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完結編

「お父様、どうなさったの?」


 怖がる我が子をなだめ、娘は尋ねます。


『見て解らんかね。私の考えたやり方さ。

人間が私の愛しいものをみにくくするんだ。天に召されてしまえば、そうはできない。

すばらしいと思わんかね?』



 初めてこの計画を夫人に告げたとき、伯爵はこう言いました。


「この短剣をかしてあげよう。

これで私を刺し殺してくれ。そしてあの、白バラの花壇に埋めてくれ。

七日七晩待ってくれたら、紅いバラが咲く。その時私はよみがえる、もっと美しくなって」


「ですが、私はどうなるのです?」


 夫人は泣きそうな声で言いました。


「お前をよみがえらせるのは、私の後だ。

七日七晩埋めずに棺に入れれば、そのままの肉体でいることもできる。

人間は天に召されなければ美しくならない。

住民も人間だ、この喜びを解ってくれるに違いない。

美しい二人で、美しい町で、

皆が幸せに暮らすんだ」



「えぇ、そうですね。貴方がそう仰るなら」


 夫人はうなずき、接吻して、短剣を夫の胸に突き刺しました。

 それから彼を、白バラの花壇に埋めました。

 七日七晩経つと、真紅のバラが咲きました。



『あの花畑はどうだったかな。美しかろう?』


 骨だけになったサッパリー伯爵は、苦労話を止めて、首を傾げました。


「町の人達を埋めたのね」

『あぁ。彼らを天に召せば召すほど、跡地には紅いバラが生えてくるんだ。

理由は解らないがね。

だがそれで見栄えもよくなるし、悪くない。

掘り出すなんて勿体なくて出来やしない』


 伯爵はうっとりした様子でした。


『お前とも一緒に美しく暮らしたいが、どうもそれを望んではいないようだね。我が孫も。

明日出ていきなさい。

二度と戻ってきてはいけないよ。誰にも言ってはいけないよ。

花畑はここだけでいっぱいいっぱいなんだ。

町の外までは、広すぎて手が回らないからね』


 翌日、娘は我が子を連れて、荷物をまとめ出ていきました。紅いバラの花畑が、いつまでも風にそよいでいました。



 年老いた彼女の死の床でこの話を聞いて、私もその町に行って参りました。

 苔むした建物に混じり、真っ赤なバラが所々に咲く、世界一美しいと言っても言いすぎではない所でした。

 町外れの紅い花畑には、死体が二体並んで座っていました。

 一方は、片目に紅いバラを差した骸骨。

 もう一方は、紅いバラの髪飾りをつけた女性のミイラ。

 どちらも大層朽ちておりましたが、バラだけは、まるで今摘んだばかりのように、美しかったのです。


〈おしまい〉

どうも、沙猫です。

冬の童話祭以来の本格童話、如何でしたでしょうか。


割と終盤怖めの展開で申し訳ありません。グリム童話だってホラーな話沢山あるから、このくらい許されるかなと思ったのです。



今回は「美しさって何だろうなぁ」と思いながら書きました。


「人間がいなくなれば世界は平和」って話がありますよね。大気を汚したり、森林を伐採したり。でも自然の作る美は、どれだけ努力しても、人間は届く事が無い。


畢竟、人間の手がかからない=美しいって事じゃないかなと思って。人類絶滅させたら、地球は美しくなる一方だ! なんてテロリストみたいな考えのもと、完結させた次第でございます。



さらなる美を求める伯爵は、 町の住民を全員滅ぼしてしまいました。自らも伯爵夫人と共に生ける屍となり、その一生を終えました。


しかし二人は、それで良かったのではないでしょうか。


住民の為には「最高」の町づくりをする事ができました。

世界一美しい(鬱くしい?)遺跡を残せました。

何より、二人の息子とより近い距離で、残りの一生を過ごせたのですから。

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