↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/157

23 謎の男とスキル『真実の目レベルMAX』


 今日も、名も無き田舎町の市場にやってきた。

 昨日ある程度の食料品も手に入ったし、連日で来る必要はなかったのだけど、どうしても町に行きたいとウィルにせがまれて、まぁ町の安全は昨日で確認できたしってことでやって来たのだ。


 ウィルはキョロキョロと、しきりに周囲をうかがっている。見るものすべてが目新しく、気になるご様子。


 コーネットの屋敷に閉じ込められていた私達にとって、この町は初めて見る平民の生活区域だ。大声をあげて笑い合うおばさんたちや、荒い言葉で客引きをするおじさんなんて、貴族の屋敷ではまず見ない。


「いいにおいする」


「ほんとだね」


 屋台の方から、甘ダレの匂いに混じって肉の焼ける匂いがする。じゅわ、と口の中で唾液が広がる。


 ちょ、ウィル! ふらふら行っちゃだめだよ。


「あとで食べようね」


「うん!」

 

 きらきら笑顔が今日も眩しいです。


 昨日のお買い物で稼いだお金はぜんぶ使っちゃったから、まずはお金を稼がないといけない。

 いっぱい薬草を売って、いっぱい稼いで、ウィルにお腹いっぱい屋台飯を食べさせてあげよう。


 薬草の売れ行きは良好で、2時間で既に昨日の倍は売り上げた。たぶん、今日は"小さな女の子"っていう可愛い売り子がいるからだね。

 そう、今日のウィルは私の妹(・)。少しでも私達の正体を誤魔化すために、女装させたの。といっても、特別なことはほとんどしてないよ。元々可愛い顔だから、私のワンピース(黒)を着せて、長めの金髪を二つ結びにしただけ。それだけで、どこからどうみても女の子です。


「お嬢さん」


「はい!」


 営業スマイルで見上げて、びっくり。

 ものすごいイケメンが私に笑いかけていた。


 青い目に、知的な眼鏡がよく似合うオトナな感じのお兄さん。ひとつに結んだ灰色の長髪を左肩に垂らしてる。濃紺の上等なローブを身にまとっているし、お金持ちっぽい。

 上客の予感!


「向こうで少し、お話しない?」


 ……おっと、客じゃなかった。まさかのナンパだった!


 うぇぇ、どの世界にもナンパ男っているんだね。げんなりだ。こっちは天使に貢物をするためにお金を稼がなきゃなんないの。忙しいんだよ!


 しかし、よくこんな、顔の下半分しか見えない怪しい女を口説こうと思うよな。しかも子連れ。ある意味勇者だ。


 無視するけど。


「あー……、勘違いさせちゃったかな。ナンパじゃないよ。私は商談がしたいだけなんだ」 


 え? そうなの?


「君が持ってる薬草、あるだけ全部買い取りたい。金額が大きくなるから、ここじゃなんだと思ってね」


 私が持ってる薬草って、『収納』の中に軽く百束は入ってるよ。そんなにお金、持ってるの?


「お金なら心配いらない。ほら、この通り」 


 男の人が巾着袋を開いて見せる。


 ふぉぉぉっ!金ピカだよー!!!

 そのお金すべてが、ウィルに貢ぐべき食料に見えてしまう。喉がごくりと鳴った。

 ───て、だめだめ。お金に釣られてついてく、なんて初歩的なミスはしないよ。知らない人にはついていっちゃいけません。小学1年生でも知ってる。これ日本の常識!


 お兄さん、「さすがに警戒するか……」なんて言ってるけど当たり前でしょうが!

 大金ちらつかせてついてこい、なんて誘拐のニオイぷんぷんだよ!事件だよ!


 と、


 てくてくてく。ウィルがイケメン知的眼鏡、略してイケメガネの方に歩いてく。そしてじっと、彼の目を見つめた。


 きゃー!!!ウィルが不審者にさらわれる!!


「ぼくたちを助けてくれるの?」


 うぉーい。ウィルさん、天使のボーイソプラノボイスで小首を傾げて何言ってるの?


 イケメガネもあっけに取られてる。しかし、すぐに笑みを浮かべた。どこか、面白がっているふうだ。


「そうだよ。私が君たちを助けてあげる」


 いや、いやいやいや。お金ちらつかせて私達をさらおうとしてたやつが何言ってんの?


「その件で少しお話したいんだけど、私に付いてくるように君のお姉さまを説得してくれる?」


 わかった、そう元気よく返事をするウィルがぐるんと私を振り返る。


「このひと、わるいひとじゃないよ。姉さま、行こ?」


 でも────言いかけた口をつぐむ。いつになく、ウィルが真剣な目をしていたから。


「ぼくをしんじて」


 そっか。すっかり忘れてたけど、ウィルは、スキル『真実の目レベルMAX』を持ってるんだった。

 私が『植物創造レベルMAX』をもらう一方で、ウィルに与えられたスキル。


『二人に同じスキルをあげるなんて芸がなくて面白くないでしょう?』と、イヴは私達姉弟に別々のスキルを与えたのだった。


 それを聞いたハティが怒って、喧嘩になってたっけ。

 ハティはまさに、『体力∞』っていう姉弟でお揃いのスキルをくれたもんね。


 『真実の目レベルMAX』は、人の善悪といった性質を暴き、本気になれば人の心の中まで覗くことができるスキルなんだって。強力なスキルだ。ウィルを騙すことは、誰にもできない。


 だめだよ、ウィル。危険だよ。そう思うのに───

  

 ウィルの緑の瞳は、木漏れ日に輝く湖のように綺麗で。その瞳を見つめていると突然、泡が弾けるように不安が消え去った。


「───わかった。ウィルを信じる」


 気づけばそう呟いていた。


「さぁ、行こうか。ついてきて」


 いつもは私が引く手を、ウィルが率先して引いて歩く。そうして、不思議な心持ちのまま謎の男の後をついていく。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] しまった、今読み返したら、「ララが分かっていない」記述がありました。 でもやっぱりちょっと疑問です。前世19才まで生きて、"転生"が当たり前に理解できてるのに、ラノベやゲームで"あるある"設…
[一言] 楽しく読んでいます。でも、「収納」を隠すのを忘れるなんて、いくら何でも抜けすぎ…。一応前世の記憶があるなら、そしてそれを手に入れた経緯から考えても、貴重かつレアなスキルって分かっているはずな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。