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ダーク・プリンセス  作者: ノリック
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「始まり、そして旅立ち」1 ミシェルのデート10

 ミルキーウェイは、ウィングエッジの商店街の中でも新しい店舗に入る部類で、開店してから五年ほどしか経っていない。ウィングエッジの商店街では現在、新規参入店舗に優遇措置を取っているが、その中でもミルキーウェイは上手く繁盛しているお店だ。私達の街レオンハルトでまず店舗を構えるといったら、サントバーグの公園などでカートンショップを興すのが早くて経費的にも一般的なんだけど、ミルキーウェイの店長は若くして一流のレストランに弟子入りして修行した方で、独立して店を興すのにウィングエッジの商店街を選んで店を構えることにしたという。最近のウィングエッジの商店街は、新規参入店舗に寛容だったうえに、一流のレストランで働いていたシェフがウィングエッジの商店街に店を構えたいということで、ウィングエッジの商店街の組合は諸手を挙げて受け入れたらしい。


 ニッシュと私はカフェ『ミルキーウェイ』の店内で、ウェイトレスさんに案内されて席に着いた。木造の店内は、木々の香りに優しく包まれていて、木々のふわりとした匂いで仄かに鼻孔が擽られる。中央には丸太で出来た大黒柱が店内を見守るように立っていて、開店してから五年でも落ち着いた雰囲気に包まれている。


 私はテーブルに置かれていたメニュー表を手に取った。


「ニッシュ、何を頼む?」


「そうだなぁ。三時のおやつって事で、ケーキとか甘い物にしようかな。それと、暑くて堪らないから冷たい飲み物を一つ頼もうかな」


「うん、やっぱりそうよね。甘い物と冷たい飲み物、夏の午後三時ね!それで、具体的に何を頼む、ニッシュ?」


「そうだなぁ」


 それとなくまたメニュー表に目を留める……実際にカフェ『ミルキーウェイ』のメニューは、実に様々なバラエティーに富んでいた。日中の時間帯では昼にはパスタやパエリア、山の茸を使ったピラフなどのランチ、午後三時でアイドルタイムである今はパフェやケーキなどのスウィーツやコーヒーや紅茶などのドリンク、夜のディナータイムにはコース料理やステーキにサラダ、それに海沿いの街シーウェイブスから届いた牡蠣や海老、蟹や旨みの強い魚を使った海鮮料理など、ミルキーウェイの店長が振るう実に美味しそうな料理が様々にメニュー表を彩っていた。


 するとウェイトレスのお姉さんが、メニュー表を見て悩んでいる私達に話しかけてきた。


「あなたたち若いわね、デートかしら?レオンハルト高等学校の生徒かな?何を頼むか悩んでいるの?」


 ニッシュが「はい、デートです」とハキハキと答える。私も「私達、レオンハルト高等学校の生徒です」と答える(私は、やり取りの中で頼りがいのあるニッシュに『すごいわ』と感心しながら話をしていた)。ウェイトレスのお姉さんは好感を持ったのか、「そう」とにこやかに笑ってみせて「私はミルキーウェイで働いているウェイトレスのライア、よろしくね」と自己紹介してくれた。私達が「何かお薦めはありますか?」と尋ねると、ライアさんは快く答えてくれた。


「そうねぇ、今の時間帯、小腹が空いてるならうちにもサントバーグサンドとかあるけれど、スウィーツを食べたいとかなら……ワッフルクーヘンなんかも美味しいかしら。店長のスティッシュさん特製の物で美味しいわよ」


 メニュー表をよく見ると、私達レオンハルト市民のソウルフード、サントバーグサンドもしっかりと載っていた(写真で見るサントバーグサンドはレストラン風で高級かつ上品でとても美味しそうだ)。それと、ワッフルクーヘンというスウィーツも載っていた。ライアさんから詳しく聞くと、ワッフルとバームクーヘンからインスピレーションを得た店長のスティッシュさんが、ワッフル上に穴を空けたバームクーヘンを考案してワッフルクーヘンと名付けて作ったという。ライアさんから詳しく写真を見せてもらうと、ワッフルの格子状のカリッとしている感じの真ん中に穴が空いていて、そこからしっとりとしているバームクーヘン上の内部が見える。ライアさんが言うには「このワッフルクーヘンに生クリームと蜂蜜をかけて食べるのがまた美味しいのよね」とのことだ。


