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ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→  作者: ぱちぱち


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第75話 山里一也はクールに黙るぜ!

『一也、どうやら我々の勝利のようだ』


「何と戦ってたんだ、お前」


『もちろん世論とさ』



 俺の部屋のソファを占領して寛ぐ『かすが』が、テレビに向かってくいっと形の良い顎で指した。チューナーを弄って海外のニュース番組を映しているその画面には、非常にお騒がせな事で有名な米国大統領の姿が映し出されている。


 この人、しょっちゅう問題発言で叩かれてる人なんだよなぁ、またなんぞ問題発言でもしたのかと入れたばかりの麦茶を飲みながら『かすが』の隣に座ると、米国の大統領はいつもの調子で指を一本立ててこう叫んだ。



『日本にはヒロインが居る! 自国の法律で裁けない国際テロリストが起こす犯罪を、己の身一つで食い止めるヒロインがだ!』



 飲んでいた麦茶を吹き出さなかった自分を褒めたい。



『法律は本来その国に住まう人を助けるものだ! だが昨今では特定の国において何故か自国の国民を守らず、犯罪者の人権ばかりを優先している! 残念な事に我が国もそうだ! だが我が国には銃がある! 自分の身を最低限守る権利をわが国民は持っている! しかし日本ではそうじゃない! 犯罪者たちが銃を持っているのに、日本の民衆は抗うための武器も持てないのだ! そしてそんな日本の民衆を守るために、一人の女性が立ち上がった! 彼女は素手で銃を持った犯罪者たちに立ち向かい、叩きのめし、犯罪の証拠を集めて公開している! 自身が犯罪者になる事も厭わずにだ!』


「そっちの国も銃規制しようって偉い騒ぎになってたはずだけどな」


『彼も支持者は悪く言えないのさ』



 民主主義版独裁者とか呼ばれてる人物だが、よくよく発言を聞いてみると結構色んな所に配慮はしてるのが分かる。分かるんだが、とりあえず今はそこは関係ないとして。


 え、これ明らかに『日華』の事言ってるよな。米国の大統領がわざわざ。流石に自衛団(ヴィジランテ)とかの固有名詞は出てこないけど。



『いやぁ、やっぱりあの大統領ならやってくれると信じてたよ。これで法案が出せる』


――また悪だくみか?


『失礼な。お前と日華の奮闘がついに実を結ぶ日が来たってだけさ……ああ、もしもし私だ。五味議員に繋いでほしい。ああ、ああ……そう。法案についての最終確認を――』



 俺のツッコミに本当に心外だとばかりに『かすが』はそう返して、占有していたソファから立ち上がる。浮かべている表情を見るとどう考えても悪だくみをしているようにしか見えないんだが、まぁ本人が違うと言うなら違うんだろう。


 あれ、という事は『日華』と一緒にやってる暴力の日々はもう終わりって事だろうか。『かすが』が言っていた暴力の使い方ってのはまだ今一つかめてないんだけど、それで良いのかな?



『いやー。あーしが言うのもなんだけど、あーしを参考にしてベンキョーできるのは世紀末の生き方だかんね。あ、でも力の見せ方は教えられたかな? 仕事先の相手は絶対に一也に舐めた口聞かないでしょ? ベンキョーの成果でてんじゃん』


――それ逆の意味で俺に大ダメージなんですが。え、俺、そんな傍目で危険人物みたいに思われてる?


『んー、いや。ちょっと見る目ある奴ならぜってーに一也は舐めないくらいかな? あーしと一緒に修羅場潜った分、雰囲気が身に付いてっから!』



 それは、もしかしなくてもデバフなんじゃなかろうか。い、いやまぁ見る目がある奴なら分かるくらいなら、まあ、良いのか……? 田井中さんも「女の子はね、ちょっと危険な感じの奴にクラっと来ちゃうんですよぉ」っていつもの怪しいニチャアとした笑顔で言ってたし、ちょっと危なそうくらいのイメージなら、まぁ、うん。大丈夫だよね?






 マンションの一室を改造する事になった。



「お、音楽専用のお部屋……!」


「ちょっとした歌とかなら今のままでも良いんだけどね」


「え。もしかしで、私のだめに……?」


『いいや。ちゃんとした録音とかが出来る部屋は前々から計画はしてたんだ。1期生と2期生は歌配信とかはあんまり考えてなかったから伸びてたけど』



 百山さんの言葉に言い訳がましくマネージャーが答える。心の中で素直にそうだと言えば良いじゃんと煽ると、マネージャーから怒りの感情だけが飛んでくる。言葉にしないのは、口にしたらつい表に出てしまうからだろう。このネタでクマ野郎を煽るのは最高だぜ!


 とはいえ流石に一人の為に部屋の改造なんて出来ないから、これから作る部屋は百山さんだけじゃなくVVV全体で音楽系の配信を行う際に使用するものになる。きっかけは百山さんの成長もあるんだけどね。


 現在、百山さんは単独の弾き語りならプロレベルに達したか否かってくらいで、Vタレに限定するならかなりの上澄みになる。3期生は現在セットでの配信を行っているが、百山さんが1フレーズを演奏してそれを相方が歌うというスタイルの配信はどれも中々の高評価だ。これだけ好評なんだから、これを軸に3期生はVVVの音楽担当、という方向でキャラ付を行っていきたい。


 最終的には3期生5人で各々がボーカルを務めるガールズバンドを立ち上げられたら最高だ。幸いなことにドラムを担当している原田さん――満腹たべるちゃんは高校で所属していた軽音楽部でドラムを触っていたらしく、もう暫くマネージャーが指導すれば一端の演奏は行えそうだ。バンドの屋台骨であるドラムが安定すれば、ガールズバンド計画も一気に進むだろう。


 さて、そのためにも彼女たちが安心して演奏できる場所を作らないといけないな。内装工事に関してはいつも通り『メンチ』の飲み友のおっちゃん経由で専門の内装業者を手配するとして、他に必要なものは機材だろうか。


 『あきら』も音楽機材なんかは専門外だろうし、その辺はホログライブさんとかに聞いて良さそうな業者を紹介して貰うのが良いか。いつもはお願いされてる立場だし、こういう時くらい頼ってもバチは当たらんだろう……あ、そうだ。



「百山さん。その内で良いんだけど、作曲とかやってみない?」


「え……ええ!? 作曲で、私が!?」


「うん。ステップアップも兼ねてね。『演奏技術は十分高まってる。ここから更に上に行きたいなら、自分で音楽を作ってみるのはアリ』だよ」



 俺と『マネージャー』が混じった言葉に、最初は目を白黒させていた百山さんも少しずつ表情を変えていき、最後には真剣な顔を浮かべて頷きを返す。



「やっでみます! でも……その。分がらねごどがあったら聞いでえですが?」


『ああ。いつでも相談してくれ』



 遠慮がちに尋ねてくる百山さんに笑顔を浮かべて、マネージャーがそう返事を返す。ドSのクマが珍しい、とつい呟きそうになるがこのタイミングで軽口を挟むのはな、流石に空気が読めて無さ過ぎると俺も学んだんだ。山里一也はクールに黙るぜ!




山里一也(男)26歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)

『拳創成期』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『無双女帝』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)


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