力が必要になった」

「面白いいきさつですね、小説家を志して野垂れ死ねばいいんじゃないでしょうか」

「相槌全部『死ね』なのおかしいだろおま」

「突拍子もないこと言うからです」


 いやまあそうなんだけど! 灯里のことも忘れてるこいつにアプリの話しても信じるわけないってわかってはいるけど!!


「……灯里のこと、本当に覚えてねえのか」

「また新しい協力者ですか」

「違うって、お前の裏人格。……お前、夢あっただろ」

「なんですか急に」

「ライフセーバーだったか。それをお前は志していた、違うか」

「……そう、言えば、あれ、なんで私……」

「灯里はおまえのことが好きだった。お前が人命救助の夢をもちながらも水を怖がってしまうお前の代わりに夢を受け持ってた。今はもう、お前に夢と重荷をお前に返して、きえてしまったけどな」


 そう言ってやれば、氷織はうつむく。おそらく思い当たる節はあるんだろう。


「大体半年前か。それくらい俺たちは一応一緒にいたんだぞ」

「……らしいですね。ちょうど、それくらいの間の記憶がうすい気がしていましたが」

「んで、お前が告って。俺はそん時、誰かに好かれるなんて考えたこともなくって、拒否反応でいっぱいだったんだ。……そのせいで、氷織を全否定しちまってた。……一番そばで支えてくれてた氷織を、裏切った。だから俺は、受け入れる準備をした。少しずつでも恩を返せるようになりたくて、少しずつ料理も洗濯も片付けも、最近は頑張ってる。氷織にばかり任せないためにな」


「……あなたの言うわたしとやらは、そんなに世話焼きだったのですか」

「ああ。そりゃあもう。氷織なしじゃ生きられないな」

「あなたは、私(そのひと)を好きなのですか」

「もちろん。好きだ。だから、好きになってほしいんだなって、やっとわかった」


 そう言ってやると、氷織はクスリと笑って、足を速めた。


「やっぱりあなたは、とても屑ですね」

「仕方ないだろ! 俺は無能だからな。できないことはできないんだよ」


 彼女のほうについていこうとして。しかしすぐに疲れ、その場で俺は大きく肩を上下させていた。


「ほら生天目さん、急がないと日が暮れてしまいますよ」


 そう言って氷織は、いたずらめいた顔で坂道を、土、いや、泥のある坂を。

 彼女は前に体を戻そうとしていたから、回って、横へ。


 彼女の体が傾いていた。


 そして、その先には、ちいさな川。


「——!」



 途端に息が締まる。動かないと思っていた足が、途端に動いていた。


 宛てもなく差しだされる手。それが俺に差し出されているものだという感覚に強烈に襲われた。



 それに応えなくてはいけない。


 いつももらってばかりだった俺が、一番受け取るべきだったものをもらえないで。


 そんな俺に出来る唯一の恩返しを。しなくては、ならない。


 右手を伸ばす。しかしその手は彼女の手のすぐそばを、掻いた。



 彼女の背後には川。もし最悪の事態になれば、小さな流れでも溺れてしまう。


 彼女がいつだったかした、溺れるときの呼吸音が唐突に脳裏に張り付いた。


「——っだァ!!」


 俺はそのまま、左の手を彼女に伸ばした。



 そして。



 触れる。



 よっしゃ!



 と思ったのもつかの間。今度は足が土の上をすべる。

 踏ん張ろうとしても、足が言うことを聞かない。



 だからとっさにおれは、足にかまわず左の手を引いて。



 氷織が道に戻ると同時に、俺の体は水中に投げ捨てられていた。



 向こうで声が聞こえる。でも文字としての認識はできない。



 濁った流れが、どうしようもなく俺を押す。


 ……そういえば、あめ、ふったんだっけ。


 体中に石が当たって痛い。けれど、あいつがこうはならなくてよかった。


 いや、ここは施設内。息を止めて待てば施設員に……。


 諦めたその時、近くで水をかき分ける音がした。


 その音はだんだん近づき、そして。


「生天目さん!」


 籠りながらもしっかり、俺の耳に入ってくる声。


 ——俺の手を掴み、急に引き上げた。


「……あれ」

「生天目さん。ここ、浅いですよ」


 そういわれて正気に返る。通路の方には見物人、そして、膝の下辺りまでの川の水。

 

