39 潜伏生活開始から1ヶ月半、レベルアップ〜『安寧の地』レベル4
潜伏生活も一ヶ月半ほど経ったこの日、
《レベルアップ!『安寧の地』レベルが4になりました。『簡易ログハウス』が『ログハウス』になりました。『キッチン(小)』が『キッチン(中)』になりました。『風呂場(小)』が追加されます》
ついにきました、お風呂!!!
すぐに確認。トイレの隣に新たに出現した扉を開けると……あった! が!
………湯船がない。
脱衣所なしの狭い空間にシャワーがひとつ付いてるだけだ。
えぇ~! 湯船は~!?
これじゃあウィルと二人でキャッキャウフフしながら入れないじゃん!!
と、内心文句を言いつつも、口元がほころぶ。
湯船がなくても、シャワーができただけで十分嬉しい。だってこれで、川で水浴びしなくてもよくなるんだもん。
贅沢な文句を言ってごめんなさい。ありがとうございます、スキル『安寧の地』様!
お風呂場の小さな空間は、床も壁も真っ白な大理石で、清潔感があってとてもいい。
シャワーヘッドはこれ、クリスタル製かな。おしゃれ。
あ、ちゃんと熱湯がでる。これはありがたい。
『風呂場(小)』ってことは、(中)、(大)って今後大きくなるのかな?
そしたら湯船も出現したり……
うむ、次回のレベルアップに期待しよう。
忘れてたけど、これまでのログハウスは『簡易』だったんだね。
それが『ログハウス』に進化した。
変わったのは部屋の広さかな?
いつもくつろいでる部屋が、12畳から、15畳くらいの広さに変わった。
「なにぃ~? また変化したのぉ、この家。すごいわねぇ」
寝ぼけまなこのイヴがそれだけ言って、もう興味を無くしたのか、再びソファに転がった。
幸せそうな寝顔を見て苦笑する。
あんまりぐーたらしすぎて、太ってもしらないよ。
あ、続き部屋が増築されてる!
扉なしの続き部屋は、6畳ほどの広さだ。
そうだ、これからはこの続き部屋を寝室にしよう。
新しく『収納』から出した絨毯を敷いて、居間にあるベッドを移動して、照明台を出してっと……
『収納』があれば、目的の場所まで歩いていって出し入れするだけだから、模様替えも楽ちんだ。
居間の方は、絨毯やソファや照明台はそのままに、二人用の小さな机を『収納』して、外で使ってた5人がけの大きなテーブルを出す。
ソファの前にも、脚の低いガラス製の円テーブルを出した。
まだスペースに余裕がある。
食器棚も置けそうだな。
コーネットの屋敷で中身ごと『収納』したロココ調の食器棚を出す。
おお……すごく『家』っぽい。
家具類がみんな高価なものだから、お金持ちの別荘みたいに見える。
ほとんど売るつもりで頂戴してきた物だから、どれも良い品なのだ。
(小)から(中)に変化した『キッチン』はというと……
広さが倍以上になってる!
コンロが2つに増えてる!!
わぁー!! 興奮する!!
流し台も、2倍以上の大きさになったし、水しか出なかった水道がお湯も出るようになってるね。
それに、出窓ができてる。
換気もできるってわけか。
これからは外に出なくても、この『キッチン(中)』で料理ができそう。
ずいぶん住みやすい『家』になったなぁ。
便利な機能は次々増えてくし、至れり尽せりだ。もう一生、何不自由なくここで暮らせそうだよ。
『安寧の地』、レベル4でこれだからね。
これ以上アップしたらどうなっていくんだろう。
「姉さまー! おうちがおっきくなってるよー!」
外で遊んでいたウィルが、息を切らして家に入ってきた。ハティもいっしょだ。
部屋も増えたし、ログハウスの外観もかなり変わったのかな?
「おお……屋根に色がついてる」
いままでは簡素な外観だったのに、全体的に豪華になったかんじ。
ドームの範囲も、また少し広がったみたい。
いずれこの原っぱすべてが『安寧の地』の指定範囲になるんじゃないかなって気がする。
「今日は川に行く日だろう?」
ハティからカゴを渡される。中にはタオルが入ってる。ツリーハウスの木の枝に干していた洗濯物を取って来てくれたんだね。
そっか、今日は3日に一度の水浴びの日だ。
ハティは道案内役兼、護衛としていつもついてきてくれていた。
「あのね、ログハウスの中に『お風呂』ができたんだ。だから、これからは川に水浴びに行かなくてもよくなったんだよ」
「そう……なのか」
あれ、なんでちょっぴりがっかりしてるの?
もしかして、川で水遊びしたかったのかな?
いつもウィルと遊んでるもんね。
「川遊びしたかったら、ウィルといっしょに行ってきていいよ?」
アロンからもらったクダシ虫よけのお香、忘れず持たせなきゃ。
「いや、そういうわけではないのだが……ララは行かないのだろう?」
「うーん、私はいいかな。川の水、冷たいから苦手なんだ。わざわざ川に行かなくても、家にお風呂があるし」
「そうか……」
ハティ、耳を下げてしゅんとしてる。どうしたのかな。
「今日は俺を洗ってくれる日だと……思ったの、だが……」
伏せ目がちに呟くハティ。銀色の長いまつ毛が震えた。
はうっ
私はハティをガバッと抱きしめた。
「ごめん、そうだったね、ハティ! 楽しみにしてたんだよね……!」
ハティを洗うのは、いつも私の役目。ただ、ハティは「ララの負担にはなりたくない」と、10日に一度だけシャンプーを所望する。
今日が、その日だ。
なのに私ったら、うっかりしてた。ごめんよ……!
「やっぱり、私も川へ行くよ! シャンプーしてあげるからね!」
せっかく温かいシャワーがあるし、ハティも風呂場(小)でシャンプーできれば良かったんだけど、狭すぎて、体の大きなハティは入れないんだよね。
「すまん、世話をかける」
申し訳なさそうにしながらも、稲穂のしっぽを振るハティ。
愛い……!
さらふわのハティの毛並みは泡立ちもよくて気持ちいいんだよね。私にとってもお得な時間なんだから、申し訳なさそうにしなくていいんだよ。
あと、ハティの珍しいとろけ顔も見られて楽しいし……ふふふ。
しっかりご奉仕させていただきます……!
風呂場(小)、今後のレベルアップでハティでも入れるくらい広くならないかな?
温かいシャワー、味あわせてあげたいな。きっと気に入ると思うんだ。
広くなったら、一緒にシャワーしようね、ハティ。





