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11.魔王城・魔王軍会議

魔王城の最奥。


そこに存在する円形の大机。


五つの席。


それは魔王軍四天王と魔王のためだけに用意された絶対の座であり、

世界の裏側を決める場所でもあった。


はずなのだが。


妙に静かすぎて、逆に落ち着かない空気が漂っている。

そのうち三つの席には、すでに“影”が座っている。

だがそれは肉体ではない。


魔力を媒介にした遠隔投影。

……なのだが、輪郭はゆらゆらと揺れ、時折ノイズのように崩れる。

どうにも安定しない。


ハラヤ「メイメイのやつ……遅いな」

指先で机をとん、と叩く。

音がやけに大きく響くのは、ただ静かすぎるせいだ。


ユウキュ「魔王様がもうすぐお見えになるというのに」

冷ややかな声。

だが、その言い方はどこか「面倒ごとが増える前に終わらせたい」という響きがある。


リョウキ「……無礼だな」

低い声。


空気がわずかに張り詰める。


……が、影の揺らぎのせいで、威圧感がほんの少しだけ損なわれていた。

そして、その瞬間だった。


空気が沈む。


「現れた」というより、「最初からそこにいた」と錯覚するような存在。


魔王。


扉は開かない。

光も差さない。

ただ、そこに“いてしまう”。

座っただけで、場の重みが変わる。

呼吸すら、わずかに重くなる。


リョウキ「魔王様、お呼びでしょうか」

即座に頭を垂れる。

迷いは一切ない。


魔王はゆっくりと息を吐き、無駄な言葉を一切挟まずに告げる。

魔王「メイメイが勇者に倒された」


一瞬。

完全な静止。

音も、思考も止まる。


ユウキュ「……は?」

間の抜けた一言。


ハラヤ「……それは、冗談ではなく?」

わずかに眉をひそめる。


リョウキ「馬鹿な」

短い否定。


だが三者に共通していたのは

“理解したくない”という感覚だった。


魔王は続ける。

魔王「ハラヤ。勇者はお前の領域に向かっている」


一拍。

その間だけ、世界に猶予が与えられたかのようだった。


魔王「油断するな」

ハラヤ「……はい」

短い返答。


だが、その声にはわずかな緊張が混じる。


魔王はそれだけ言うと、静かに立ち上がる。

その瞬間、場の圧が一段軽くなる。

誰も言葉にしないが、確かに空気が緩んだ。


ユウキュ「メイメイがやられるなんてねぇ……」

軽く言うが、目は細められている。


リョウキ「心配はいらん」

腕を組む。


リョウキ「やつは“四天王最弱”だ」


ユウキュ「……まぁ、それはそうだけどさ」


あっさり肯定。

一切のフォローがない。


リョウキ「事実だ」

さらに重ねる。


いない相手への扱いが雑である。


リョウキは視線を横に流す。

リョウキ「ハラヤ、手を貸そうか?」


ハラヤ「いらない」

即答。


次の瞬間、気配ごと消える。

移動というより、“切り離された”ような消え方だった。


リョウキ「……相変わらずだな」


ユウキュ「さぁね」

肩をすくめる。


しばし沈黙。


ユウキュが、ふと思い出したように口を開く。

ユウキュ「リョウキ、最近、魔王様の“過去”みたいなの流れてこなかった?」


リョウキ「ああ」

短い返答。


ユウキュ「メイメイが死んだ影響かねぇ」


リョウキ「おそらくな」

腕を組み直す。


リョウキ「我々は魔王様によって生み出された存在だ。いわば分身体に近い」


ユウキュ「分身体、ねぇ」

楽しげに言葉を転がす。


ユウキュ「じゃあさ」

ユウキュ「魔王様、人間に恋してたってことか?」


一瞬。

空間が、わずかに硬直する。


リョウキ「……驚いたな」

否定しない。

それが答えだった。


ユウキュは口元を歪める。

ユウキュ「へぇ……そういうこと」

そして、堪えきれず笑う。


ユウキュ「じゃあさぁ!」

ユウキュ「おいらが人間の美少女好きなのも、本能ってやつじゃん!」

ユウキュ「ひゃはははっ!」

重苦しい空間に、不釣り合いな笑い声が響く。


リョウキはわずかに眉をひそめる。

リョウキ「本能って。やめてくれ。」

リョウキ「俺にそんな趣味はない。」


***一方、その頃***


ナギたちは、ピピン王国へ向かう途中の草原で野営していた。


夜は深い。


焚き火だけが、彼らの世界を照らしている。

ぱち、ぱち、と木が爆ぜる音が響く。


その中に、当然のようにメイメイがいる。


なお、死んでいる。

メイメイ「なぁ、アイカ」


アイカ「なんだ」


メイメイ「なんで元の世界に帰らなかった?」


ナギ「私も知りたい」

自然に混ざる。


アイカは少しだけ沈黙する。

(……あの姫のことは、まだ話さなくていいか)


やがて口を開く。


アイカ「理由は複数あるけど、あえていうなら」

アイカ「未来が、だいたい決まってたから、かな」


ナギ「決まってた?」


アイカ「学校行って、いい大学行って、就職して」

淡々と続ける。


アイカ「周りも同じでさ。何も変わらない未来が見えてるのに、それをなぞるだけの毎日が、ちょっとしんどかった」

枝をくべる。

炎が強くなる。


アイカ「だから、この世界に残った」

アイカ「何が起こるかわからないほうが、生きてるって感じがした」


ナギは少し考えて

小さく笑う。


ナギ「……そんな理由で残る人、いるんだね」

やわらかい声。

少しだけ、からかうように。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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