三十一章 陰陽寮、創設まで秒を読む
「姫よ、先の話について考えを聞きたい。」
皇子の言う先の話とは、いかにして地方は中央と戦うか、というものである。
これは、都での雲行きがおかしく、皇子は暗殺される前に出家し、山奥に身を移したのだが、いずれは戦が起こることは避けられないことにある。
姫は答える。
星を読んだところ、戦となったとき、地方の軍は兵を起こすことに手間取り、中央の軍と対面する折には、山の木々に皇子の軍旗をくくりつけ、数を多く見せかけて戦うようになること。
後からやってきた軍と合流しても、指揮系統に混乱が生じ、中央軍に押し切られ、皇子は討ち取られること。
その後、皇子の子が挙兵し、官軍として中央に返り咲くと、姫は言う。
「姫よ、その結果に対する策は、いかなるものか。」
姫は答える。
星読みしてすぐ、状況を打開する鍵になる西部に使者を出しており、大国の侵攻を許さないためにも、中央に対し一兵たりとも動かさない確約を、西部からもらっていること。
中央軍が山に入ったときには、狐族の妖術により、中央の兵には、よく道に迷ってもらうこと。
忍びには、木こりに変装した格好で、中央軍に捕らえられてもらい、皇子の軍勢が中央軍の倍も大挙しているという嘘の自白をしてもらうよう、報酬の半分をすでに払っていること。
よって、中央の動きがおかしいと知った時点で、皇子は木々に軍旗を取り付けるよう命じ、中央軍と対面したときに降伏勧告を出せばよいこと。
後は、同志・狐族・忍びと相談しながら、その場その場で対応すると、姫は言う。
「姫よ、そなたは魔王であるな。」
「皇子よ、随分と大人しいものに例えてくださる。
しかし、私は、地の底から天の上の八方を統べる王になる。
そして、その覇が私の代だけで終わらぬよう、天地八方を知る者が集う場である、陰陽寮という名の機関を作る。
そのときには皇子よ、その場で認めよ。」
後に編纂された国史書には、三十一文字から成る詩が載っている。
この詩は、陰陽寮を夫婦で作り、未来永劫、天地八方を統べてみせるという、決意を読み取ることもできる。
八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を




