最強ギルドに入りたいだ?お断りだ
「最強ギルド✝︎幻影協会✝︎に入れてください! お願いします!」
一人の青年がアジトの扉を開けて自信満々にこう叫んだ。彼は鍛え抜かれた装備に身を包み、キラキラと目を輝かせていた。
「──帰ってくれ。ここはお前のような雑魚が入れるパーティじゃねえんだわ」と俺は虚ろな目をして彼に言った。
「な!僕は雑魚なんかじゃないです! こう見えてもSクラスの冒険者なんです! レベルもカンストしてます!」と彼が言い切った瞬間、俺は一瞬で自称Sクラスの冒険者の背後に回り込む。彼は俺の動きを追いきれてはいなかった。そして首元に手刀を突きつける。身体能力の数値が限界を超えている俺の体は全身凶器だ。
「俺たちは10人全員がSSSクラスだ。そして今はメンバーは募集していない。わかったら狩場に戻ってゴーレム狩りの続きでもやるんだな」
「ひ、ひい! ごめんなさい」
そう言われて彼は肩を落とし落ち込んでいた。それなりに上級者であろうSクラスの冒険者である彼はスゴスゴと去っていく。俺はそんな彼の背中を見送った。こんなことは毎日なのでもう何とも思わない。
「マスター、今のヒヨッコちゃん誰〜? 初心者には優しくしないとだよ?」
と、うちのパーティ唯一のヒーラーであるアリサが言う。男なら誰でも気になるようだな。さすがは男に貢がせて成り上がった悪女。
「あ? 知らねえよ、なんで俺が初心者に構わなきゃいけねえんだよ」
ぶっきらぼうに断りはしたが最低限の配慮はしたつもりだ。俺たちのパーティに半端者が加わったところで役割も居場所もない。
「かわいそうじゃねえか! 支援してやれよー!」
「うるせー、じゃあお前が行って来いよ」
「深淵に潜む煉獄の業火よ、不遜なる摂理に……」
「厨二病黙れ!」
次々の飛び交う軽口、ヤジ、もううんざりだ。
目的を失った俺たちはやることも無くダラダラ過ごす。いつからかこんな感じになっちまった……
「やることないから覚醒ポーション打ちまくってハイになろーよー!」
「カイザードラゴンの首根っこ捕まえてきて始まりの町に放り込もうぜ! みんなパニックになっておもしろそうだろ!」
「黒き漆黒の炎を纏いし虚ろの我が身に帰りし深淵の灰燼と化し……」
「腰が痛いねえ、誰かもんでくれんかね?」
俺は限界だと思った。
「おい、お前ら! もうやめるぞ! 終わりだ! いや終わりの始まりだ!」
俺が威勢よく振り絞った声がアジトに響く。久しぶりにこんな声出したな。そうだ、終わらせよう。終わらせてやり直そう。
「どうゆうことだよ?」
「全員で別の世界に行くんだよ!異世界転移ってやつだ!実は女神からいい話を聞いてるんだ」
「──っ! マジかよ、てか他の異世界ってそんな簡単に行けんのか」
「女神たちの作ったシステムでこことは違う異世界に転移できるらしい。俺たちはもうこの世界を渡り尽くした。もういいだろう! いつまでくすぶってるつもりだよ! ここらで次の世界に行こうぜ! 俺たちなら次もうまくやれるはずだ!」
9人のパーティメンバーを見回し俺は啖呵を切った。
そして俺の誘いにしぶしぶ乗ったパーティメンバーは神殿に向かった。
☆☆☆
女神たちの住む神殿には様々なシステムがある。その中の1つに、他の異世界に移動出来る転移システムがあるらしいが、あまり世の中には知られていない。
なぜなら誰もしたことがないからだ。せっかく手に入れた財産や装備を捨てて別の世界へ行こうなどという奇特な奴らはいままで俺らの他にいなかったようだ。
「おーい、女神様ー、いるかー?」
「あ、あなたたちは✝︎幻影協会✝︎の皆さん。これまたどうしたんですか、全員で現れるなんて」
俺たちが神殿に現れるやいなや、ただごとじゃないと言わんばかりに様々な階級の女神たちがゾロゾロと集まってきた。無理もない、俺たちの中には上級女神に匹敵するクラスの戦闘能力を持った者もいる。もちろん俺もそうだ。
「ここから異世界転移出来るって聞いたんだが、本当か?」
「本当によろしいのですね? この転移システムなんですが実際のところ使う人がいなくて、私もどうなるかは知りませんので」
「テキトーなことを言ってるがどうやら本当みたいだな」
「なあ、おい! マスター、本当にやんのかよ? 俺のこの世界での20年の努力が水の泡だぜ!」
気の強いジャックが俺に突っかかってくる。こいつは俺に対して、昔から何かと文句を付けてくる。まあ1番強いわけでもない俺がマスターなのが内心気に食わないんだろう。純粋な身体能力でいえば俺はパーティの中でも中間くらいだ。廃装備でガッチガチに固めてあるから誰も手は出せないがな。
「私なんてもう80年じゃよ、でも今はなんだか楽しみだねえ、生まれ変わって新しい世界に行けるなんてワクワクするよ」と大先輩のノエル婆さんは意外とノリノリだ。
「あ、これは転生ではないので身体年齢はそのまま引き継ぎます。アイテム、レベル、スキルはリセットですが、知識や感覚なんかは引き継がれますよ。これが転移システムというやつです」と女神が説明してくれた。
「なんか今まで集めてきたアイテムが無くなるのは惜しいなー」
「婆さんは転生しても婆さんのままみたいだぜ」
「時空を越えていざゆかん!未体験の地へ」
「おい、みんな! 俺たちが培ってきた知識があれば次の世界に行っても大丈夫だ。力を合わせて頑張ろうぜ!」と俺は皆を鼓舞したものの、ちゃんと心に響いているのかいないのかわからない。
俺だって転生して22年になるから、これまでのことを思うといろいろあったし、躊躇したくなるがしょうがない。今までにいろんな仲間を亡くしたし、未練もない。今のギルドメンバーとは、これを機会に切磋琢磨して絆を深めたいと思っていた。
元々勝ち馬乗りのメンツが集まっただけの実力主義のギルドだったので、それぞれの我が強くうまく統制仕切れてはいなかった。ただみんな強く有りたい、自分が最強でありたいと思い集まってきたメンツだった。終いには最強装備とスキルを揃えて世界を救ってしまったわけだが。
それが5年くらい前の話、この異世界はもう既に終わっている。毎日が実に平和だが、俺たちが魔王を討伐したことは女神によって口止めさせられている。今もこの世界に異世界転生してくる者は多くいるが、そいつらはこの世界を救わなければいけないと信じている。そうでなければ彼らは目標を見失ってしまい収集がつかなくなる。だから魔王を倒したことは秘密にしてほしいそうだ、なんて話だ。
とりあえず半信半疑ながらも転移システムの説明を聞き、皆の意見はまとまった。
「女神様、システムはわかった。俺たちは全員で異世界転移することにしたぜ」
俺は女神を前にして不敵に笑った。
「それに今なら何かサービスしてくれるんだろ?」
ジャック【狂戦士】
マスターのことが内心気に入らない脳筋の戦闘狂
しかし戦闘におけるセンスはピカイチでボスモンスターもソロで仕留める
「カイザードラゴンの首根っこ捕まえてきて始まりの町に放り込もうぜ! みんなパニックになっておもしろそうだろ!」




