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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編
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兵士宿舎のサクヤ姫

 「・・・なんか変な事になっちゃったね。」


 タカヒト達は城下町のはずれにある兵士宿舎に来ていた。宿舎は城に収まりきれず増えすぎた兵士が寝泊りをするために建設されたらしいのだがヘルズ達の姿は見えなかった。しかしあまりにも大叫喚地獄城と近すぎる場所での出来事にリナは懐疑心でいっぱいだった。


 「本当にクーデターなんてあるのかしら・・・ねぇ、ミカ。」


 「うん・・・もしかしたら騙されているのかな?」


 「どちらにしても行くしかあるまい。

  門の鍵の手がかりがあるかもしれんのだしな。」


 「よし!それじゃあ、行こう。」


 ポンマンの号令で宿舎内へと潜入していく。歩きながらタカヒトはジャンスに言われた事を思い出していた。それはジャンスが大叫喚地獄城で一人娘のサクヤ姫の救出を願った時の事だった。


 「盗人であるお前達に兵士宿舎に捕らわれているサクヤ姫の救出を頼みたい。」


 「盗人ではないのだが・・・まあいい。

  救出に成功した場合の報酬は用意してあるんだろうな?」


 「もちろんだ!約束しよう。画家に書かせたサクヤ姫の肖像画があるからそれも確認しておいてくれ。サクヤ姫は人見知りをするウブな子だから事は慎重に頼むぞ!」


 てんとはジャンスに渡された兵士宿舎の構造図を確認すると古い井戸を見つけた。蓋を開けると井戸は枯れていて構造図の通りの施工をされていた。この井戸は地下通路に空気を送り込む通気口となっている。兵士達が速やかに行動を起こせるように大叫喚地獄城と兵士宿舎を繋ぐ地下通路だったが今では大叫喚地獄城側の通路は破壊されて通り抜けは出来ない。

 地下通路に降りたてんとはヘルズがいないことを確認するとタカヒト達に降りるように命じた。地下通路は壁にたいまつが数本設置されているだけの薄暗い場所だった。歩いている途中でポンマンがタカヒトにサクヤ姫について語り出した。


 「それにしてもサクヤ姫って可愛かったよね。なんか清楚な感じがしてさ!

  タカヒトもそう思っただろ?」


 「うん、そうだね。」


 「ふぅ~~ん・・・タカちゃんって清楚な感じが好みなんだ!」


 「ちっ、違うよ、ミカちゃん!ポンマンに合わせただけだよ。」


 「別に気にしてないわよ!」


 「ミカちゃん・・・」


 ポンマンが腹を抱えてゲラゲラと笑っている横でタカヒトはミカに必死になって言い訳をしていた。そんなこんなで地下通路を歩いていくと牢屋らしき部屋についた。リナはいくつかの牢屋部屋を捜索したがサクヤ姫らしき姿は確認出来なかった。ヘルズ達のクーデターに巻き込まれたサクヤ姫が牢屋にいないことが確認されたことによりリナの懐疑心は確信へと変わり始めていく。


 「騙されたかもしれないわね・・・・あのジャンスとかいう十六善神の策略にまんまとのせられてしまったかもしれないわ。」


 牢屋の先に設置されていたハシゴを登っていくとエントランスに出る事ができた。広いエントランスには豪華なシャンデリアが吊るされている。兵士宿舎というにはあまりに豪華すぎる建物なのだが、ジャンスの趣味なのだろうか。ここまで来ると数匹のヘルズがいたるところにいてなにやら深刻な表情をしながら話をしている。


 「こんなことをして大丈夫なのか。

  あの方は問題ないと言っておられたがジャンス様を怒らせてしまった。」


 「こうなってしまった以上、後にはもどれねぇ・・・やるしかねぇよ!」


 タカヒト達はヘルズ達に気づかれないようにエントランス階段を進むと二階書斎室へ入っていく。ヘルズ達が勉学に励むように造った書斎室は誰も使用したことがなくいつしかヘルズ達の間で開かずの間として封印されていた。書斎室の中でタカヒトは兵士宿舎の構造図を机に広げた。


 「さっきの会話を聞くと、どうやらクーデターは本当らしいわね。」


 「うむ、しかし問題はどこにサクヤ姫がいるかなのだが・・・・」


 構造図を見ていくと二階には書斎室のほかに食堂と居酒屋 男気があるだけで三階と四階はヘルズ達の寝床となっている。


 「どこに居るんだろう・・・アレ?

