序章:ここはどこ?09
パソコンの状態がすこぶる悪いです。せつないです。
(魔王さまは魔王様です。それ以上でも以下でもありません。)
・・・。結局、3週間の時間はあんまり距離を縮めることは出来なかったんだな。向こうからしたら業務の一環に過ぎなかったんだろう。俺の称号もずっとぼっち魔王だしね。なんだかんだ目で見て自分の能力が伸びていくってのはモチベーションが上がる。前は仕事しても評価されるかどうかは上司の匙加減で公平とはえいなかった。それが今はやればやっただけ成果が見えるっていうのはいい。ただ、瀕死の魔物を殴るだけで強くなった気はまったくしないんだけど。
そして、レベル上げにハマってしまったわけだが、あと1-2ヶ月で俺の命運も尽きると思うと副官ちゃんともう少し仲良くなっておきたいなんて欲が出る。万が一のことを考えて自分のことを知っている人間がいてほしいって思ってしまう。元来、冷めた性格だし社交的ではないけど異世界から来た人間がいることを誰も知らないって考えると空恐ろしい気持ちになる。
「ちゃんとした名前考えないとな。」
エルフと魔族の混合個体ってことはハーフってことか、種族はハイエルフと上級魔族。ん~種族から名前考えるのは個性ないな。
いや、ここは本人の希望を・・・ダメだな。あの子あれで主体性ゼロだから。ゼロはどうか、ってダメダメ!シリアルナンバーしかないのに名前が数字ってアカンやん。ここは魔王らしく独善的に俺の好きなものの名前をあげよう。
そうして、たくさんの名前を上げ連ねた結果次の日に副官ちゃんを呼び出すことになる。
「おはよう、今日はいつも良くしてくれる君にお礼の意味を込めてプレゼントがある。」
たくさん瀕死の魔物を連れてきてくれたりね。
「いえ、職務なのでお気遣いはけ」
「まぁまぁ、そう言わずに受け取って欲しいんだよ。時間もないだろ?短い付き合いになるかもしれないしね。」
「しかし、魔王様。それにはリスクが」
「では、君の名前は今日からノエル・ド・ブッシュだ。」
「あっ・・・。」
何か言いかけていた副官ちゃんを遮り命名する。副官ちゃんのことだから話を聞くと固辞するだとろうということは予想が出来ていたので有無を言わせる気はなかった。とここで、身体を倦怠感が襲う。何かが抜け出るような、これはマナが抜けてる!?しかも急速に大量のマナが消費されてるぞ?膝をつきそうになるが踏みとどまる。副官ちゃんは両手を胸の前に組み祈るように膝を付き俯いている。
「大丈夫か?副官ちゃん。」
「・・・んで、・・さい。」
「え?」
「名前で・・・呼んで、ください。」
「あ、あぁ、そうだね。ノエル大丈夫か?」
そう声をかけるとうっすらと涙を浮かべながら満面の笑みを浮かべて答える。
「はい!ありがとうございます、魔王様。」
ヤバイヤバイ!笑顔マジヤバイ!アイドルどころじゃない可愛さだ。思わず見惚れてしまった。自分の胸の高鳴りを感じる。ジジイの体でそんなもの感じると不整脈で死ぬんじゃなかろうか。でもよかった、喜んでくれたみたいだ。
後で聞いたんだが、名付けもしくは命名っていうのは自分のマナを分け与える特別なことだということ。本来、親から子へと与えられる最初の贈り物であるということ。名前を持つということ自体が特別なことで名を付けられることで恩恵を受けることが出来るようになること。そして、作られた自分は名前を与えられることなどないと思っていたこと。
「リスクがあることを説明するつもりでしたのに、ロッカク様がいきなり付けるとは思っていませんでした。」
「俺もリスクがあるとは思ってなかったんだけどね。俺の世界では名前を付けることは親ならするけど、あだ名とか友達同士で付け合うしなぁ。」
「名前を付け合う、ですか。すごい世界ですね。」
「ところで、急に態度が変わったように感じるんだが?」
「そうですか?でも浮かれているのかもしれませんね。」
「まぁ、嫌ではないならそれでいいよ。」
「嫌では・・・ないですよ。」
そういって笑いながら今日の魔物を狩りに行ってしまった。副官ちゃんの説明を考察すると元魔王からの業務命令を受けている状態から俺が名を付けたことにより親と子に近いよう関係になったようなものなのかな。っとそれも大事だが自分のステータスも見ておかないと。
名前:ロッカク
性別:男
Lv:42
HP:1800
