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第118章 結婚式本番 ― グレン村史上最大の祝福

第118章 結婚式本番 ― グレン村史上最大の祝福


結婚式当日の朝。

 グレン村は、まだ太陽が昇りきらないうちから、ざわざわとした活気に包まれていた。


村の広場には、色とりどりの布が張り巡らされ、花で飾られたアーチがいくつも並び、

 鍛冶屋集団「鋼の匠」が徹夜で仕上げた巨大な鐘が、グレンホテルの屋上に吊るされている。


市場の店主たちは、祝いの屋台を準備し、

 子どもたちは花びらを籠に詰めて走り回り、

 村の女性たちは、マリーのために作った花冠を手に、そわそわと待ち構えていた。


――今日は、すすむとマリーの結婚式。


村全体が、まるで自分たちの家族の結婚式のように喜び、祝福し、準備に奔走していた。


★★★★★


グレンイン二階の一室。

 マリーは、窓から差し込む柔らかな朝日で目を覚ました。


(……今日、私は……花嫁になる)


胸が高鳴る。

 緊張と喜びが入り混じり、心が落ち着かない。


鏡の前に座り、そっと自分の頬に触れる。


(こんな日が来るなんて……思ってもいなかった)


王女の護衛として生きてきた日々。

 自分の幸せより、誰かを守ることを優先してきた人生。

 恋愛など、自分には縁のないものだと思っていた。


だが――。


(すすむさんは……私を選んでくれた)


その事実が、胸の奥で温かく光っていた。


ノックの音がした。


「マリーさん、入ってもいいですか?」


「リリア……どうぞ」


リリアが、村の女性たちを連れて入ってきた。


「さぁ、花嫁さん。

 今日の主役なんですから、綺麗にしないと!」


「えっ……そんな……」


「遠慮しないでください。

 村のみんなが、マリーさんのために準備したんですから」


マリーは、胸が熱くなった。


女性たちは、手際よくマリーの髪を整え、

 白いドレスを着せ、

 花冠をそっと頭に乗せた。


「……綺麗……」


リリアが思わず呟いた。


「本当に……お姫様みたいです」


「そ、そんな……」


マリーは照れながらも、鏡に映る自分を見つめた。


そこには、護衛ではなく――

 一人の女性としての自分がいた。


★★★★★


一方その頃、すすむはグレンホテルの一室で、ギルバートとグラントに囲まれていた。


「ほら、じっとしてろ。

 ネクタイが曲がってる」


「ギルバート……そんなに引っ張るなよ……!」


「新郎がだらしない格好で出てきたら、村の恥だぞ!」


「いや、村の恥って……」


グラントは笑いながら言った。


「でも、すすむさん。

 本当におめでとうございます」


「ありがとう、グラント」


すすむは、鏡に映る自分を見つめた。


礼服に身を包んだ自分は、どこか見慣れない。

 だが、胸の奥には確かな決意があった。


(マリーを……幸せにする)


それだけは、揺るぎない。


ギルバートが、すすむの肩を叩いた。


「お前なら大丈夫だ。

 マリーを幸せにできる」


「……ありがとう」


「さぁ、行くぞ。

 村中が待ってる」


★★★★★


広場には、すでに村人たちが集まっていた。


鍛冶屋集団のドワーフたちは酒樽を抱え、

 市場の店主たちは祝いの料理を並べ、

 子どもたちは花びらを手に、そわそわと待っている。


村長が壇上に立ち、声を張り上げた。


「皆の者!

