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【絶対に許さない!】結婚間近の恋人を奪われ、さらに冒険者パーティーから追放、貴族の圧力で街にいられなくなった。お前らの血は何色だ!剣聖ライン=キリトの復讐は始まる!  作者: 山田 バルス
第一章 ライン、追放された剣聖

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第12話 ライン、剣聖の力を手に入れろ!

 ライン、剣聖の力を手に入れろ!



 朝の陽光が隠れ里フィエルに差し込むころ、ラインは試練の洞窟から戻ってきた。


 村人たちは彼の帰還を祝福し、アルテイシアは泣きそうな笑顔で迎えた。


 「よかった……本当によかった……!」


 「ただいま。……ちょっと疲れたけど、何とかなったよ」


 その夜、村の集会場で静かに焚き火が焚かれた。村人たちは感謝を込めて、ささやかな宴を開いた。


 だが、ラインの心はすでに次の段階を見据えていた。


     ◆


 翌朝。


 小高い丘の上、森を見下ろすような場所で、ラインは一人立っていた。


 「……ステータスオープン」


 小さく呟いた瞬間、彼の視界に淡く浮かび上がる光の文字があった。


 【ステータス】

 名前:ライン=キルト

 レベル:12

 HP:327

 MP:52

 攻撃:121

 防御:82

 速さ:110

 幸運:120


 そして、その下に――


 【スキル】

 ・剣聖(Active)

 ・見切り Lv1

 ・瞬歩 Lv1


 目を見張るライン。これまでただの剣士でしかなかった自分が、確かに『剣聖』として認められている。


 「……これが、剣聖の力……」


 胸の奥が熱くなる。だが同時に、その力に見合う自分にならねばならないという責任もまた感じていた。


 (今のままじゃダメだ。まだまだ……強くならないと)


 ラインはステータスウィンドウを閉じると、森の中に足を踏み入れた。


 修行だ。力を得たからといって、すぐに強くなるわけではない。


 肉体と精神、剣技と戦術、そして心――すべてを鍛え上げねば、この力を正しく使いこなせはしない。


     ◆


 村の片隅にある古い修練場。木人、藁人形、倒木を使った簡素な施設だったが、ラインには十分だった。


 「……はッ!」


 剣を振るたびに、風が唸り、空気が裂ける。


 一振り、一振りに、迷いのない意思を込めた。


 〈剣聖〉の力を、使いこなすには“技の重ね”が必要だった。


 最初に現れたスキル“見切り”は、敵の攻撃を一瞬だけ遅く感じるような感覚をもたらす。


 “瞬歩”は、足元が軽くなり、短距離を一瞬で移動することができた。


 だが――その制御はまだ未熟。


 一度、瞬歩を誤って木に激突し、額にこぶを作ったときは、アルテイシアに心配と笑いを同時にもらった。


 「もう……無茶しすぎなんだから」


 「いや、その、想像以上に速くて……」


 彼女の優しい手で手当てを受けながら、ラインは苦笑した。


     ◆


 日々は流れ、ラインは村の朝に溶け込むようになった。


 村人たちは、彼の修行の様子を見守り、ときに声援を送ってくれた。


 農具を使って筋力を鍛え、薪割りで瞬発力を養い、森での狩りで感覚を磨いた。


 ときに、村の若者たちと模擬戦をすることもあった。


 ラインの剣は、日々鋭さを増していく。


 その様子に、ユイナも小さくうなずいていた。


 「ふむ……見込みはあるの。まだ未熟じゃが、土台はよい」


 「俺は……まだまだ、これからだと思ってます」


 「そうじゃ。それでよい。強さとは、歩み続ける者の先にある」


     ◆


 ある日、アルテイシアがそっとラインに言った。


 「最近のあなた、少しだけ顔つきが変わったわ。なんていうか……頼もしくなった」


 ラインは戸惑いながらも、うれしそうに頬をかいた。


 「……そうかな?」


 「ええ。私は、今のあなたの剣も、心も、すごく好き」


 その言葉に、ラインはただ静かに微笑んだ。


 守るべきものがあるから、強くなれる。


 力は、誇示するためではない。


 誰かのために使う――それが“剣聖”という存在なのだ。


 そしてラインは、さらなる力を求めて、今日も剣を振るい続けた。


 剣聖の道の先に待つものが、何であれ――彼は、もう逃げはしなかった。

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