MP:2000(※※※※)(3000-1000)※回復遅延状態
スキル:スキル:鑑定LvMAX リスニングLvMAX 隠蔽Lv6 水魔法Lv6 土魔法Lv7 闇魔法Lv6 光魔法Lv6 雷魔法Lv1
称号:元ぼっち魔王 ストイック魔王
おぉ!?MPが1/3も減ってる!その上回復遅延?なんか状態異常まで付いてる、遅延ってことは回復するみたいだから一安心か。それに雷魔法っていうのも付いてるな。これは副官・・いやノエルのスキルを共有したってことか。それにしても名付けか、これだけの恩恵があるのに元魔王は何で行わなかったんだろうな。
「ロッカク様、今日の獲物です。どうぞご賞味ください。」
「食べないからね!?」
「フフッ」
笑顔を見せてくれるノエルは本当にいい!そういえばノエルのステータスはどう変わったんだろうか。
名前:ノエル・ド・ブッシュ(副官)
年齢:0才
性別:女性
Lv:50
HP:900
MP:1100(600+500)
スキル:風魔法Lv6 火魔法Lv6 雷魔法Lv2 水魔法Lv1
→
MPが俺の減った半分がプラスされてるな。あと水魔法が追加になってる。MPはともかく水魔法かちょっとショボイのがついてしまったな。
「ノエルのMPは上がってるがスキルは水魔法か、もう少しいいのでも良かったな。俺は雷魔法なのに。」
「いえ、ロッカク様との大切な繋がりなので私には十分です。」
「なんていい子!」
「はい?」
「おっと声に出てた。・・ゴホン、それにしても雷魔法というのは基本属性になかったようだけど?」
「これはユニークというカテゴリーの魔法です。ユニークというのは種族特有だったり、オリジナルの魔法を指しています。昔は闇魔法もユニーク扱いだったと聞いています。今は人気がないだけですが・・・。」
「あっ、人気ないのね。暗くして視界を奪ったりするだけだもんな・・・ブツブツ。」
「あ、でも使い手が少ないので極めれば強力な武器になると思います、よ?」
「でもなぁ、レベル自体はほかの属性も上がってるし、詠唱をすれば効果は発動するけど、どうも使い難いっていうか感覚的じゃないんだよね。レベル上限までは威力も上げられる、効果も理解できる、あとはもっと感覚的に使いたい・・・。感覚的に・・・。ん~・・・。」
「どうかなさいましたか?」
「いや・・・。」
「ところでステータスの下に矢印が出てるのは何なんだ?」
「それは次のページが解放されたということです。スキルが多いとそういうことが起きるそうです。」
「なるほど。」
名前:ノエル・ド・ブッシュ(副官)
年齢:0才
性別:女性
Lv:50
HP:900
MP:1100(600+500)
スキル:風魔法Lv6 火魔法Lv6 雷魔法Lv2 水魔法Lv1
瞬動・瞬歩・隠密・偵察・諜報・怪力
称号:ロッカクの副官
出たな、なになに?ロッカクの副官?マジか!とうとう俺にも副官が!そういえば俺の称号もぼっちから元ぼっちになってたな。副官ちゃんのおかげか~。スキルの2段目には戦闘や肉体系のスキルがくるってことだろう。これは早くて強いってことじゃないか?うはー!最強っすか?
「そういう戦闘系のスキルってどうすれば付くんだ?」
「そうですね、例えば筋力を鍛えていれば力系のスキルが付きますし、私のように作られた存在は魔法以外スキルがない状態で出てきます。狩りに行ったことでそのスキルがあるを取得しているのと同様とされスキルとして表示されます。そのスキルがなくても高速で動くことが出来ればそこに表示されます。スキルとして表示されることでボーナスが得られるとされています。」
「ボーナス?」
「はい、元の状態より1-2割の増加があると考えられています。」
「俺はまったく表示されていないんだけど・・・。」
「それは使用していないから、だと考えられます。ロッカク様はLv1から同じ戦い方ですので。棒でひたすら殴るという。」
「うっ、それもそうだったな。」
「この際、武器を変えてみるのもいいのかもしれません。もう重くて持てないということもないと思います。」
「そうしてみるか。」
「では、新しい武器も見繕ってきますね!」
そう言いながら楽しそうに何処かへ走っていったノエルは年相応の女の子そのものだ。なんか、新しい生活の予感がする。ウキウキとした高揚感を感じずにはいられなかった。