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覚醒-05

フジさんは満面の笑みで俺を見つめていた。


「ちょっとぉ・・・何か気の利いた事くらい言いなさいよぉ・・・」

「あ、いや、ごめん!フジさんは戦友というか親友というか・・・そんな風に思っていたから、意表を突かれたんだよ。」

「ふふ、良かった。一応、大事な人とは思っていてくれたんだ。」

「当たり前だろ?色々と相談にも乗ってもらったし、何より命の恩人様だ。」


初めて会った時に、レーザー短銃を石で弾き飛ばしてくれたフジさんを思い出す。


「じゃあ、ちょっとお願いしていいかな?」

「おう、何でもどんとこい!」

「右腿のポケットに軍エリア入場用のカードキーがあるから取ってもらえる?」

「分かった。」


言われた場所を探っているとカードらしきものが指に触れた。


「いやん!コウのエッチィ!」

「で、これで何をすればいいんだ?」

「くっ、スルーされた・・・」

「もう慣れてるからな。」


いつまでもこんなやり取りをしていたい。

俺は涙をこらえた。


「わたしの修理が終わるまで、コウに代理をしてもらいたいの。具体的な内容は伝えきれないから、部屋の端末を見てくれるかな?パスワードは**********だよ。」

「分かった。他に何かして欲しい事はあるか?」


フジさんは少し逡巡した後、にまっと笑った。

きっと何か悪だくみをしている。

俺にはよく分かるんだ。


「あと3つあるけどいいかな。」

「もちろんだ。俺が出来る事なら何でもしてやるぞ。」

「じゃあ、1つ目は・・・わたしのスリーサイズを覚えてもらおうかな!」


俺は膝から崩れ落ちた。

さっきは、もう慣れてると言ったが、やはりフジさんには敵わないらしい。


「くっ、ずいぶん懐かしいネタだな・・・」

「いいじゃーーーん!何でもしてくれるんでしょ?」

「分かったよ。ちゃんと覚えておくよ。」

「やった!じゃあ教えるね!B99.9、W55.5、H88.8だよ!」

「おい・・・そりゃ盛り過ぎだろ!」

「うっさいわねぇ。覚えてくれる約束でしょ?」

「はいはい、ちゃんと覚えたよ。」

「絶対に忘れちゃダメだからね?」

「特務隊舐めんなよ?」

「あはは、そうだったね。じゃあ、次は2つ目のお願い!」

「今度はまともなのを頼むぞ。」

「うん・・・形見を・・・受け取って欲しいの。」

「形見・・・か。分かった。」


ガシャンと音がしてフジさんのレーザーキャノンから何かが落ちた。


「わたしはアクセサリーとか持ってないからねぇ。こんな物で悪いんだけど受け取ってくれるかな?」

「あぁ、もちろんだよ。」


地面に落ちたそれを拾って、フジさんを見ると何か様子が変だ。

何かに怯えているような表情をしている。


「フジさん、大丈夫か?まさか、もう時間が?」

「ううん、何もしなかったら後5分以上は生き・・・稼働できるよ。」

「稼働なんて言うなよ・・・フジさんはちゃんと生きてるよ・・・」

「ありがとう、コウ。やっぱり優しいね。」

「俺は・・・優しくなんかない。」

「ううん。わたしに生きてるって言ってくれた。その優しさに勇気を貰えたから、言うね。3つ目のお願いを・・・」

「あぁ・・・」

「キスして欲しい・・・」

「・・・あぁ、いいよ。」


俺は頭部ユニットを持ち上げた。

そして、二人の唇が近付く。


「あっ!!!」

「のわっ!どうした?」

「ベロチューはダメよ?今のわたしだと、たぶん感電するから!」

「・・・・・・・・・」


この人は・・・全く・・・

もう有無を言わせずキスする事にした。


チュッ。


その瞬間、フジさんの体から全ての力が抜けた。


「おい!フジさん、フジさんっ!!!」


どんなに呼びかけても、身体を揺すっても、フジさんは何の反応も返してくれなかった。

さっき5分以上って言ったじゃないか・・・

なんでもう死んじゃうんだよ・・・

さっきのに力を使い果たしたのか?

そんな事よりもっと話していたかったのに・・・


「お亡くなりになったのですか?」

「あぁ。」

「残念です。・・・とても残念です。」

「あぁ・・・亡骸をシェルターに連れて帰ろう。」

「はい。」


俺は壊れた特務改を背負うと、フジさんの亡骸をお姫様だっこした。

生きてたら、きっとリクエストされるだろうから。


シェルターに向かって歩き始めると、背後で音がした。

ギギギ・・・ガシュン、ガシュン


「コウ、多脚重戦車が再起動しました。」

「あぁ、そうみたいだな。」

「のんびりしている時間はありません。コイルガンだけではあの機体に対処できません。」

「大丈夫だ。問題ない。」

「その台詞には不安しか感じられません。」

「もう主砲は潰してある。」

「しかし・・・回避!回避!回避!」


多脚重戦車が猛スピードで突っ込んできた。

キットが緊急モードで回避を指示している。

普通ならこのまま踏みつぶされるだろう。

しかし多脚重戦車は、俺から1メートルほどのところで見えない壁にぶつかったかのような音を立てて弾き返された。


「潰れろ。」


グシャッ!

多脚重戦車がまるで蛸せんべいのように平らに潰れた。


「コウ、一体何が起きたのですか?」

「あぁ、”魔法”だよ。」


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