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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第9話 離れた温もり

仕立て屋で洋装のオーダーを頼み終わり―――

2人は飲食店の連なる通りに来ていた

外は暗くなっていたが夕飯時で人で賑わっている


「―――よし、着る物も揃ったし何処かで食事でもしよう」


「え?いいんですか?」


菊理は驚いたように嗣臣を見上げる


「ああ。夕食はいらないと使用人には伝えてあるからな。好きな所を選べ」


「んー………と言っても、どうしようかな?」


菊理がお店を選んでいたその時、向かいから来た男性と彼女の身体がぶつかった


「わっ………!」


衝撃で菊理はよろめき思わず嗣臣の腕を離してしまう


「嗣臣さ―――」


必死で呼び止めようとしたが、人混みの影響で声はかき消され、嗣臣も気付くことなくそのまま姿が見えなくなってしまった


(どうしよう。はぐれちゃった)


見知らぬ場所で心細くなりつつも、必死で人混みをかき分けなんとか抜け出す事に成功した


ここからどう嗣臣を見つけようかと考えていた時、彼女の視界の端に何かが映った


「ん?」


そこにいたのは小さな子供だった

裏通りに繋がる小道にぽつりと佇んでいる


(子供?あんな所に?)


疑問に思っていると、子供は突然裏通りに向かって走り出してしまった


「え……!?あっちって危ないんじゃ!?」


―――確か裏通りは結界が張っていないはず

嗣臣の言葉を思い出した菊理は思わず駆け出し、子供の後を追った


「はぁ……はぁ……」


人の賑わいが遠くなっていく中、薄暗く狭い小道を菊理は臆することなく駆け抜けて行く


走り続けていると、繁華街程では無いが開けた道に出た

どうやら裏通りに出たようだ


「……さっきの子は?」


辺りを見渡すと、数メートル離れた場所に先程の子供がポツンと立っていた


「……君!どうしたの?」


菊理は声を張り上げ子供に近づくと、子供が振り返りこちらを見る


「ここは危ないよ?私と一緒に戻ろう?」


そう言って手を差し伸べようとしたその時

突然全身に悪寒が走った


(え?何……?)


突然の異変に思わず立ち止まった瞬間―――

子供がニヤリと笑った

そしてその口は異常なまでに大きくなり、バギバキと音を立てて身体を変異させ、子供の姿から手足の長い化け物へと変貌を遂げた


そして長い腕を振り上げ、鋭い爪を菊理に振りかざす


「――――っ!!」


しかし鋭い爪が菊理の身体に触れそうになったその瞬間、急に腕が後ろに引っ張られ強い衝撃を感じた


「わっ……!」


衝撃の次に来たのは温かな温もりだった

菊理が恐る恐る見上げると、そこにいたのは嗣臣だった


彼が既の所で菊理と化け物を引き剥がしたのだ


まるで菊理を守る様に片腕で抱きしめている


「嗣臣さん!」


菊理が安堵の声を滲ませたその時、化け物が跳び上がり襲いかかってきた


猫柳(びょうりゅう)!」


嗣臣がそう叫ぶと、影から突然何かが現れ化け物をはじき飛ばした

よく見ると顔と身体は猫、しかし竜のような翼と太い尾を持ち、美しい紫の毛色の魔物の様なものが現れ、怪物の攻撃に応戦している


「俺の妖獣だ。心配するな」


低く落ち着いた声が上から降ってくると同時に、抱き留めている腕の力が強くなった 


その力強さと優しさに、胸が高鳴なり顔が熱くなるのを感じで戸惑う


しかし、ふとその手が微かに震えているのを菊理は気が付いた


(あ……)


一度大切な人を失った経験のある彼だ

まるでまた失うかもしれない恐怖を感じているかのようだった


(………心配かけちゃったな)


「ギィィィィィィィッ!!」


「猫柳。離れろ」


手短に指示を出した後、嗣臣は化け物に手をかざし力を込める

すると影がうねるように広がり、そこから無数の鋭い針が形成された

そして握り潰すように拳を握ると、鋭い針が化け物に容赦なく突き刺さった


「ギィィィィィィァァァァァァッ!!!!」


化け物は断末魔をあげ、その場に倒れ動かなくなり、再び裏通りに静寂が戻った


「………穢鬼は消滅した。もう大丈夫だ」


そう言われ菊理は顔を上げ、ゆっくり辺りを見渡す


「……さっきのが穢鬼……?」


恐る恐る尋ねると、嗣臣は小さく頷いた


「ああやって擬態しては黄泉人を誘き寄せ喰らう。奴らは小賢しいから用心しろ」


「すみません……はぐれて馬鹿みたいに罠に引っかかっちゃって……」


自身の危機管理の薄さに悔いていると、嗣臣は首を横に振った


「いや、こちらもはぐれたのに気づかなかったのが悪かった。すまない」


逆に謝られてしまい、菊理は更に罪悪感がましてしまう

すると抱きとめられていた腕が緩み、嗣臣が

離れた


「ここに長居は良くない。早く繁華街の方に出よう」


そう言われ菊理が歩み寄ろうとした時だった


「はい!………あっ!痛っ!」


急に左足首に鈍い痛みが走った


「どうした」


「足が………」


上手く立てず壁に寄りかかりながら左足首を抑える

どうやら嗣臣に引っ張られた時に足首を捻ってしまったようだ


「捻ったか」


嗣臣がボソリと呟いた数秒後、急に菊理の身体がフワリと浮いた


「わっ!!」


嗣臣は菊理を抱きかかえたのだ

そして当然のようにそのまま歩き出す


「予定変更だ。医者に見せる」


「ちょ!下ろして!下ろしてください!!」


あまりの恥ずかしさに菊理は慌てふためく


「それでどうやって歩くつもりだ?」


「な、なんとか歩きます!」


「却下する」


しかし嗣臣は菊理の意見を聞き入れず、そのまま大通りへと向かう


「さすがに恥ずかしいんですけどぉ!!」


菊理の必死の叫びが小道にこだました


こうして2人の初デートは幕を閉じたのであった

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