十三章 姫、街つぶしを考える
「姫よ、先の話について考えを聞きたい。」
長の言う先の話とは、大国のとある街をいかにつぶすか、というものである。
ただし、国つぶしの三つの策は用いないという条件がある。
姫は答える。
この度の策も、妙は天地人の和合の教えにあること。
まず、「大国のかの街は、一度は見た方がよい」という噂を、何度も流すこと。
やがて、人はかの街に行き、何かを見つけ、隣人に土産話をすること。
「ここが素晴らしい、あれが良かった」という話をまとめ、更に噂を流すと、人々は我も我もと、かの地に赴くようになること。
かの地に行く者は、当然、食べるものと寝るところを必要とすること。
ぽつぽつと旅人が訪れだしたら、食べ物屋と宿屋に転身する者が現れること。
やがて、かの街の役人が見所を整備し始めること。
他のところからも、かの街に商人がやって来始めること。
さすれば、悪循環ができること。
田畑で作るものは、旅人の食べる菓子の材料になること。
人と金が集まるところは、物の値段が上がっていくこと。
売れる値段も高くなれば、儲けを増やそうと、周りの田畑に植えるものも変わってくること。
すると、生活に必要なものは遠くから買うようになること。
更に物の値段が上がり、やがて暮らしに困るものが現れると、乞食か身を売る者が現れること。
身を売る者が増えれば、かの街は夜遅くまで明るくなること。
やがて、子をなす時間が無くなること。
乞食は、かの街の役人に追い払われること。
さて、かの街が栄華を極めたところで、「かの街は泥棒が多い、古き良き時代は過ぎてしまった」という噂を流すこと。
旅先での嫌な思いの一つや二つが、強調されていくこと。
我も我もと、かの街の嫌な思い出を語り出せば、訪れる者は減っていくこと。
かの街の役人は、旅人の足を取り戻そうと、更に見所を整備し、いかに素晴らしいところかを、触れ回ることに金を費やすようになること。
栄華を覚えている者は、食べ物屋や宿屋を営み続け、やがて店を閉めること。
かつて蜜のように甘かったかの街は、一度は栄華を誇ったがゆえに、見切りをつけられること。
全てを壊し、前のように自らが食べるものを植え、田畑を耕す策は施されないこと。
こうして、忘れられた街ができると、姫は言う。
「姫よ、この策を考えたように、長い目で見ることを大事にしてほしい。
天地人和合の教えが崩れる隙を作らないことも、先の民を守る。」
長はふと、この頃、姫の肌が青白くなっていることに、どこか気づいていた。




