39.アルファルド君かな?
その後も毎日魔王の力を使う特訓は続き。
私は気付いた。やっぱり魔王の力は最強だな、と。
私は小さな火の玉を想像したのに出て来たのは巨大すぎる隕石じみた物だったし。(そのせいで魔王城半壊)
風の刃的なものを出そうと想像したら、何をどう間違ったのかトルネードが出てしまったし。
とにもかくにも、規模がでか過ぎる。ブカは強大すぎる力を押さえるのがまだ出来ないのだろう、と言っていたが、多分力を使うのが『下手くそ』なんだと思う。ブカの『無』な目と態度と空気がそう言っていた。「おいおい、マジかよ。下手すぎるだろ、下手くそすぎるだろ。マジか、マジで言ってんのかよ」と。
飛行能力はいつまで頑張っても無理だったので諦めた。諦めるしかなかった。
いつまでも飛べ飛べ言っている私をブカが、何か言いたげに、だけど『無』な表情のままじっと見ていたので私はブカに「諦めたらそこで試合終了だよ?って明言知らないの」と物真似混じりに言ったら、ブカに
「知りません」
と、これまた『無』で一蹴されたので諦めた。
アルファルド君なら「なんだソレは」ぐらい言ってくれているのに。
まあ、期限は一カ月しかないのだ。諦めよう。悲しいが。オワタさん倒してからもう一度頑張ってみようと思って泣く泣く諦めた。勝てるかどうかわからないが。でも飛びたい。飛んでみたいんだよ。
そうして数日間が過ぎた頃。
「ブカ。攻撃、防御系統はそれなりに練習したから次は空間移動も練習してみていい?」
ブカからはそんなものよりも攻撃防御を覚えろ、と暗に言われていたので私はブカにそう許可を求めた。
「…どうぞ。ただし」
ブカのどうぞ、という言葉に私は嬉しくなり、早速「どこまでいけるかな」とわくわくしながら考えていたのでブカの、続く「ただし」の言葉を聞いていなかった。
そして、ブカが「ただし」の言葉の続きを言う前に私の前からブカが消えた。
ブカが消えた、のではなく私が移動してしまったのだが。無意識に。
「おわっ、…たぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」
私は落下した。
移動した先が何処かの遙か上空だったから。遙か下方に森とか街とか街とかが見える。ああ、わりと上空。
「っ、と、と…べっ!」
ばちん、と手を叩く。風の抵抗を受けながら頑張って手を叩いた。少し止まって、
また落ちる。加速。
む、無理だ。
「ぶ、ブカァァーーー!!ブカァァッァーーーっっ!!」
私は叫んだ。
叫んだ直後、ぴたりと私の体は落下から解放された。そしてブカがそこにいた。「すみません、遅くなりました」とブカは言った。私がいた所は結構遠かったらしく、ブカがここまで来るのに二、三回空間移動をしなくてはいけなかったらしい。私一発だったのに。さすが魔王だね。
「結乃様、出来ましたら空間移動の際は私もお連れ下さい」
とブカは淡々とした口調で言ったが、心の中では「話も聞けないのかこのボケは」と思っているだろうことは明白だった。
そんなブカに「ブカは、もう片腕じゃなく両腕になればいいよ」と、ヨイショしようとして笑顔で言ったら、ブカは「ありがとうございます」と表情崩すことなく『無』のまま言った。
感情を抑えているブカは、どちらかと言うとクール系だ。眼鏡とか似合いそうな感じ。出来る秘書。出来た執事。
よくできてるなぁ。
そして魔王城に戻ったそんな私に待っていたのが、頭痛だった。
「痛っ…!」
突然きた頭痛。私は顔を顰める。ズキズキ痛むこの頭痛は何回か経験したことがある。これは、あの時の頭痛と同じような痛みだ。いや、それ以上、か。
「…っうー、くそっ…」
苛々するな、この頭痛。
私はそう言いながらもすぐ傍にいたブカを見る。頭痛薬でもないかと思って聞こうと思ったのだ。だが、ブカは以外にもその顔に笑みを載せていた。いつも『無』だったブカが口元を釣り上げている。こういう顔を見ると魔物だな、と思う。でもどうした?
「どうしたの、ブカ?」
「おめでとうございます、結乃様」
何が?と首を傾げた私に、ブカは表情を『無』に戻してこう言った。
「一番目の魔王が死にました。結乃様が魔王様です」
何がどうなってそうなったのか。
ブカが調べに行った所によると、どうも『勇者』が召喚されたようで、その勇者が一番目の魔王、オワタさんを倒してしまったらしい。
というか。
「勇者、いるんじゃん」
「今回の勇者はそこそこ強いようですね」
「前回の勇者は弱かったの?」
「激弱だった、と前魔王様はおっしゃっていました」
「…ふーん」
勇者。
「アルファルド君かな?」
「違います」
ブカはきぱりとそう言った。
…君、そんなハッキリ言うけど、アルファルド君知ってるの?