  ねぇ、てんと。三階の端に来客室って書いてあるよ。」


 「よく気がついたな、タカヒト!人質とはいえサクヤ姫をヘルズ達の寝床に連れて行くはずはない。三階の端の来客部屋にサクヤ姫がいる確率が一番高いな。しかしどうやってヘルズの寝床を越えていくかが問題・・・! 外が騒がしいな。」


 書斎室前の廊下をヘルズ達が勢いよく走っていく。一瞬、タカヒトは侵入したことがヘルズ達にバレたと覚悟を決めたがそうではなさそうだ。走っているヘルズ達はしきりに「あの方がお呼びだ!」と話している。


 (あの方?・・・ジャンス以外に十六善神がこの件に関わっているのか?)


 てんとの脳裏に様々な不安要素が広がっていく。二階の食堂には入りきらないくらいヘルズ達が集まっていた。書斎室から食堂に来たタカヒト達の姿を見てもヘルズ達は気にも止めない。ヘルズ達の注目は一箇所に集まっていた。主であるジャンスを裏切ってサクヤ姫を誘拐しクーデターを起こした首謀者が今、ヘルズ達の前に現れた。見たことがあるその者にタカヒト達は驚いた。


 「リッ、リディーネ?」


 「いぃ~い、あんた達!あんた達がやるって言ったんだからね!

  途中で逃げたらただじゃおかないよ!」


 「お前等、姉さんを怒らせると痛い目みるで!」


 てんとは自分の目を疑った。首謀者はジャンス以外の十六善神であり、今回の破壊神への密命を妨害する為に起こした陰謀だと考えていたからである。とはいえリディーネも破壊神の娘なのだし、首謀者なのだから何か陰謀めいたことを企んでいるに違いないとてんとは確信していた。リディーネの激にヘルズ達は顔を蒼くしている。


 「ちょっとぉ~~、いまさら後悔しましたみたいな顔するの止めてくれる!」


 「しかし姉さん、ストライキはともかくサクヤ姫様まで連れてこなくても・・・。」


 「何、言ってんのよ!大体あんた達がオヤジのワンマンな行動についていけないからストライキしたいって言ったんでしょ?サクヤだって本人が来たいって着いて来たんだからしょうがないでしょ!!」


 リディーネの言葉にヘルズ達は黙り込んでしまった。それを聞いていたてんとは肩透かしをくらった。大叫喚地獄城を巻き込んでの巨大な陰謀だと考えていたがジャンスのわがままについていけないと篭城決めた、ただのストライキだった。


 「ねぇ、てんと。ストライキって何?・・・てんと?どうしたの?」


 「いっ、いや・・・何でもない。私の心配が過ぎたようだな。とりあえずこの決起集会にサクヤ姫は来ていないようだ。今のうちに三階の来客室へ向かおう。」


 少しずつ派手に盛りあがっていく決起集会をあとにしてタカヒト達は来客室へ向かった。ヘルズ達が決起集会を行っていたおかげですんなり辿り着く事が出来た。この部屋にサクヤ姫がいると思うとドキドキが止まらないポンマンはゆっくりドアノブを回した。ドアを開けると部屋の中に女の子が音楽を聴きながらノリノリで踊っていた。


 「ウッ、ハ!ウッ、ハ!・・・あっ!」


 呆然とするタカヒト達の姿に気がつくと女の子は顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。女の子は聴いていた音楽を止めて平然を装おとしている。


