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勇者は犯罪者

旅路の末。

アイカたちは、ワクワク王国へと戻ってきた。


アイカ「思ったより、すぐ着いたな」


サクナ「今回は徒歩じゃなくて馬車だったからね」


サクナは城下町を見つめ、小さく息を吐く。


サクナ「……帰ってきた」


その瞬間、周囲の国民がざわめいた。


「サクナ姫だ……!」

「無事だったのか……!」

「でも、あれ……勇者アイカじゃないか……?」


サクナ姫は魔王の部下に誘拐された、

そして、勇者アイカが王の前でサクナ姫を救いだすことを約束した。


そんな、物語みたいな英雄であるアイカをみて、国民は。

国民はアイカの姿を見ると、怯えたように距離を取った。


アイカ「……なんか、変じゃないか?」


バイオレット「空気が悪いな。まるで“敵視されてる”みたいだ」


違和感を覚えながら、アイカたちは城下町を進み、王城へ向かった。


やがて巨大な城門が見えてくる。


バイオレットは腕を組みながら呟いた。


バイオレット「名前ふざけてるくせに、国は立派だな」


サクナ「殺すぞ」


バイオレット「ごめんなさい」


マイマイは怯えながらも、どこか安心したように城門を見つめていた。


だが。


城門をくぐった瞬間、全員の足が止まった。


王城が、半壊していた。


崩れた壁。 折れた柱。 瓦礫の山。

負傷した兵士たちが必死に片付けをしている。

まるで巨大な魔物が暴れた後のような惨状だった。


サクナ「……なに、これ……」


そのとき、兵士の一人が駆け寄ってきた。


兵士「サクナ姫!」


サクナ「君は……ジョニー?」


兵士「ロベルトです」


兵士「ご無事でなによりです!」


サクナ「この状況はどうしたの?」


兵士は震える声で答えた。


兵士「そちらにいる……勇者アイカ殿が……突然城を襲ったのです……!」


アイカ「は?」


バイオレット「偽物だろ。俺たちは今さっき着いたばかりだぞ」


兵士は首を振る。


兵士「いえ……この目で見ました……アイカ殿が……笑いながら……」


サクナ「どうなってるの……」


兵士に案内され、王城の奥へ進むと玉座の間で、サクナの父である国王が待っていた。


王は怪我をしていたが、サクナの姿を見ると目を潤ませた。


王「サクナ……無事で……よかった……」


サクナは駆け寄り、父に抱きつく。


サクナ「父上……!」


王「よかった……本当に……」


王はアイカたちを見ると、深く頭を下げた。


王「娘を魔王から救ってくれたこと、心から感謝する」


アイカは戸惑いながら頷く。


アイカ「いえ……当然のことをしただけです」


ナギは王を見つめながら思う。


ナギ(私のお父さんが生きていたら……こんなふうに迎えてくれたのかな……うらやましいなぁ)


そのとき王の目の色が、ふっと変わった。

まるで“別の誰か”が王の中に入り込んだような、不自然な揺らぎ。


王「兵士たちよ。勇者アイカを拘束せよ」


サクナ「えっ!? 父上!?」


アイカ「は?」


兵士たちが一斉にアイカを取り囲む。


バイオレット「おいおい、冗談だろ!」


マイマイ「どういうことですか!」


アイカ「どういうことですか!」


サクナは震える声で父に叫ぶ。


サクナ「どういうことですか!?」


王は苦しそうに言った。


王「アイカが……この国を襲ったのだ……私はこの目で見た……」


アイカ「俺じゃない! 偽物だ!」


しかし王は記憶操作されているため、信じない。

王はゆっくりと立ち上がり、玉座の前で宣言した。


王「勇者アイカを処刑とする」


玉座の間の空気が、音を立てて砕けた。


サクナ「父上!! アイカはそんなことしない!!」


ナギは胸を押さえた。


痛みではない。

苦しみでもない。

それは、心が叫んでいる証だった。


ナギの脳裏にアイカのお墓の記憶が蘇る。


足が震え、視界が滲む。

玉座の間の空気が重く沈む中、ナギは絞り出すように声を漏らした。


ナギ「……そうだ……」


ナギ「私は、あなたの死を」


その小さな声は、誰よりも深く響いた。


ナギ「私は……アイカの“死”を変えるために……過去に戻ってきたんだ……」


記憶は改ざんされた、 アイカとの思い出は、魔王によって塗り潰された。


それでも。


ナギ「どうして、こんな大切なことを忘れてたんだろ……」


声が震える。 涙が頬を伝う。


ナギ「私、バカだね。」


アイカの瞳が揺れる。


ナギ「アイカ……」


胸が締めつけられるような痛みが走る。

それでもナギは続けた。


ナギ「アイカが死んだ時……世界が終わったみたいだった……」


サクナが息を呑む。

バイオレットが拳を握る。

マイマイは泣きそうな顔でナギを見つめる。


ナギ「何度も……何度も神様に願った……」


ナギ「もう一度会わせてください」

ナギ「やり直させてください」

ナギ「今度こそ守らせてください」


ナギ「その願いだけは……記憶を消されても消えなかった……」


胸に手を当て、涙をこぼしながら叫ぶ。


ナギ「今度こそ……あなたを死なせない……!」


その言葉は、記憶ではなく、魂に刻まれた、絶対に消えない誓いだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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