二十九章 同志、人の石垣を考える
「同志よ、先の話について考えを聞きたい。」
姫の言う先の話とは、役人が入れ替わるとき、いかにして支障なく政務を進めるか、というものである。
これは、帝が新しく即位する度に、家臣や地方との間で、ある政務を誰がやるかといった議論が起こり、支障をきたす事態が起きていることによる。
同志は答える。
家臣や地方だけでなく、新しい帝も中央も、何をすべきか分かっていないこと。
よって、帝や役人が替わる度に、日頃からの力関係を用いて議論し、それぞれの政務の範囲を決めていること。
この状況を変えるには、姫の言う国史編纂と絡めて考えるとよいこと。
新しい国史の中で、帝の行いを記すならば、まずは帝や中央のすることが分かること。
また、新しい国史編纂の後、各地方で郷土史を編纂することで、地方のすることが分かるようになること。
加えて、より細分化された身分制度を取り入れることで、中央も地方も、自分は何に口を出してよく、何に出してはならないのか明らかになること。
さすれば、議論は減ると、同志は言う。
「同志よ、議論が減るということは、亡国の兆しにあたる『思っていることを言わない』につながりはしないか。」
「姫よ、そのとおりである。
では、政務の場の他に、もう一つ場を作ってはどうか。
酒を飲む場では、身分を超えて思っていることを言う風習を、それとなく、作るのである。」
「同志よ、いよいよ私はそなたから学ぶ身になった。
しかし、これもお互い様とし、そなたを先生と呼ばぬぞ。」
「姫よ、そなたから先生と呼ばれたら、鳥肌が立つ。」
子狐は、こんこん言いながら、庭を横切るのであった。




