求婚
ゆっくりとした足取りで前に進む。
「アリシア嬢、この婚姻は政略結婚だ」
「はい・・・」
騎士として振る舞いながらもアランの瞳はしっかりとアリシアを見つめていた。
強い眼差しから意思が感じられ、少しだけ戸惑いを感じる中、アランはそっと手に触れキスをする。
「なっ!」
「なれど、俺は貴方が欲しい・・・貴方の心が」
その瞳は愛しいものを見つめるような瞳で、アリシアは困惑した。
「一人の男として貴方を愛おしく思う。政略結婚となりますが・・・貴方の気持ちが俺に向くまで無理強いはしたくない」
それは形だけは婚約者という形をとっても無理矢理妻に娶る行為をしないと言う約束だった。
その誓いに騎士としての儀式を行い剣を鞘から出し誓いをする。
「いけませんアラン様!」
この儀式は王族に忠誠を誓う方法と同じだった。
違えば死刑となることを意味していた。
「この聖剣に誓う。俺はアリシアを決して裏切らないことを」
王の前で誓いを立てるアランは、正式にアリシアに求婚をしていた。
それはもう情熱的に。
結果・・・
「流されてしまった」
部屋で暗くなるアリシアは沈んでいた。
あの場で断る勇気など持ち合わせていない。
「はは・・・何でこんなことに」
成り行きで姫巫女になってしまいあげく、アランの婚約者という形になってしまったアリシアはなんとも言えない気持ちになった。
「おい」
「っ!!」
落ち込むアリシアに背後から声をかけるアランが訪れる。
しかも耳元で囁くように。
「アラン様!音もなく近づくのはおやめください」
「何度も声をかけたが?」
「うっ・・・」
気づかなかったアリシアが悪いので何も言えなかったが、ベッドの上で至近距離で近づくのをやめてほしかった。
「近いのですが」
「近づいているからな」
何食わぬ顔で言うアランにアリシアは心の中で突っ込んだ。
この天然騎士!!
そんな思いにも気づくはずがないアランは隣に腰かける。
「怒っているのか?俺が婚約したのを」
シュンとした表情をするアランは質が悪い。
普段は無表情なのにこういう時だけこんな表情をするなんてズルいのだが本人に自覚はなかったのだった。