「……」

「そんなに溺れるほどじゃないですよ」

「……恥ずかしい」


 不意に直視してしまった現実に、冷たい川を沸かせるような羞恥がこみあげてくる。


 そんな俺に、氷織が抱きつく。

「氷織さん?」

「……何もなくてよかった」


 声の奥に震えが見えた。

「氷織……」


 心配されていたのか、そう思ったとき、クンと俺と氷織の距離は、彼女によって引きはがされる。

「施設員の人がもうすぐ来ますので、風邪をひかないように行動してください」

「アッハイ」


 その通りになったのは十分後。水を吸った服が重かったが、人も多く脱ぐのがはばかられたため、鼻水はずるずるだ。


「俺、だせー」

「ええ。あれくらい、しりもちをつくだけで終わるような立地でした。助けてもらう筋合いなんて、微塵もなかったです」

「……ッソスカ」


 施設員の人がもってきたテーマパークのTシャツに腕を通し、水浸しの持ち物を広げた。氷織は靴下と靴とスカートのすそくらいなためか、脱がない。脱いでくれてもええんやで。

「(怒)」

 氷織さん、テレパシーやめてください。


「……とりあえず、スマホとモバイルバッテリーはダメそうですね」

「最新式だったら……最新式だったら大丈夫だったのに……」


 中二の時に入手していたから……ちょうど防水がない世代である……。

 氷織がスマホを取り出し帰りの電車を調べたりしている。そのスマホは俺のモノより一回り大きい、去年のモデル。つまり防水だ。

 ……ということは、俺は完全に飛び込み損じゃないか?


「生天目さん、もっと布団にくるまってください。風邪をひかれてしまっては困ります」

「……ハイ」


 氷織は布団をかけた。


 ————

 

 彼がすごく情けない顔をしているのを、私はとても懐かしい気持ちで見ていました。


 そして、彼のあの時の感触を、顔を、声を。


 何回も聞いた気がするのです。


 私はかつて、誰かに助けてもらう側で、誰かを助けたことなんてありませんでした。

 私のことです。私の知らない時間の間にもきっとないのでしょう。

 手を伸ばすのは難しいことなのに、彼はさも当然のように。私にだけ手を伸ばしました。

 きっと彼は、本当に私を何度も助けたのではないでしょうか。そんな妙な確信がありました。


 そして同時に。私の脳に情報が流れ込んできました。


 私が昔、溺れそうになったこと。そして以前にも、地上にいながら息が詰まっていたこと。そんな錯覚ですべてが真っ暗になった時、彼の顔が飛び込んできたこと。それが、何より嬉しかったこと。


 そして飛沫をあげて川に飛び込む彼を見て、私のなかで何かが弾けました。それはパチリと合ったジグソーパズルの最後のピースのようで。それは私の動力源と体の導線がつながったようで。


 そして少しずつ、今も少しずつ、私の頭に情報が流れ込んでいる。


 私はどうやら、塩鮭とみそ汁とご飯を、彼に出したことがあったようです。

 私はどうやら、彼がてんで家事ができないということを知っていたようです。

 私はどうやら、誰にも言えなかった秘密を彼と共有していたようです。

 私はどうやら、彼の部屋のことをなぜかよく知っているようです。

 私はどうやら、彼がどうしようもなく情けなくて、なのにいざというときには体が動く人物だと知っていたようです。


 私はどうやら、そんな彼と一緒にいすぎて、好きになっていたようです。


 でも、そこまでしても私はまだ違和感だらけでした。まるで、自分のことだと知っていながら、その過去のことはどうしても他人事にしか見えないのです。


 まだ、彼の好きだった私が私自身であると信じられていないようで。


 ああ、私という人間は、どうしてこんなにも面倒くさいのでしょう。今まで彼に言ってきた言葉、行動はどれも回りくどいものが多くて。それが多分、私なりの愛情表現で。


 彼という人間も欠点だらけでバカで間抜けなのに、それらすべてを愛しいと思ってしまっている自分が、さらにへんてこだとも思う。


 ……ふと頭に考えが浮かびました。きっと、今の私(・)はこの物語に不要なのではないでしょうか。

 私は彼に信頼と恋情を募らせていったのに、私(・)は彼への嫌悪感を蓄積していった。私はだんだんと、思いだしている。けれどそれは私(・)のモノじゃない。私(・)というのは、たぶんきっと、私が心を癒すための避難場所として、灯里が居なくなった隙間に生じた、最後の自分じゃないダレカ。