「じゃあ私はそのワッフルクーヘンに、アイスティーを頼もうかしら」


「俺はチーズケーキに、アイスコーヒーをお願いします」


 ライアさんが「注文承りました」と言って厨房の方に向かった。私はニッシュと話をしていた。


「ミルキーウェイには何度か来てるけど、まだまだ知らないメニューもあるのね」


「ミシェルが頼んだワッフルクーヘン、かな。それも美味しそうだよね。それと、もうちょっとお腹が空いていたら、ミルキーウェイのサントバーグサンドを頼むのもいいかもな」


「ウェイトレスのお姉さんのライアさんや、ミルキーウェイの店長のスティッシュさんの名前が分かったのも収穫ね」


「はは、そうだな」


 話をしてしばらくするうちに、ライアさんが頼んだメニューを持ってきてくれた。


「はい、こちら、ワッフルクーヘンになります。それとこちらはチーズケーキね。それと飲み物のアイスティーにアイスコーヒーになります」


 ライアさんが頼んだメニューを私とニッシュに運んでくれる。


「それと、これはワッフルクーヘン用の蜂蜜ね」


 ワッフルクーヘン用の蜂蜜も置いてくれた。ワッフルクーヘンは皿に二個載っていて、生クリームが添えられていた。焼き立てのそれからは香ばしい匂いが感じられ、私はそれだけで幸せな気持ちになっていく。


「じゃあ食べようか」


「そうね」


「いただきまーす」と私達はそれぞれのスウィーツにニッシュはフォーク、私はナイフとフォークを入れた。ワッフルクーヘンは、表面でサクッとナイフが入るとスッと切れてまたサクッと音がした。私は切ったワッフルクーヘンに生クリームを付け、蜂蜜をかけて口の中に入れた。咀嚼して飲み込むと幸せな気持ちになる。


「う~ん、甘くておいし~い。それにサクッとした食感にしっとりとしているのが、またおいし~い」


「うん、俺のチーズケーキも定番の味だな。甘くてしっとりとしていて美味しいや」


 ニッシュと私は、共に甘いスウィーツの幸せな時間に浸った。ニッシュとデートしているのを感じられるのも、私は嬉しくて幸せだった。


ふと私はある事を思い出し、ニッシュに話しかけた。


「ねぇニッシュ、デートで私に話したい事って、なんなの?そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」


 するとニッシュはうんと頷いたけれど、その後に私にこう言った。


「ミシェル、それはデートの終わりに話すよ。俺、デートが終わったら話すって決めてたんだ」


 ニッシュがそう言うので、私は「そう」とだけ言って、アイスティーを飲んだ。冷たいアイスティーが、甘く広がった私の口の中に爽やかさを運んでくれる。


「分かったわ。じゃあ、この後もデートを続けましょう」


「ああ、存分に楽しもう!」


ニッシュと私はそうして、それぞれのスウィーツを食べ終えた。


「あ~、美味しかった!」


「ここも会計は俺が払うよ」


「いいの?」と私が確認するとニッシュは「いいから、いいから」と言って会計を済ませにいった。


「お会計お願いします」


「はーい、私が会計するわ」


 ライアさんが会計をしてくれる。


「ワッフルクーヘンと、チーズケーキと、アイスティーにアイスコーヒーね……うん、合計で、八百ガルになります」


「分かりました」


 ニッシュは財布から八百ガルを取り出すと会計を済ませた。ニッシュのティーシャツは私が払ったけれど、私がしているイヤリングからお昼のサントバーグサンドまでニッシュ女の子に優しいのね、と感心する。


(それとも、私だからかな?)


 そう思うと、ちょっと嬉しくなった。


 そうして私とニッシュはカフェ『ミルキーウェイ』から出てきた。


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