第118章 結婚式本番 ― グレン村史上最大の祝福
第118章 結婚式本番 ― グレン村史上最大の祝福
結婚式当日の朝。
グレン村は、まだ太陽が昇りきらないうちから、ざわざわとした活気に包まれていた。
村の広場には、色とりどりの布が張り巡らされ、花で飾られたアーチがいくつも並び、
鍛冶屋集団「鋼の匠」が徹夜で仕上げた巨大な鐘が、グレンホテルの屋上に吊るされている。
市場の店主たちは、祝いの屋台を準備し、
子どもたちは花びらを籠に詰めて走り回り、
村の女性たちは、マリーのために作った花冠を手に、そわそわと待ち構えていた。
――今日は、すすむとマリーの結婚式。
村全体が、まるで自分たちの家族の結婚式のように喜び、祝福し、準備に奔走していた。
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グレンイン二階の一室。
マリーは、窓から差し込む柔らかな朝日で目を覚ました。
(……今日、私は……花嫁になる)
胸が高鳴る。
緊張と喜びが入り混じり、心が落ち着かない。
鏡の前に座り、そっと自分の頬に触れる。
(こんな日が来るなんて……思ってもいなかった)
王女の護衛として生きてきた日々。
自分の幸せより、誰かを守ることを優先してきた人生。
恋愛など、自分には縁のないものだと思っていた。
だが――。
(すすむさんは……私を選んでくれた)
その事実が、胸の奥で温かく光っていた。
ノックの音がした。
「マリーさん、入ってもいいですか?」
「リリア……どうぞ」
リリアが、村の女性たちを連れて入ってきた。
「さぁ、花嫁さん。
今日の主役なんですから、綺麗にしないと!」
「えっ……そんな……」
「遠慮しないでください。
村のみんなが、マリーさんのために準備したんですから」
マリーは、胸が熱くなった。
女性たちは、手際よくマリーの髪を整え、
白いドレスを着せ、
花冠をそっと頭に乗せた。
「……綺麗……」
リリアが思わず呟いた。
「本当に……お姫様みたいです」
「そ、そんな……」
マリーは照れながらも、鏡に映る自分を見つめた。
そこには、護衛ではなく――
一人の女性としての自分がいた。
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一方その頃、すすむはグレンホテルの一室で、ギルバートとグラントに囲まれていた。
「ほら、じっとしてろ。
ネクタイが曲がってる」
「ギルバート……そんなに引っ張るなよ……!」
「新郎がだらしない格好で出てきたら、村の恥だぞ!」
「いや、村の恥って……」
グラントは笑いながら言った。
「でも、すすむさん。
本当におめでとうございます」
「ありがとう、グラント」
すすむは、鏡に映る自分を見つめた。
礼服に身を包んだ自分は、どこか見慣れない。
だが、胸の奥には確かな決意があった。
(マリーを……幸せにする)
それだけは、揺るぎない。
ギルバートが、すすむの肩を叩いた。
「お前なら大丈夫だ。
マリーを幸せにできる」
「……ありがとう」
「さぁ、行くぞ。
村中が待ってる」
★★★★★
広場には、すでに村人たちが集まっていた。
鍛冶屋集団のドワーフたちは酒樽を抱え、
市場の店主たちは祝いの料理を並べ、
子どもたちは花びらを手に、そわそわと待っている。
村長が壇上に立ち、声を張り上げた。
「皆の者!
これより、すすむ様とマリーさんの結婚式を執り行う!」
「おおおおおおおおっ!!」
歓声が広場を揺らした。
村長は続けた。
「この二人は、村のために尽くしてくれた。
ホテルを作り、市場を整え、村を守り……
そして、互いを守り合ってきた。
今日、二人が夫婦となることは、村にとっても大きな喜びじゃ!」
村人たちは、すすむとマリーに向けて拍手を送った。
音楽隊が演奏を始めた。
子どもたちが花びらを撒きながら、花の道を作る。
その先に――
白いドレスを纏ったマリーが現れた。
「わぁ……」
「綺麗……!」
「まるで本物の姫様だ……!」
村人たちが息を呑む。
マリーは、緊張で足が震えそうになりながらも、
ゆっくりと花の道を歩いた。
(すすむさん……)
視線の先には、礼服姿のすすむが立っていた。
すすむは、マリーを見た瞬間、胸が締めつけられた。
(……綺麗だ)
言葉にならないほど、心が震えた。
マリーが近づくと、すすむはそっと手を差し出した。
「マリー……来てくれてありがとう」
「すすむさん……」
二人は手を取り合い、微笑み合った。
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村長が二人の前に立った。
「では、誓いの言葉を述べてもらおう」
すすむは、深く息を吸った。
「マリー。
俺は……あなたに守られてばかりだった。
でも、これからは……
俺があなたを守りたい。
あなたと一緒に生きていきたい。
どうか……俺の妻になってください」
マリーの目に涙が浮かんだ。
「すすむさん……
私は、護衛として生きてきました。
誰かを守ることが、私の全てでした。
でも……あなたと出会って……
初めて、自分の幸せを考えるようになりました。
あなたと一緒にいたい。
あなたを守りたい。
そして……あなたに守られたい。
どうか……私を妻にしてください」
村長は、満足げに頷いた。
「では――二人の結婚を、ここに認める!」
その瞬間――。
グレンホテルの屋上から、巨大な鐘が鳴り響いた。
ゴォォォォォォォォン……!
村中に響き渡る祝福の音。
村人たちが歓声を上げた。
「おめでとう!!」
「すすむ様ー!!」
「マリーさーん!!」
「末永く幸せにー!!」
花びらが舞い、音楽が鳴り、笑顔が広がる。
すすむとマリーは、そっと抱き合った。
「マリー……これからよろしく」
「はい……すすむさん……」
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式が終わると、広場は祝宴の場となった。
鍛冶屋集団が作った特製の酒樽が開かれ、
市場の店主たちが料理を振る舞い、
子どもたちが踊り、
音楽隊が陽気な曲を奏でる。
すすむとマリーは、村人たちに囲まれ、祝福の言葉を浴びた。
「すすむ様、マリーさん、おめでとう!」
「二人とも、本当にお似合いだよ!」
「幸せになってね!」
マリーは、胸がいっぱいになった。
(こんなに……祝ってもらえるなんて……)
すすむは、マリーの手を握りながら言った。
「マリー……俺たち、幸せになろうな」
「はい……」
少し離れた場所で、ギルバートとボルトンが酒を酌み交わしていた。
「やったな、ボルトン」
「ええ……本当に……よかった……」
ボルトンは、涙ぐみながら笑った。
「マリー……幸せになりなさい……」
「すすむも……ようやく結婚できたな」
二人は、杯を掲げた。
「すすむとマリーに――乾杯!」
「乾杯!」
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祝宴が終わり、村が静けさを取り戻した頃。
すすむとマリーは、グレンインのバルコニーに立っていた。
夜空には星が瞬き、村の灯りが優しく揺れている。
「マリー」
「はい、すすむさん」
「これから……いろんなことがあると思う。
商業ギルドのことも、村の発展も……
でも、俺は……あなたと一緒なら、どんなことでも乗り越えられる」
「私も……同じ気持ちです」
二人は、そっと寄り添った。
夜風が優しく吹き、花の香りが漂う。
すすむは、マリーの手を握りながら言った。
「マリー……愛してる」
「すすむさん……私も……愛しています」
その言葉は、静かな夜に溶けていった。
こうして、すすむとマリーの新たな人生が始まった。
グレン村は、二人の幸せを祝福し、
これからも共に歩んでいく。