 これより、すすむ様とマリーさんの結婚式を執り行う!」


「おおおおおおおおっ!!」


歓声が広場を揺らした。


村長は続けた。


「この二人は、村のために尽くしてくれた。

 ホテルを作り、市場を整え、村を守り……

 そして、互いを守り合ってきた。

 今日、二人が夫婦となることは、村にとっても大きな喜びじゃ!」


村人たちは、すすむとマリーに向けて拍手を送った。


音楽隊が演奏を始めた。


子どもたちが花びらを撒きながら、花の道を作る。


その先に――

 白いドレスを纏ったマリーが現れた。


「わぁ……」


「綺麗……!」


「まるで本物の姫様だ……!」


村人たちが息を呑む。


マリーは、緊張で足が震えそうになりながらも、

 ゆっくりと花の道を歩いた。


(すすむさん……)


視線の先には、礼服姿のすすむが立っていた。


すすむは、マリーを見た瞬間、胸が締めつけられた。


(……綺麗だ)


言葉にならないほど、心が震えた。


マリーが近づくと、すすむはそっと手を差し出した。


「マリー……来てくれてありがとう」


「すすむさん……」


二人は手を取り合い、微笑み合った。


★★★★★


村長が二人の前に立った。


「では、誓いの言葉を述べてもらおう」


すすむは、深く息を吸った。


「マリー。

 俺は……あなたに守られてばかりだった。

 でも、これからは……

 俺があなたを守りたい。

 あなたと一緒に生きていきたい。

 どうか……俺の妻になってください」


マリーの目に涙が浮かんだ。


「すすむさん……

 私は、護衛として生きてきました。

 誰かを守ることが、私の全てでした。

 でも……あなたと出会って……

 初めて、自分の幸せを考えるようになりました。

 あなたと一緒にいたい。

 あなたを守りたい。

 そして……あなたに守られたい。

 どうか……私を妻にしてください」


村長は、満足げに頷いた。


「では――二人の結婚を、ここに認める!」


その瞬間――。


グレンホテルの屋上から、巨大な鐘が鳴り響いた。


ゴォォォォォォォォン……!


村中に響き渡る祝福の音。


村人たちが歓声を上げた。


「おめでとう!!」

「すすむ様ー!!」

「マリーさーん!!」

「末永く幸せにー!!」


花びらが舞い、音楽が鳴り、笑顔が広がる。


すすむとマリーは、そっと抱き合った。


「マリー……これからよろしく」


「はい……すすむさん……」


★★★★★


式が終わると、広場は祝宴の場となった。


鍛冶屋集団が作った特製の酒樽が開かれ、

 市場の店主たちが料理を振る舞い、

 子どもたちが踊り、

 音楽隊が陽気な曲を奏でる。


すすむとマリーは、村人たちに囲まれ、祝福の言葉を浴びた。


「すすむ様、マリーさん、おめでとう!」

「二人とも、本当にお似合いだよ!」

「幸せになってね!」


マリーは、胸がいっぱいになった。


(こんなに……祝ってもらえるなんて……)


すすむは、マリーの手を握りながら言った。


「マリー……俺たち、幸せになろうな」


「はい……」


少し離れた場所で、ギルバートとボルトンが酒を酌み交わしていた。


「やったな、ボルトン」


「ええ……本当に……よかった……」


ボルトンは、涙ぐみながら笑った。


「マリー……幸せになりなさい……」


「すすむも……ようやく結婚できたな」


二人は、杯を掲げた。


「すすむとマリーに――乾杯!」


「乾杯!」


★★★★★


祝宴が終わり、村が静けさを取り戻した頃。


すすむとマリーは、グレンインのバルコニーに立っていた。


夜空には星が瞬き、村の灯りが優しく揺れている。


「マリー」


「はい、すすむさん」


「これから……いろんなことがあると思う。

 商業ギルドのことも、村の発展も……

 でも、俺は……あなたと一緒なら、どんなことでも乗り越えられる」


「私も……同じ気持ちです」


二人は、そっと寄り添った。


夜風が優しく吹き、花の香りが漂う。


すすむは、マリーの手を握りながら言った。


「マリー……愛してる」


「すすむさん……私も……愛しています」


その言葉は、静かな夜に溶けていった。


こうして、すすむとマリーの新たな人生が始まった。


グレン村は、二人の幸せを祝福し、

 これからも共に歩んでいく。

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