 「・・・どちら様ですか?」


 「・・・サクヤ姫様ですか?」


 女の子は軽く頷いた。サクヤ姫はタカヒトより少し背が大きかったがジャンスの言った通りの物静かな感じがした。さきほどの踊りさえなければ・・・・。


 「サクヤ姫様にお伝えする事が御座います。」


 てんとはサクヤ姫にすべてのことを話した。兵士達のクーデターによりサクヤ姫が誘拐されて救出に来たことを話すとサクヤ姫は必死の表情でそれを否定した。


 「違います!彼らは悪くありません。

  私が彼らにお願いをして連れてきてもらったのです。」


 「しかし、ジャンス様はそうは思ってはおりません。」


 「私・・・お父様の思うような娘にはなれません。でもお父様はそれを認めてはくれませんでした。それが息苦しくて・・・でもそれは私だけではありませんでした。兵士の皆さんも同じ思いをしていました。皆で我慢をする日々・・・そんなときにリディーネさんが現れたのです。あの方は本当に自由で・・・とても羨ましかった。

 この胸の苦しみをあの方に相談いたしました。最初は兵士の皆さんも反対されました。でも私が強引に誘ったのです。彼らは本当に悪くありません!」


 涙を浮かべてサクヤ姫は必死に訴えた。サクヤ姫やリディーネそれにヘルズ兵士達の会話を聞いてクーデターではないことが確信できた。サクヤ姫もこれほど事が大きくなっているとは考えていなかったようでこのストライキを止めて大叫喚地獄城へ戻ると言った。そしてすべての思いをジャンスに話すとも言った。


 「気持ちを伝えないとわからない事もあると思うよ。

  私も謝りに行くから一緒に大叫喚地獄城に戻ろ。」


 「ありがとう・・・あなたは?」


 「私はミカ。それからこっちがタカちゃんで・・・」


 ミカは皆を紹介するとストライキを止めてみんなで大叫喚地獄城へ戻ろうと促した。サクヤ姫に笑顔が戻るとリディーネを連れてくると言って部屋を出て行った。


 「てんと、リディーネを連れてくるって言ってたけど大丈夫かな?」


 「さあな、だが誤魔化す訳にもいかない。いちおう、戦闘体勢を整えておく必要はありそうだ。」


 タカヒト達はドアから離れ窓際に戦闘体勢を取りリディーネが来るのを待ち構えた。しばらくすると廊下の方からサクヤ姫とリディーネらしき女の声が聞こえてきた。その声は次第に近づいてきてドアがゆっくりと開けられた。


 「ちょっと、サクヤ!押さないでよぉ~~。

  何なのぉ~、いったい・・・あんた達は!」


 「ひっ、久しぶり、・・・リディーネ元気だった?」


 ポンマンの言葉とタカヒト達の姿を見たリディーネは瞬時に後退すると全身から紅色の輝きを放ち出した。


 「何が元気だったよ!あんた達はギガスの仇なんだ!今、仇を取らしてもらうわ!」


 「知り合い?」


 「ちょっと、サクヤ!コイツ等は友達じゃないわよ。私の仇なの!邪魔しないで!」


 「えっ?」


 リディーネは紅色の闘気を最大限まで高めていく。サクヤ姫は訳もわからずにただ立ちすくんでいた。タカヒトはそんなサクヤ姫とミカ達の身の危険を感じとり赤色の闘気を高めていく。

 次の瞬間、てんとは黒玉を取り出した。リディーネの両腕から部屋中を焼き尽くほど激しい火炎が出されると、てんとがタカヒトより預かっていた黒玉にすべての獄炎が吸収されていく。リディーネも負けじと闘気を全開に高め、火炎を放つが次々と黒玉に吸収されていく。

 紅玉闘気業火のすべてを吸収されたリディーネは力尽きたように床に膝をついて座り込んだ。


 「ちっ、ちっくしょうぉ~・・・ギガスの能力を使うなんて卑怯だぞ!」


 「リディーネよ。ギガスを倒したのはたしかにタカヒトだがあれはギガスより申し出た決闘だった。十六善神のルルドが立会者のもとでな。まあ、信じる信じないはおまえの勝手だが私達はおまえと戦う気はない。十六善神のジャンスに頼まれてこの騒動を治める為にここに来た。」


 「・・・・・」


 床に座り込んだリディーネは下を向いたまま微動だにしなかった。そんな姿を見たサクヤ姫はリディーネに近寄ると膝をついてリディーネの肩にやさしく触れた。涙を堪えながらサクヤ姫はうつむいているリディーネを見つめていた。


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