十章 姫、先人の戒めを考える
「姫よ、先の話について考えを聞きたい。」
「狐族の長よ、これは語るに恐ろしいため、沈黙することを許してほしい。」
長の言う先の話とは、何ゆえ親兄弟の家族の中で、子を成してはならないのか、というものである。
「姫よ、答えるとどうなるか。」
「狐族の長よ、答えると私は人でなくなる。」
「姫よ、では沈黙するとどうなるか。」
「狐族の長よ、私は一生、思いついてしまったことを一人後悔する。」
「姫よ、好きな方を選べ。」
姫は自分の袖を握りながら答える。
さっぱり分からず、星読みに頼ったこと。
すると、家族で子を成すことは、最も子孫が繁栄する方法と知ったこと。
思い起こすと、ネズミ算の話では、家族で子を成し倍々に増えていくものであること。
人に当てはめれば、国産みの神代の時代には家族で交わり、戦える者を揃えることで、一族の繁栄を図っていたかもしれないと、姫は言う。
「姫よ、家族の交わりの戒めは、意図して作られたものか。」
「狐族の長よ、どうか答えぬことを許してほしい。」
「姫よ、答えるか否か、人に委ねずそなたが決めよ。」
姫は声を張り上げて答える。
生まれる命を左右する戒めなど、天の領分を侵す所業であること。
誰かが決めなければ生まれぬ、それ程に不自然な理であること。
よって、家族の交わりの戒めは、人自らが作り出したものと、姫は言う。
「姫よ、この戒めは、今の世にも必要か。」
「狐族の長よ、星読みを使ってしても、戒めを作った理由が分らないため、答える言葉がない。」
「姫よ、私も未だに分からぬ。」
二人は、言葉のない縁側にしばらく座るのであった。




