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二十四章 姫、皇子を脅す
「皇子よ、私の話を聞け。」
姫は続ける。
周りの時が止まっていることを確認してほしいこと。
これは妖術であり、狐族が自分に手を貸してくれていること。
狐族が人に力を貸す理由は、この国が大国に攻められ、この地が焦土と化せば、この国に住む人も狐も生きてはいけないことにあること。
この国を守るゆえ、自分はこの身を狐族に捧げる所存であること。
よって、結婚の儀は形だけのものにしてほしいこと。
皇子が断るならば、飢饉に飢える民の気持ちを味合わせてもよいこと。
ネズミに体を噛まれても、振りほどく力がないまでに、骨と皮と痩せ細った民の姿は、姫として国を預かる自らの無能を感じること。
今はそれほどまで、この国は危ういのであると、姫は迫る。
「姫よ、仰せのままに。」
震えあがる皇子を、誰が笑えようか。
「姫よ、すっかり悪者であるが、よかったのか。」
「狐族の長よ、そなたを最も知る者は誰か。
私を最も知る者は誰か。」
「姫よ、何を言う。
そなたと私しかいない。
我ら以上に互いを知る者はいない。」
「狐族の長よ、私とて同じこと。
私はそなたの愛昇炎女。
ともに、この国に住む人と狐の子が、元気に走り回る世を作ろうぞ。」




