17.神秘の森
神秘の森。
何処にあるか解らない。
何があるかも解らない。
何が起こるか解らない。
どんな生き物、
どんな植物、
どんな『もの』が生息しているのか。
誰も知らないと言われている謎の地域一帯の事を総称して『神秘の森』という。
だが、その神秘の森でも一つだけ世間一般に知られている事がある。
それは
「ぎゃぁぁぁぁーーーっ!!!!!!何あれ何あれ何あれぇぇーーーーっっっ!!うぅぅぅぅーーーー……」
果てしなく気持ち悪いぶよぶよした物体が、果てしなく気持ちの悪いドロリとした紫色の液体を体から垂れ流しながら、うようよと果てしなく気持ち悪い動きでそこら辺をもぞもぞと動いている。
「あれはな、この神秘の森に生息している物体だ」
「物体!?物体ってどーいうことなのアルファルド君っ!!生き物って事!?」
「落ち着け。あれはな、物体だ」
「だから物体って何なのよぉぉーーーっ」
うううぅー、と緑色した「物体」をこっちに来ないか警戒しながら、私はアルファルド君の影から遠目に見る。
「近付けば解るんじゃないか?」
「アホなこと言わないでよ!あんなもんに近付けるわけないじゃないっ!!」
「近付かなきゃ解らない事もある、と俺は思う」
「じゃあ解らなくていいわ。『物体』として認識するから」
「ちっ、残念だ」とアルファルド君はあからさまに残念そうな顔をしながら呟く。
「駄目ですよ、勇者殿。アレに近付いたらどうなるか、君なら知っているでしょ?」
「…………」
「…何の話ですか?」
カグヤは目が見えない。だが、声でいる所が解るらしく私の方を見ながら説明してくれた。
「あれは通称ヨミガエリと言われていて、詳しい事はまだ解明されていないのですが、あの紫色の液体。あれが放つ匂いには一種の幻覚作用のある物質が含まれているんです。だから…」
「近付くとその幻覚作用のある匂いにやられるってわけですか」
そうです、とカグヤは頷く。アルファルド君は素知らぬふりを決め込む。
最低だなこの男、と頭に乗っかってきたミズイロをよしよしと撫でながらアルファルド君を見ていた私は、ふと思う。
私自身はアルファルド君に触れないけど、もしかしたら何かを介したら触ることが出来るのでは、と。
たとえば、
この、木の棒とか。
にやりと笑い、私は木の棒を拾い数回素振りをしてからアルファルド君の背後に立ち、木の棒を振りかざす。幸いにも、木の棒は私を弾くことはしなかった。
「……………」
でももし、これで本当に当たったらアルファルド君死んじゃうんじゃ………。
少し考えた後、ぽいっと私は木の棒を放り投げた。
「ね、殺傷能力ゼロの棒みたいなもの持ってない?」
「何に使うんだよ」
それから暫くカグヤの先導で私達は神秘の森を歩いていた。そこかしこにいる『物体』、それ意外は特にこれと言って変わったものは何も見つからない。ただ薄暗い道が続いているだけだった。
「カグヤさん、レイト…でしたっけ?その花はどの辺りにあるか解ってるんですか?」
「はい。近付けば解ります」
近付けばって……どの範囲まで近付けば解るのだろうか……。
まだまだかかりそうな気配に私は心の中でコッソリとため息をつく。
アルファルド君はというと、ずっとひたすら無表情だった。
だから放っておけば良かったんだよ、と思われてそうで凄く嫌だったので何か会話でもしようと彼の名を呼ぶ。
「何だ?」
アルファルド、と呼ばれることにも慣れたらしい。
「アルファルド君ってさ、血液型何?」
「けつえきがた?」
この世界には無いのかな、と私は首を傾げるがカグヤが自型のことですか?と聞いてきてくれた。だが、その自型が私には分からない。
「自型なら俺はAの25だ」
「あ、私もAです。Aの35」
「………」
自型って、何?
ロボットの製造番号みたいなソレに私は何も言えず 。ただ、カグラに「貴方は自型はないのですか?ケツエキガタとは何ですか?」と追及されてしまい。
私はもう何も聞くまいと心に誓ったのだった。




