(1/5)攻撃の始まり
神奈川県のフリークライミング大会の会場に子鹿美咲はいた。指をほぐしながら壁面を見上げる。登るべきルートを見つけすぐに壁に取り付き登っていく。スムーズに進んでいくかに見えたが、ゴール間近で子鹿美咲の動きが止まった。次のホールドの位置が遠いのだ。
子鹿美咲は表情を変えず体を大きく振って上方に飛んだ。
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「本当に惜しかったですね。あそこでホールドを掴めていたら子鹿さんの優勝でしたよ」
会場にいた係員が子鹿美咲に話しかけていた。子鹿美咲は壁面を見上げるだけで答えない。悔しそうな表情も見せない。
「今回のルート設定は絶対に小柄な人には不利ですよ。あとで事務局に問い合わせしましょうか?」
どうやら係員は小鹿美咲推しのようだ。しかし、子鹿美咲は無言のままだった。壁面を見上げ攻略ルートを探している様にも見える。その時、子鹿美咲のスマートウォッチが振動した。子鹿美咲がスマートウォッチを見ると白鳥チーフからの緊急呼び出しだ。
子鹿美咲は静かに「失礼します」とだけ言って会場を後にした。
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子鹿美咲が到着した時、オフィスの会議室には、ほぼ全員が揃っていた。
「法務省のデータセンターが攻撃を受けている」と、普段は出てこない部長が話し出す。
「今回の攻撃はよくある既知のセキュリティホールを狙うタイプでなく、全く新しい未知の攻撃らしい。そのため、うちに協力依頼が来た。子鹿さん、行ってくれるかな。あと、白鳥チーフも同行お願いします」
部長が動いているという事で事案の重要度・緊迫度が感じられる。
子鹿美咲は無言のまま準備を始めた。




