人間と魔族のハーフの王の苦悩
魔族と人間は、豊かな土地をめぐって数千年ものあいだ争い続けてきた。
そんな歴史が、たった一週間前にひっくり返った。
魔族と人間が共存する国、ロウナ王国の誕生である。
前代未聞の国家をまとめる大臣は人間。
長身で眼鏡をかけた、いかにもインテリな雰囲気の男だ。
大臣「タイガー王。エルフ国から“友好を結びたい”との連絡がありました」
タイガー「……はぁぁぁ!?」
ロウナ王国の王。タイガーは椅子から転げ落ちそうになる。
エルフといえば、他種族を劣等種族と見下すことで有名。
そんな彼らが“友好”などと言い出す理由がわからない。
タイガー「いやいやいや、絶対なんか裏あるだろ……」
困惑するタイガーの横で、護衛の魔族が胸を張った。
魔族「さすがタイガー王!魔王を討ち、人間と魔族の深い憎しみを演説ひとつで終わらせた英雄!」
魔族「そして滅びたロウナ王国を復活させた……救世主様!」
タイガー「ゲロ吐きそう」
タイガーの顔から生気が抜け落ちる。
タイガーは魔王を倒していない。
演説の内容は魔王が考えた。
人間と魔族の和解したのには裏がある。
メイメイの記憶操作で“洗脳しただけ”だ。
つまり、大大大嘘つきである。
だが本人の意思ではない。
魔王に命令され、怖くて逆らえず、流されるまま王になってしまっただけだった。
タイガー「どうして、こうなったんだ」
そんなタイガーに、大臣が冷や汗を流しながら声をかける。
大臣「遊んでいる時間はありませんよ」
大臣「エルフたちはあと一時間で到着するそうです」
タイガー「…………」
口が開いたまま閉じない。
大臣「私も混乱していますが……とにかく準備を」
大臣「みんな!エルフたちの泊まる部屋と豪華な食事を用意しろ!」
魔族と人間たちは大慌てで走り回る。
タイガー「どうしてこうなるの……?」
大臣「急いでください、王よ」
タイガーは半ば押し出されるように、エルフ来訪の準備へ向かった。
一時間後。
ロウナ王国の玄関前に、ずらりとエルフの行列が現れた。
魔族と人間の兵士たちは緊張でガチガチ。
タイガー王は胃痛で死にかけていた。
大臣「わざわざ長旅、ご苦労様です」
エルフの長老「いいえ。突然の訪問で申し訳ない」
長老はゆっくりとタイガーへ向き直り、深々と頭を下げた。
エルフの長老「タイガー王。魔王討伐の件、感謝する」
タイガー「え、あ、はい……」
エルフの長老「我らエルフはロウナ王国と友好を結ぶつもりだ。」
エルフの長老が首を傾ける。
エルフの長老「しかし、確認したいことができた」
タイガー「確認……ですか?」
エルフの長老「王よ。人間と魔族のハーフの王よ」
長老の目が細くなる。
エルフの長老「本当に魔王を倒したのか?」
その瞬間、周囲が静まり返った。
大臣「無礼ですぞ!!」
タイガー (あ、ばれたか?おうち帰りたい。)
エルフの長老「悪いが……あなたから“強者のオーラ”を感じられない」
タイガー「ひっ……」
冷や汗が滝のように流れる。
タイガー「た、たおしままました……」
動揺で噛み倒す。
そのとき。
「そいつは魔王倒してないぜ」
場の空気が一変した。
視線が一斉に声の主へ向く。
勇者パーティーのバイオレットとマイマイだった。
タイガー (あれは、勇者パーティーの魔法使いに聖女だ)
マイマイはバイオレットの背中に隠れて震えている。
バイオレット「俺は勇者パーティーの大魔法使い、バイオレット様だ」
タイガー「終わった……俺の人生……」
エルフの長老「勇者パーティーの者か。では、なぜ“倒していない”と言い切れる?」
バイオレット「そいつは俺たちの仲間を誘拐したんだよ。そんな卑怯者が魔王を倒せるわけないだろ?」
自信満々に言い放つ。
マイマイ「いや、論理的に意味わかんないんだけど……」
マイマイは呆れ顔。
タイガーは死にそうな顔で震える。
タイガー「ままま魔王倒したもん……」
エルフの長老「では、メイメイさん。あなたはどう思いますか?」
エルフ軍勢の中から、魔王軍四天王の一人であり、元勇者パーティーのメイメイが姿を現した。
バイオレット「なっ……メイメイ!?」
マイマイ「なんでエルフ軍の中に……?」
タイガーは心底ほっとした顔になる。
メイメイは長老にそっと触れ、記憶を改ざんした。
エルフの長老の目の色が変わる。
メイメイ「私は、あのバイオレットという男が嘘をついていると思います」
バイオレット「はぁ!?」
エルフの長老「うむ。確かに……バイオレットが嘘をついているように思えてきた」
大臣は即座に指を突きつけた。
大臣「あの男を捕らえろ!国家転覆罪で死刑だ!」
メイメイ「い、いやいや!そこまでしなくてもいいと思いますが!?」
さすがに元仲間なので焦る。
大臣「殺す殺す殺す。殺せぇ!!!!!」
ロウナ兵たちが一斉にバイオレットへ向かう。
バイオレット「逃げるぞ、マイマイ!」
マイマイ「もう!バイオレットの馬鹿。考えなし!!」
バイオレットは杖を構え、魔法を発動。
巨大な壁が横にも縦にも広がり、兵士たちの進路を塞いだ。
タイガー「助かった」
タイガー「帰りたい」
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