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セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
1章

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11

 四時間目の体育の授業が終わった昼休憩。

 すっかり打ち解けた(?)涼宮透すずみやとおる蓮見翔はすみしょうは一緒に昼ご飯を教室で食べていた。当然、話題になるのは先ほどのサッカーの話だ。


「うっそ! じゃあマジでサッカー引退してたの?」

「引退と言うほどじゃないけど……。小学校の時にクラブでやってて、中学ではやらなくなったんだ」

「なんでさ! あんなに上手いのに!」

「事情があったんだ。それに、俺より上手い奴なんてごまんといる。さっきは体育の授業だし、相手が素人だから出来たんだ。実際の大会レベルの試合じゃこうはいかない」


 向かい合わせでそう語る透は、母親が作ってくれたお弁当をもぐもぐと咀嚼しながら言う。

 そんな透に対して身を乗り出す勢いで、翔はいいやと首を横に振る。


「俺にはわかる。お前には才能がある。この俺が保証する」

(いったい何を根拠に……)


 目を瞑りながら腕を組み、うんうんと頷くようにして言ってくる翔に、透は唖然とする。


「レベルが違いすぎるんだ。中学三年間のブランクだけでも大きいのに、高校サッカーにもなればそれは顕著だよ」

「そんなことない! 高校からサッカー始めるやつだっているんだぞ! 俺みたいに!」

「お前がかよ!」


 思わず大声で突っ込んでしまい、クラスメイト中の視線をもろに浴びる。

 とたん、恥ずかしく、透は視線をぐっと落とす。

 さっきの体育の授業までは散々歴戦のプレーヤー感を出していたはずだが。しかし、高校からサッカーを始めたのであれば、なるほどよくわかるレベル感だったのと同時に――。


「……」

「なんだ、顔をじっと見て! なんかついてる?」

「い、いや、なんでも」


 つい思ったことを黙り込み、透は再びご飯を頬張る。


「……なんで、高校でいきなりサッカー部に?」


 咀嚼した食べ物と声を喉の下に落とし、やや落ち着いた声音で、透は翔に聞く。


「楽しそうだったから」

「……」


 さもそれが当然かのように、翔は迷いなく言ってくる。


「その、いろいろと考えなかったのか……? いきなり高校から挑戦って……」

「やってみないとわかんないだろ。それに、さっきの試合じゃ実際に点決めた! 最後は盛大に宇宙開発しちゃったけどさ」


 たはは、と屈託のない笑みを浮かべ、翔は言ってくる。

 

「あれは時が止まったな」

「わ、悪かったな……。めっちゃいいパスしてくれたのに、決められなくて、ごめん……」


 至極申し訳なさそうに、心の底から頭を下げて事を言ってくる。

 そんな風に喜怒哀楽がはっきりしすぎている翔に、透も申し訳なくなってくる。


「い、いや。別に全然、大丈夫だよ」

「本当か?」

「うん。ただの体育の授業だったんだし」

「じゃあサッカー部、入ってくれるのか?」

「いや、なんでそうなる」


 話の着地点が意味不明すぎて、透は箸でつかんでいた唐揚げをぽろっと落とす。

 翔は両手を合わせ、この通りと頭を下げてくる。


「頼む涼宮! 俺、お前とだったらてっぺん目指せそうなんだ!」

「今の会話の流れでどうしてそうなるんだ……」


 透はため息交じりに呟く。ここは何よりも翔のためにも、現実を教えてあげた方が彼のためにもなると思い、透は論理的に語り出す。


「俺は中学時代を言わば怠けた半端な存在。そして一方は高校からサッカーに挑戦する無垢な存在」


 透は自身と相手を交互に指さしながらそう前置きをして、


「サッカーは、子供のころからの反復運動がそのまま技術の土台になるスポーツなんだ。キックの正確性、トラップの瞬間の脱力、ルーズボールに対する空間認識能力。これらは何万回、何十万回とボールを触って初めて身体に染みつくものだ。小学校、中学校と9年間その積み重ねをしてきた人間がひしめく世界に、高校からの3年間だけで追いつくことがどれだけ異常なことか。1年分を追い上げる間に、みんなもまた1年分、先へ進む。ブランクどころか、スタートラインの時点で絶望的な格差があるんだ」

「お、おおう……?」


 話の途中から頭にクエスチョンマークを浮かべて、わかっているのかわかっていないのかこちらも良くわからない反応をする翔。


「つまり、俺はもう手遅れ。蓮見は伸びしろはあるかもしれないけど、厳しい挑戦になるだろう」

「それってつまり、めっちゃ伸びしろあるって事じゃん!」

「……そう、だすね」


 思わず、変な相槌を打ってしまう透。眉がぴくぴくと動いてしまう。

 試合中からも感じていたが、この底なしの自信とポジティブ思考は、こちらがいくら現実を伝えたところできっと、変わることはないのだろう。


「じゃあ部活、どうするんだ? まだどこも入ってないんだろう?」


 今度はまるで親のように、こちらを心配してくる翔。先ほどの性格に加えて、お人よしもあるようだ。


「……とにかく、サッカー部以外で、どこか適当なところに……」

「それでなんでサッカー部を除外するんだよー?」

「いや、だからそれは……」


 そうまで言うと、思わず言葉に詰まる。翔の言う通り、わざわざサッカー部を除外する意味とは?それこそ中学の卓球部だって、今の翔と同じく未経験から入って、しかし中途半端に終わった。

 高校に入って同じような無気力な三年間を、過ごすのだろうか。

 いや、今度の三年間こそ、部活で昔のように何かに真剣に打ち込んで――。

 そこまで思い立ってようやく、再び透は翔を見る。


(同じ、か……)

「?」


 翔は両手で持った菓子パンをもぐもぐと頬張りながら、透をじっと見つめ返す。


「この後ちょっといいか?」


 透の口から出た言葉に、翔はごくりと食べたものを飲み込んで、笑顔で頷く。


「おう!」

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