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日和村事件 記録終了

 これで今作も完結となります。これは前回同様、記録の末尾部分ですので、あまり大層な事は語られていません。此処まで有難う御座いました。

 以上が日和村で発生した一連の生物兵器事件の記録である。この視点からだと発症者が続出し、パニックになった村の様子は全く描かれなくなる。しかし、前回の屍生島の事件と本件の核心に迫る貴重で重要な視点である。そしてこの私自身が今回の動きの中で波多野氏との関わりが長かったという事もあり、彼女の視点を借りて事件を記録することにした。

 此処まで読んで下さった皆さんは事件の外形が粗方解ったのではないだろうか。犯人である佐伯雅孝氏が屍生島奇譚の主役であった葉山氏の同僚であり、波多野氏の兄であったという事は全くの偶然である。封鎖された環境の中で何が起こったかを無関係者である私がが知る由は無い。しかし今回は島で起きた時よりも私が関与している。私も全くの無関係者ではなくなった訳だ。

 因みに今回の記録には日付に関する記述は殆どないが、実際は屍生島奇譚の一か月ほど後である。この間、家族を失った波多野氏の苦しみは軽々しく解るなどとは言えない大変苦しい物であったと推察する。彼女に失礼な態度を取って、近付こうとした不躾な私に最終的に彼女は心を開き、今回の物語が書ける程度の情報を話してくれた。改めて感謝を述べたい。


 あの後の事を少しだけ話すと、結局、佐伯雅孝は現在も逃亡中である。私と波多野氏の攻撃に耐え、尚も逃げ続ける異常な程の生命力、これはウイルスの力によるものだと私は推測している。創傷などを修復し、身体の機能を著しく向上させる効果がウイルスにあるのだろう。相変わらず憶測でしか物を言えない自分が腹立たしいが、それは各種報道機関同様、不必要な混乱を避け、未確認の現象に対する断定を避けるためである。


 私と波多野氏は研究壕の資料を出来るだけ、持ち出し、知り合いの京都の教授に解読を依頼した。彼は私と別の事件で協力関係に当たった事があり、専門は脳科学や心理学だが、京都大学の医学部の出身で、ドイツ語が堪能である事から今回の案件も依頼した。興味深いと無料で注文を引き受けてくれた研究者の鏡たる彼にも此処で感謝を述べたい。

 そして文中で研究壕という名称をつけて紹介した例の山奥の廃病院の様な地下施設であるが、これは先の大戦における旧日本軍の極秘実験施設であると解った。設備や書物は大分古いらしいが、ウイルスを培養することは出来たらしい。佐伯雅孝も波多野信太郎も優秀な細菌学者である。彼等の手によって改造が施されているのかもしれない。もう少し詳細に調査したいところだが、残念ながら、警察が地域全体を封鎖してしまった。感染者が出て、一時期パニックに陥った日和村だったが、蔓延を防ぐことが出来、全体の対応も早く、ウイルスが伝染することは無かった。とはいえ、22人が死亡した。死亡及び感染原因は作中での波多野氏の推測通り例の饂飩だったらしい。郷土料理を祭りで村全体に配給する伝統が仇となってしまったのは悲劇であるとしか言いようがない。この村も先の島同様、無期の封鎖が決定され、香川県渾身の過疎対策のモデル地域は遭えなく発展の幕を閉じた。


 その警察は前回同様、これを暴徒化事件として処理した。処理できる規模でない事から混乱が相次ぎ、警察の対応に疑問を抱く声も多かったが、日本の警察がここまでの事に対応できている時点で私は感服している。上から目線という訳ではないが、今回は屍生島の事件よりも諸機関の対応が早かったと評価している。

 生存者は警察から事件の事は外部に漏らさないようにと言われているが、恐らく直ぐに漏洩するのではないだろうか。村人の殆どが助かったのは、前回と比較し、感心するべきだが、22人という死者数は日本の事件の中ではかなり多い。また今も悪夢に苛まれ、地獄の日々を送り続ける遺族の方々の前で喜びという感情は湧かない。波多野氏にもまた、心労を強いてしまった部分が多くあった。最終的に彼の義父母は助かったが、彼女を此処まで巻き込んでしまったのは私の責任でもある。後日改めて謝罪すると、

「あの私がロッカーに隠れていた時の瓶のお礼だと思って協力するわ。それにこれは私の問題でもあるのよ。此処まで来てもう戻ろうなんて言えない。」

 と明るく答えてくれた。これは彼女の強さでもあるのだろう。家族を喪失した悲嘆の中でも強く生きようとする彼女の姿勢に私は感動を覚えた。私は事件を必ず解決に導くと彼女の前でも誓った。これは今回も変わらない。此処も憶測で大変申し訳ないが、事件は確実に核心と収束へと向かっていると私は信じている。この記録はその過程のキーポイントである。次回の記録が恐らく最後の『支配ウイルスに関する記録』になるだろう。次回はウイルスの仕組みを解明するところから描いていきたい。


 今作も結構急いで書いていたので、誤字脱字、不適切表現が多いかと思われます。申し訳ありません。どうにか訂正したいのですが、注意力の限界が来ています。この物語は次回の第3部に繋がっています。此処まで読んで頂ければお分かりになるかと思いますが、次回で支配ウイルスシリーズ完結です。ただ、まだ一話も書いていないので次回をいつ投稿できるかは未定です。どうか気長にお待ちください。一先ず、此処まで読んで頂いた方、前作を読んで頂いた方、誠に有り難う御座いました。お疲れ様です。

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