 もう私(・)も終ってしまう。


 ——だから。

「生天目さん、体はあったまってきましたか?」

「え、ああ。大体大丈夫になってきたが。あ、帰りの電車の話?」

「いえ。最後にもう一つ乗っていきましょう」

「……でも、閉園時間も近いぞ」

「大丈夫ですよ、たぶん」


 多少強引に。彼を連れて、まだ乾いていない彼のバッグは置かせてもらい、「後で帰って来る」と書置きをして、園で一番高いソレに歩みを進めました。



 ————

「……観覧車か」

「ええ。夕暮れにするアトラクションランキング第一位です」

「もう暗いけどね?」


 そのまま受付へ行くと、人もほぼいない中で通され、そのまま一室へ通される。


「なんか、周りがくらいのって怖いなこれ」

「心配なら、そうですね」


 氷織は俺の向かいではなく、隣に腰を下ろした。


「……ッ」

「ふふ、照れてますね、これ」


 いつも的確に見破られると、悔しささえ出てくるものだ。


「……生天目さん、今日はありがとうございました。楽しかったですよ」

「ああ、俺もだ。前回は遊園地部分しか行かなかったから、新鮮で楽しかったわ」

「それに嬉しかったですよ、あれ。真っ先に手を引いてくれたの」

「べ、別に、人として当たり前のことをしただけだ」

「当たり前ではありませんよ。私(・)だって、逆の状況ならできなかったでしょうし私もできなかったと思います」

「お、おう?」


 私と二回、重ねて言う彼女に疑問がわきつつも、深くは考えなかった。


「……そういうところですよ、あなたは」

「??」


 氷織は一つ息を鋭く吸った。


「生天目さん、あなたは、私の記憶を戻して、どうしたいのですか」

「あの時の告白を、今度は俺からする。そして、傷つけたことを謝る」

「即答、ですか」

「今日も言ったが、俺は受け取る準備ができなかったんだ。誰かに好かれるなんてそんな幸福なこと、俺に起きると思ってなかった。俺にその資格があると思ってなかった。だから、俺はもう逃げない。ここまで来たら、好きになってくれた氷織と、灯里と、そして俺自身を信じるんだって」

 

 俺の手に、細いものが絡んでくる。


「生天目さん、よく聞いてください」

「え、あ、ハイ」

「私、あなたを好きなことを少しずつ思い出してきました」

「えっ!?」


 それってつまり、記憶……。


「ですが、私(・)はまだ、あなたのことを好きではありません」

「お、おお……え?」

「私は記憶を失った状態で、別の感情を抱きすぎました。なので」


「私(・)を好きにさせてください」


 そういった氷織は、目をつむって、黙って俺の方を向いた。


 すきにしてください。


 その言葉の意味が分からないほど、彼女の意味が分からないほどガキでもない。


 彼女はただ静かに、顔に朱を差して待っていた。すべてを理解する前に心臓の早鐘は加速していく。耳は熱くてしょうがない。


「氷織、好きだ」


 手をつないでいない方の手で、彼女の肩を掴む。すると、ぴくんと小さく震えが伝わってくる。

 顔を寄せ、その顔の美麗さに烏滸がましさと引力を感じながら、自分が感じるべき力へと身体を任せていく。


 彼女の吐息の熱を感じ、目に彼女の瞳が入りそうな場所で、


 確かに体温をつなげた。


 触れるだけのソレは、ひとつの器官で触れたというには重なりすぎる心地で。


 中毒性を持っているのに、息が続かなくなって。

 ゆっくりと離れると、名残惜しさを表す音が鳴った。


「……なるほど、人工呼吸と一緒にしてはいけませんでしたね」

「ひお、り?」


 氷織は真っ赤な顔のまま、笑って、俺の指の間に彼女の指を滑り込ませ、そして強く握る。そして、もう片方の手で、口に指をあてる。


「これをはじめてにしておいてあげます。なので、これからもっと練習してくださいね」

「ああ、練習しておく」

 

 観覧車はまだ回っている。しかし、あと三分の一もすれば終わってしまう。


「……なんだか、回り道だらけでしたね」

「そ、そうだな」

「基本的にあなたのせいですよ。あなたが、とっても面倒くさいことに執着して。やっと受け入れてくれると思っても、拒絶されてしまうんですから」

「そ、その節は本当にごめん」


 俺が言うと、ふと指の力が弱まった。


「ひ、ひおりさん?」

「許しませんよ、絶対に」


 氷織は俺の指から手を離し、

 ——そして腕に絡みついた。


「なので、これから負債を返済してもらいますから、覚悟していてくださいね」

「そんなの、望むところだ」


 そして二人の目が合って。


 二人の間には引力しかなくて。


 その力に従ってやがて触れ——る前にゴンドラのドアが開く。

「はーいお疲れ様でしたー……あ」

「「……」」


 そのゴンドラからは、妙に距離の離れたバカップルが出てきたそうな。


 しかし少し開いてしまった距離も、ここを離れてしまえば意味もなくて。ただ二人手をつないで。気恥ずかしさしかない行為を飽かずに続けて、これからも歩みを止めないで行くのだと。


 彼女が離れていかないように自分を信じて、彼女を信じていける俺達なら、きっと大丈夫なんだろう。


 確かめるように手に力を込めると、同じだけ強く握り返された。それだけで、じゅうぶんだった。

長い間お付き合いいただきありがとうございました

これにて正真正銘完結でございます。

もし面白いと思っていただけたなら、評価、コメントレビューなどなど、してくれると泣いて喜びます。

それではまた別の作品でお会いしましょう。

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