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8.〖暗闇の狩人〗

突如襲われた揺れに体勢を崩して、穴に落ちてしまった。ずっと浮遊感に包まれる。


ああ、くそ。進化を済ませて、万全の態勢を整えてから穴の先に挑むつもりだったのに。どうしてこうなったんだか……


そもそもあの地響き、何なんだ?すっかり存在を忘れていたよな。


などと考えていると、突然落下が止まった。だが、どうも地面にぶち当たったような感じじゃない。もっと、何か柔らかい網か何かの上に乗ったみたいな……


〖鋼化〗を解除してあたりの様子を探ろうとしたところで、俺は気が付く。手足が動かない。いや、厳密には網に触れていない左手だけは動かすことができるが、他は全滅だ。


俺は慌てて周囲の様子をうかがった。〖嗅覚〗のスキルが腐った肉のにおいを感じ取る。コボルドに進化して鋭くなった聴覚が小さく呻くモンスターの存在をとらえる。


こいつらは、なにかの獲物……


そして、その獲物をからめとる網……


間違いない、ここは蜘蛛の巣だ。


「シシシッ」


暗闇の中で、何かうごめく気配がした。とっさに〖鋼化〗で身を守るのと、衝撃が体を揺らすのがほとんど同時だった。


あ、危ない……。


あと一瞬でも〖鋼化〗が遅ければ、この衝撃だ。きっと無事では済まなかった。


こいつ、動きが速い……てわけではないな。恐らく、うまく気配を隠していたんだ。




[〖シェン・アラーニャ〗:D-ランクモンスター]


[暗闇に潜み、ひっそりと獲物を狩る蜘蛛のモンスター。]


[高所に巣を張り、ひたすら獲物がかかるのを待ち続ける。]


[吐いた糸に魔力を通すことで、糸の強度を増している。]


[その糸の価値は高く、その糸を狙う者たちに乱獲され、個体数を減らしつつある。]


デ、D-ランク……穴の先に行けばいつかは出会うかと思ってたが、まさかファーストコンタクトからとは。でも乱獲されているのか、可愛そうに……


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:シェン・アラーニャ(D-)

状態:通常

Lv:8/25

HP:42/44

MP:56/56

攻撃:30

防御:24

魔力:39

敏捷:21



特性スキル:

〖忍び足:Lv4〗〖器用:Lv3〗


耐性スキル:

〖飢餓耐性:Lv2〗〖毒耐性:Lv4〗


通常スキル:

〖蜘蛛糸:Lv4〗〖麻痺噛み:Lv4〗〖毒針:Lv1〗


称号スキル:

〖暗闇の狩人:Lv--〗〖忍耐:Lv6〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐




いや、同情なんかしている場合じゃない。ステータスも普通に高い。さすがに敏捷は勝っているが。


「シシシッ?」


シェン・アラーニャは不思議そうに鳴いた後、再度俺に噛みついてきた。


「シシッ!?」


そして、口元を抑えて痛そうに鳴いた。あ、HPが2減っている。


その後、シェン・アラーニャは俺を軽く噛みついたり足でつついたりしてきた。しかし、〖鋼化〗中の俺にダメージを通せるほどの攻撃力はシェン・アラーニャにはない。


「シシィ……」


最終的にシェン・アラーニャは俺を石か何かと判断したようだ。ぬか喜びしたさみしさを感じつつも、異物を巣から排除するべく、俺の周りの糸を斬り始めた。


……このままじっとしとけば無事に地面に落とされそうだな。〖鋼化〗があってマジでよかった。あれがなければさっきの一噛みで即死だったな。


よしよし、蜘蛛さん、頑張って働いて俺を開放してくれよ。


……待てよ。シェン・アラーニャは俺を石だと思って完全に油断している。隙をついて一撃入れてやれば、上手くやればこいつ、倒せないか?


もし失敗しても、こいつは敏捷ではるかに俺に劣る。十分対応は間に合うはずだ。〖鋼化〗が有ればシェン・アラーニャの攻撃なんて怖くないんだし……


よし、やろう。


危険はあるが、そもそもこの穴の下にどんな魔物がいるのかわからない以上、レベルアップを狙える機会は積極的に狙っていきたい。相手が油断している絶好の機会を逃すわけにはいかない。


シェン・アラーニャがどんどん俺の周辺の糸を切り離していく。支えが減っていった俺の体が大きく揺れる。


シェン・アラーニャが作業の場所を移すべく、俺から視線を離した。


「エアアッ!」


俺は叫び声をあげ、手製の鞘から短剣を抜き、シェン・アラーニャの腹へと突き刺した。次いで大口を開けて頭へと噛みつく。


「シシッ!?」


予想外のダメージに、シェン・アラーニャが悲鳴を上げた。混乱からの硬直の後、痛みの原因を振り払おうと足を振るう。


遅い! 〖鋼化〗っ!


「シィッ!?」


〖鋼化〗した俺の体がシェン・アラーニャの一撃を完全にはじいた。


さらに、その一撃の衝撃によって俺を支えていた最後の糸がちぎれる。それによって、俺の体重を支えるのが、シェン・アラーニャに刺さっている短剣と、嚙みついている俺の牙のみになった。つまり、俺の全体重がシェン・アラーニャの傷口に集中する。


「シシィ……ジジッ!?」


重さと痛みに耐えきれず、シェン・アラーニャの体が巣から落下した。一瞬の浮遊感の後、俺たちが地面に激突する。


「シィ……シィィ……」


傷を抉られ続けたシェン・アラーニャはボロボロになっていた。とはいえ、まだ俺のステータスではシェン・アラーニャの最後のあがきだけでも致命傷になりかねない。万全を期しておこう。


俺は動けないシェン・アラーニャから距離を取る。


助走をつけて跳びあがると、壁を蹴って高さを確保してから〖鋼化〗した。そのままシェン・アラーニャの真上へと落下する。


〖流れ星〗のスキルだ。


「ジィッ!」


直撃したシェン・アラーニャは、断末魔を上げて動かなくなった。


[経験値を96獲得しました。]


[〖コボルド〗のLvが12から15に上がりました。]


[〖コボルド〗のレベルが上限に達しました。]


[進化が可能となりました。]

先日久しぶりに投稿しました。


一応、今後は週一回の更新を予定しています。


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