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大樹の影には  作者: 稲葉 鈴


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1-1.アルバンは錬金術師になった

お久しぶりです

新作になります


世界観は『死に戻り王子』と同じになります

でもあれとはちょっと違ってゆるふわ錬金術師のスローライフになります

どうぞよろしくお願いします

 大国アベラール、それらかまあまあの大国オベール。南の賢者様がいる小国ボードレールに挟まれた小さな国、アゼマ。それが、僕の産まれて育った国だ。色々とこの国にも特色はあるだろうけれど、一番の特色は錬金術師が多い、ということだろうか。色々と、伝説もある。


 錬金術というものは、まあ、大体の人は聞いたら「ああ、ポーションの」ってなるだろう。分かる。初歩だから。これが作れなければ、錬金術師は名乗れない。いや、名乗ることはギルドにお金さえ払えば可能だったりする。メリットは多分ない。


 その日僕は、少し大きな街へ向かった。近隣の町にも錬金術のギルドはあるけれど、初回登録は大きい街へ行ってくれと受付カウンターで案内される。されたので、バイエに向かうことになってしまった。いいんだけどさ。


 ボドワンから乗合馬車に乗って二日。隣のあんまり大きくはない町カバネルを経由して到着だ。乗合馬車も、この距離になると決して安くはない。食事代だってかかってくる。まあ、錬金術師になれれば、それも多分恐らく回収できるんだけれど。


 バイエの街で乗合馬車を下りて、御者さんに錬金術師のギルドの場所を聞く。初めて来た街なので。



「あそこに、時計台が見えるだろう。あれがあるのが中央広場で、そこに、でっかい建物がふたっつあってな」

「この通りを真っすぐ、でいいんですね?」

「そうそう。そうすりゃ中央広場につく」

「ありがとうございます」

「そんで、そのでっかい建物の片方が、錬金術師のギルドと冒険者のギルドだ。もう一個は、商工会のギルドと商人の荷ギルドだから、間違えねえようにな」



 師匠に言われていた通り、道を教えてくれた御者さんにお礼と一緒にチップを渡して、財布代わりの皮の袋を覗いて思わずため息が出た。頑張って沢山貯めたつもりだったけれど、大分減ってしまった。それでもまだ、錬金術師のギルドに入会するだけのお金は残っている、はず、だ。あと帰りの馬車の代金と今日の宿代。ギルドに登録に来ただけなのに、結構お金がかかる。


 大きな街の門の近くから、中央広場まではそれなりに歩いた気がする。通り沿いには沢山の店があって、見ているだけで楽しい。だから足の疲れ具合から推察するにそれなりに歩いたと思うのだけれど、すぐについたような気もする。 


 中央広場には、沢山の食べ物の露店も出ている。朝ご飯は宿で無料で貰える薄いスープだけだったから、お腹の虫が自己主張してくるけれど待ってほしい。無理。登録してお財布に余裕が出来てからじゃないと食事も心配でしかない。


 中央広場はど真ん中に時計台があって、それを挟んで大きな建物が二つ。冒険者のギルドと併用って言うなら荒くれ者がいる方、と思ったけれどどっちにもそれらしい人がいて困惑するしかない。なんで。なんで両方に荒くれ者がいるの。



「お、坊ちゃんどっちだ」

「錬金術師のギルドぉ……」

「合ってる合ってる。こっちだ。あっちに今入ってったのはな、鍛冶師とかの連中だよ。会合があるんじゃねえか?」

「あー、そういうこと。ありがとうございます」



 困惑していたら、荒くれ者がゲラゲラ笑ないながら声をかけてくれた。多分それなりによくあることなんだろう。新人がこうして放心してるのは。


 お礼を言って、教わった方の建物の中へと入る。なぜか荒くれ者もついてきた。中の案内もしてくれる気なんだろうか。



「錬金術師のギルドの受付はあっちだ。こっちに来ると怖いお兄さんとお姉さんがいるから、間違えるなよ」

「お前は怖いおじさんじゃねえかよ!」

「だから案内してるんだろうがよ!」



 中に入ったら案の定案内してくれた。しかしお礼を言う前にヤジが飛んできて、荒くれ者はそっちに行ってしまった。



「ありがとうございます!」



 お礼を言わないのは駄目だと師匠に言い含められているので、その背中に声をかける。後ろ手にひらりと手を振られてしまった。何あれ格好いい。


 ほぅと一つため息を吐いて、錬金術師のギルドの受付に向かう。長机のカウンターに丸椅子。自分と荒くれ者のやり取りを見ていたか聞いていたのだろう、一人の人がカウンターに向かって歩いて来てくれていた。



「入会ですか?」

「そうです」



 紙ばさみにすでにセットされている書類を渡される。紙を撫でてみれば、これはダンジョンの真ん中辺で取れる方の巻木巻木の皮だ。それほど荒くもなければ、深層で取れる奴ほど高価でもない。自分で取りに行ったことなんて無いのに、詳しくなってしまった。師匠がね、好きなんだよね。紙。本もだけど。


 名前と住所と、後は師匠についてとか派閥とか、記載する場所は多くある。渡されたペンとインク壺だって、これ、ダンジョン産だ。金のあるギルドだなあと思いながら、それに書き込んでいく。



「ケロールの森……ああ、ボドワンの近くですね。あそこはダンジョンが二つありますから、錬金術師になって貰えると助かりますね」



 書類を覗き込みながら、職員さんが頷く。


 後はこの、薄くなってしまった皮袋からなけなしの登録料を支払えば登録は完了となる。なけなしの。



「登録証は腕輪とピアスとブローチとありますが、どれになさいますか。おすすめはブローチですね」

「じゃあブローチで」



 登録直後はブローチが一般的だと、ボドワンの錬金術師のギルドで聞いた。その次が腕輪になって、ピアスはもっとこう、色々と作れるようになってからがいいらしい。別にいきなりピアスにしても誰も何とも言わないんだそうだけれど、外野からの視線が違うとかなんとか。



「それじゃあこちらがレシピになります」



 渡されたのは、薄い冊子。まあ、薄くていいんだけれど。登録したてだし。職員さんが、冊子の表紙をぺらりとめくる。



「この、傷薬をまずは十作って、納品してください。ボドワンの錬金術師のギルドで大丈夫です」

「はい」

「これは傷薬のレシピブックになっていますから、まずはこのレシピブックを全て納品してください。そうすると、ランクが上がります」

「はいはい」



 ボドワンの錬金術師のギルドで聞いていた話の通りだ。だからこくこくと頷いておく。


 錬金術師のギルドで貰えるレシピブックの通りに薬を作ることで、ランクが上がる。ランクが上がると次のレシピブックが貰える。まあ、作りきれなくても、一回で十だの五十だの百だのの納品じゃなくて、トータルでいいらしいから最終的には上がる。なんと言うか、ちゃんと作れればそれでいいのだ。ちゃんと作れなければ、退会を進められるらしいけれど。お金、かかる仕事だしね。


荒くれ者書くの楽しいよね

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